表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/249

193話 ☆?『拠点設営団』⑨(簡易的)

 橋に着いた俺たちは、洞窟から聞こえてくるランタンを設置する音を聞きながら、木製の橋の手すりに手を置き、空に浮かぶ雲の動きを眺めていた。



「あっ、ゴブリンだ」



 俺はぽつりと呟いて、洞窟となっている壁の上の方にいるゴブリンを見る。みんなもゴブリンを見つけたようだが、ゴブリンとは距離が離れていて高低差もあることから、こちらに攻めてこないと思っていた。


 しかし、ゴブリンが橋の上にいる俺たちを見つけると、鳴き声を上げ、他のゴブリンを連れてきて、何体ものゴブリンたちが俺たちを見下ろして叫んでいる。



「ゴブッ!」「ゴブッ!」「ゴブッ!」



 せっかく静かに空を眺めていたのに、ゴブリンに邪魔をされて怒りが溜まった冒険者は、手すりから手を放して後ろに下がる。



「うるさいゴブリン共だなぁ、俺がちょっと黙らせてくる」


「何をするつもりですか?」


「ちょっとお灸を据えてやるのさ」



 冒険者は軽く笑うと、冒険者は手の平をゴブリンたちに向け魔法を放った。



「『ストーンバレット』!」


「ゴブッ!」



 手の平サイズの石が複数も冒険者の手から何度も放たれると、ゴブリンたちの頭や体に命中させていた。ゴブリンの頭から血が流れ、体には痣のようなものが見える。


「どうだ! これ以上怪我したくなかったら向こうにいってろ!」


「ゴブッ!」「ゴブッ!」「ゴブッ!」



 ゴブリンは血が出ている部分を手で押さえながらこちらを睨みつけ、怒号を響かせる。あれだけ怒っていると、橋まで下りてきて戦闘になるかもしれない。


 そう思っていたら、ゴブリンの1体が後ろに下がり姿が見えなくなると、何かを持って戻ってきて、こちらに向かって投げつけた。



「があっっっ!」



『ストーンバレット』を使った冒険者の頭に何か硬いものが当たる音と共に悲鳴が聞こえる。冒険者は倒れると、あまりの痛さに悶絶する。すぐに加護の力で痛みが引くとはいえそれでも当たった部分を手で押さえながら立ち上がった。



