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192話 ☆?『拠点設営団』⑧(橋)

 冒険者に周りを警戒させて、ギルド職員は動かなくなったサウンドバットを袋に詰めて回収する。その間に、戦闘でダメージを受けていた冒険者はポーションを飲んで回復をしていた。



「以前この洞窟に来た時には、サウンドバットみたいな魔物はいなかったよね。ユカリとソラはどう思う?」


「そうですわね、私には原因が分かりませんわ」


「前にシンたちと来た時には、あんな羽音は聞こえなかった。魔王軍がこの洞窟に関わったことで、出現する魔物も変わったと考えるのが自然と俺は思うね」



 そんなことを話していると、後ろの方からこちらに向かって歩く足音が聞こえてくる。俺たちの後ろにいた冒険者たちが、見える距離まで来たようだ。



「もう冒険者さんが来たようですね。私たちはこのまま集団で先に進みましょう」



 ギルド職員は機転を利かせて、移動が遅れないように全員で動くことに決めた。俺たちもそれに従って洞窟の奥に進む。


 ランタンの数が多いおかげでかなり明るく、隅々まで見ることができた。


 そして、洞窟は3方向の分かれ道がある所までやってきた。



「我々ギルドは、洞窟の最深部までランタンを設置することを目標にしています。そして、最深部は3方向の真ん中の道に繋がっています。私はこれから来る冒険者が別の方向に行かないようにここで待機して冒険者を誘導するので、みなさんはこの真ん中の道を進み、橋がある所まで行ってください」


「橋から先はどうしますか?」


「他のギルド職員がここに現れたらすぐに向かいますので、橋の近くで待機をしていてください。では、よろしくお願いします」



 俺たちは他の冒険者パーティーと一緒に橋が架かる場所まで向かうことになった。






 俺とユカリとソラのパーティーは、壁際の方に固まりながら歩いていると、ソラが何かを察知して耳に手を当てる。



「獣の足音が複数……多分これはウルフかな? しかもかなり多いね。10体以上いるんじゃないか?」



 それを聞いて、冒険者たちは武器を構えて戦闘態勢に入る。洞窟の奥には赤い瞳を光らせたウルフたちが暗い所から姿を現す。



「「「グルルルゥ」」」「「グルゥ」」


「でたなウルフ共っ!」



 冒険者の1人がそう叫ぶ、ランタンがたくさんあるおかげで、ウルフが急に走ってきても対応できるほど離れている。


 しかし、ウルフの数があまりにも多すぎる。ソラの言うように10体以上いることは間違いなさそうだ。こちらも冒険者は多いので、みんなで固まって行動すれば、攻撃が集中することはないだろう。


 お互いにジリジリと間合いを詰めて、戦闘開始を待つ。


 そんな緊迫した状態の中、俺たちの後ろから黄色い光が広がって消えた。それをきっかけに、ウルフたちが一斉に動き出した。



「グルルルゥ……ガウッ!」



 的を絞らせないようにウルフたちは縦横無尽に駆け巡る。こちらを攻撃するのかと思ったら横を通り抜けていったり、壁に足を付き高く飛んだりとやりたい放題だ。


 どのウルフから攻撃が来るか分からないので、みんな必死に近くにいるウルフへ視線を向けるが、全てのウルフを見ることはできないため、視線から外れたウルフが冒険者に攻撃を仕掛けていく。



「うわっ、この野郎!」



 洞窟中央にいる冒険者は反撃するが、その頃にはウルフは離れていて攻撃は何もいない空間に武器を振っただけになった。次々に冒険者たちはウルフに攻撃をされていく。



「おいおい、ウルフってこんなに戦いにくかったか!?」


「素直に攻撃してくれれば反撃しやすいのに、これじゃあジリ貧だぞ!」


「後ろから黄色い光が上がっていたが、助けは来るのか!?」



 冒険者たちはウルフに翻弄され、ダメージが蓄積して焦っていた。


 いくら待っても助けに入る冒険者が現れない。そんな時、後ろから赤い光が広がって消えた。



「そんなっ、これだけウルフがいるからって、後ろに行ったウルフは見ていないぞ! ユカリとソラはそんなウルフ見かけた?」


「私はここから離れたウルフを見ていませんわ」


「俺も後ろに行ったウルフは見てないね」


「ってことは、あの分かれ道のどちらかから魔物が来たってことか、じゃあここには助けに来られる冒険者はすぐには来ないぞ」



 ウルフと戦う他の冒険者は俺の言葉を聞いて表情が険しくなる。今いる冒険者だけでこの状況を何とかしなければならないからだ。


 俺はウルフたちの行動を注意深く観察する、時々ウルフがこちらに向かってくるが、武器を構えて待っていると方向を変え、別の冒険者を狙い始める。


 何かこのウルフたちを攻略する方法はないのだろうか。そう思ってウルフたちが攻撃している冒険者を見ていると、ある共通点が見えてくる。



「うわぁぁぁ!」


「うっ!」


「ぐわぁ!」



 ウルフが攻撃をしていたのは洞窟の真ん中付近にいた冒険者たち。



「あっち行け!」


「来るなら来い!」


「逃げるな!」



 ウルフが攻撃をしないのは壁際にいる冒険者たち。



(なんで、壁際にいる冒険者を攻撃しない?)