「何を投げてきやがったっ……これか!」



 冒険者の近くには、ゴブリンが投げてきたであろう物が転がっている。それは石だった、しかもその石にはゴブリンの血が付いていた。


 つまり、ゴブリンが投げてきたものは、冒険者がゴブリンたちに向かって放った『ストーンバレッド』だった。



「「「ゴブブブッ!」」」



 ゴブリンたちは石を当てたことで笑っているようだ。そして笑っているゴブリンの隣で、他のゴブリンが石を投げてくる。


 上から下に投げられた石はどんどん加速していく。運よく誰にも当たらなかったが、橋に石がめり込んでいた。



「っ! 次が来るぞ、みんな洞窟の中に逃げよう!」



 俺の声と共にゴブリンたちは次々に石を投げてくる。俺たちは急いで洞窟の中に逃げ込み上から降ってくる投石を回避する。


 だが、俺たちが石を避けたせいで橋にはたくさんの石がめり込み、穴まで開いている所もあった。


 そして、石を全部投げ切って投石が止むと、ゴブリンが橋の上に飛び降りてくる。


 ドスンという大きな音がして、橋が揺れ始める。次々にゴブリンが飛び降りてくると、橋がミシミシと嫌な音が聞こえてきた。


 上にいた残りのゴブリンたちが一斉に橋の上に飛び降りて橋に着地すると、バキバキと木が割れるような音がした。



「ゴブッ!」



 ゴブリンたちは何の音か分かっていなかったようだが、数秒もしないうちに事態を把握して悲鳴を上げる。


 橋が割れ始めて今にも落ちそうになっていた。ゴブリンたちは俺たちのいる洞窟に入ろうと走るが、それが橋に負担をかけてしまって、橋を落とすことになってしまった。


 落ちていく橋を足場にして必死に洞窟まで飛ぼうとしているゴブリンたちだったが、足場が不安定なせいで上手く飛ぶことができなくて、橋と共に落ちていくのであった。






 俺は洞窟から顔を少しだけ出し、下を覗き込む。もうゴブリンも橋も見えなくなっていた。



「うわぁ……ゴブリンたちこの高さから落ちたから助からないだろうなぁ……」


「橋も落ちちゃいましたわ」


「これ向こうに行けなくなったけど、どうするんだろうね」


「そうだよ、ソラの言う通り橋がないと向こうに行けない」



 これからどうなるか考えていると、後ろの方が騒がしくなる。


 どうやらゴブリンに攻撃をした冒険者が、他の冒険者に詰められているようで、必死に冒険者は謝っているみたいだ。


 だが、どれだけ謝ろうと、橋は戻ってこない。


 俺たちはギルド職員がここに来るまで、なんて説明しようかとみんなで思っていた。


 しばらくすると、ギルド職員が冒険者を引き連れてやって来る。そして俺らはゴブリンによって橋が落とされたことをギルド職員に伝えるのであった。






 ■






 ギルド職員は落ちた橋を確認する。そして真上を見て、そこに行くための梯子も見る。その後に俺たちの方へ振り返った。



「事情は分かりました、では職人たちに新しい橋を作ってもらいましょう。どのみち橋が無ければ、向こう側に行くことが大変になります。私は戻って職人たちこのことを伝えますから、冒険者のみなさんさんは全員私についてきてください」


「「「分かりました」」」



 俺たちは全員引き返して職人の所まで戻ることになった。途中まで来ていた冒険者も、俺たちと一緒に行動して職人の所に向かう。


 そして、職人の所まで戻ると、今ランタンを設置し終わって、足場を解体しているところだった。ギルド職員は手の空いている職人たちに、橋が落ちて進めないと説明して、橋を作ることができないか聞いた。



「資材があれば橋は架けられるが、この目で現場を見て見ないとどの程度の資材が必要なのかわからねぇ。橋まで俺を案内してくれ」


「分かりました、ではあの冒険者たちに橋のあった場所まで案内させます。みなさんできますね」



 ギルド職員が指定した冒険者は、橋で待機していた時の冒険者だ。



「任せてください!」



 橋が壊れてしまった原因を作った冒険者は、ここで失った信用を回復させたいのか、やる気を出している。職人は俺たちに囲まれて移動を始めるのであった。


 その後、魔物と遭遇することなく壊れた橋の所まで着いて、職人は洞窟から洞窟までの距離を測る。その場で目視して、梯子を使って上り、上からも見ていく。


 そして必要な資材を計算し始めた。



「ふむ、大体これくらいあれば問題なさそうだな。いや、魔物に壊されたのなら強度を高めるか? だがそれは今やることなのだろうか?」



 職人は悩みに悩んで、とりあえず橋として機能する物を作ることに決めた。やることが決まった職人は俺たちと共に他の職人の所に戻ると、何人かの職人とギルド職員を連れて拠点まで向かい、馬車に資材を詰めて壊れた橋の所に急ぐ。


 ここまで洞窟内を往復している俺らは汗をかきながら、職人たちの護衛をしていた。


 壊れた橋の所までランタンが設置済みになっていて、他の職人たちは資材が運ばれるのを待っていた。


 資材が届くと橋の土台を作り始めて、それを向こう側の洞窟に繋げる。それを足場にしながら、どんどん板を並べていって、強度を上げていき、簡易的な橋が完成するのであった。

橋で待機していると、上の方にゴブリンが見えた。


一緒に行動をしていた冒険者がゴブリンに『ストーンバレッド』を使い攻撃をすると、その時できた石でこちらに投石をする。


それを避けていると橋がボロボロになる。そしてゴブリンたちが次々に高所から橋に飛び降りると、橋からは嫌な音がして、最終的に壊れてしまった。


その時橋と一緒にゴブリンも落ちていってしまった。


俺らからギルド職員に、ギルド職員から職人に情報が伝えられ、職人が現場を見ることで新しい橋に必要な資材の量を計算する。


そして、拠点に戻り馬車に資材を運ばせて壊れた橋の所まで持っていき、簡易的な橋を完成させるのであった。



魔法の紹介


・『ストーンバレッド』


土属性の魔法で、魔力で作られた石を複数個放つ。無属性のバレッドと違い、石の重さが加わっているのでダメージが大きいが、放たれる数はバレッドよりも少ない傾向にある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