「ガウッ!」


「っ……はぁ!」


「ガァ……ァ……」



 視線を外しすぎてここまで接近を許してしまったが、何とか剣を振ってカウンターをする。ウルフは俺と目が合った時に方向転換しようと身をよじるが、噛みつこうと跳ねて空中にいるため方向転換ができない。


 ウルフは俺の剣に自ら当たりに行く形となり、体を切られてしまう。


 俺に切られたウルフは壁に体をぶつけると、血を流して動かなくなり、経験値を吐き出した。



(なんで俺の攻撃は当たった? 他の冒険者は当たらないのに)



 他の冒険者と俺の違いを調べるために観察していると、洞窟中央にいる冒険者がよく狙われていた。


 壁際にいる冒険者はウルフを視線に入れると、ウルフたちは攻撃対象から外していく。


 もしかしたら視線を外している時間が長い相手を狙っている? 壁際にいる冒険者は背中側から襲われることはない分、視線が外れにくい。たまたま俺は視線を外しすぎたから狙われたのだろう。


 そして、少し向きを変えるだけで反撃できるようになるからウルフに攻撃を当てられた。そう考えた俺はみんなにそのことを伝える。



「みんな! ウルフたちは自分から視線を外している時間が長い冒険者を狙っているかもしれない! 洞窟中央にいると背中側にいるウルフからは視線が外れっぱなしになるから壁際で戦おう! こっちの方が攻撃を当てやすい!」


「そういうことか!」



 中央にいる冒険者たちは壁際に向かって走り出す。その後ろをウルフたちは追いかけるが、俺たちが追いかけるウルフを見ていると、標的を変えていった。


 ウルフたちは動き回っているが、誰も攻撃できないでいた。


 そしていつしか動き回って疲れ果てたウルフたちは、走ることを止める。



「今だ!」


「「「うおぉぉぉ!」」」


「「「ガァ……ァ……」」」



 近くにいたウルフ3体を倒して経験値を吐き出す。他のウルフはそれを見て逃げ出そうとするが、俺たちは回り込んでウルフを逃げられないようにする。


 反対方向に逃げようとしても、ユカリやソラがいてウルフたちは囲まれてしまった。



「はぁ!」


「ガァ……」



 逃げ道を失ったウルフたちは、最後の攻撃を仕掛けて襲い掛かってくるが、みんな簡単にカウンターを決めて、ウルフを倒し切った。






 戦いが終わると、冒険者たちを連れて走ってくるギルド職員が現れた。



「みなさん、大丈夫ですか!」


「危なかったけど大丈夫です」


「俺らは無事じゃねーけどな」



 壁際にいた冒険者たちや俺たちは無事だったが、中央にいる冒険者たちはダメージを受けすぎていた。そのため、新たに来た冒険者たちと交代する形で、中央で戦っていた冒険者たちは後ろに戻っていった。


 しばらくすると、職人がランタンを設置するカンカンとした音が聞こえてくる。ギルド職員は倒れたウルフを回収すると、すぐに移動を再開するようで、俺たちは洞窟の奥に進むこととなった。


 そして奥からは太陽の光が見えてきて、俺たちは外の景色が見える橋に着くのであった。

3方向の分かれ道がある所まで来ると、ギルド職員とは一旦別れて、他の冒険者と一緒に真ん中の道を進む。


10体以上のウルフと戦闘になる。


洞窟中央にいた冒険者たちばかり攻撃され、壁際にいた俺たちや他の冒険者たちは攻撃されなかった。


ウルフから視線を外していた時間が長い冒険者が攻撃されていると思い、中央で戦う冒険者を壁際に向かわせる。するとウルフたちは攻撃しなくなり、それでも動き回っていたせいで疲れて動きが鈍くなって、そこを俺たちがせめて倒した。


残りのウルフは逃げようとしていたが、回り込んで追い詰め倒した。


その後、冒険者たちを連れたギルド職員が来て、ダメージを受けていた冒険者たちは後から来た冒険者たちと交代して、俺たちは橋まで着いた。

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