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191話 ☆?『拠点設営団』⑦(蝙蝠)

 冒険者とギルド職員、そしてランタンを設置する職人は、ランタンによって明るくなった洞窟を一緒に進んでいく。


 ギルド職員はランタンを一つ一つ確認しながら、明るさに問題がないかを調べて記録を付けていった。そうしているうちに魔物と遭遇することなく、ランタンを最後に設置した場所に着いた。



「ランタンに問題はないようですね、ではここから昨日と同じように進みます。先頭はあなたたちでお願いします」



 ギルド職員が指定してきたのは名前を知らない冒険者のパーティーだ。


 何組かの冒険者パーティーがギルド職員の指示により洞窟の奥に進んでいくと、俺たちが呼ばれる番になった。


 俺とユカリとソラの3人は、ギルド職員の指示に従い、遠くを歩く冒険者のランタンの光を目印にしながら、一定の距離感を取りつつ進んでいく。



「昨日よりも呼ばれるのが早かった。ギルド職員も先頭の冒険者たちに付いて行った1人だけで、他のギルド職員はまだ待機しているみたい」



 俺は後ろを向くと、まだまだ多くの人たちが待機しているのが見える。



「そうですわね、昨日の私たちは先を行く冒険者のおかげで戦わなくて済みましたが、今日は戦うかもしれませんわ」


「と言っても、俺らが戦闘に参加するほどの魔物が出るかどうかだね。シンとユカリの出番はないかもね」



 ユカリは警戒を強めて色んな所に視線を向け魔物がいないか調べ、ソラは頭の後ろに手を組み余裕の表情を見せた。


 そして、俺たちの後ろから青い光が広がって消えた。続いて俺たちの前からは緑色の光が広がって消えた。



「青い光、確かあれは明かりを設置する合図のはず、その後に異常なしを知らせる緑色の光が前から来た。じゃあまだ先頭に魔物が現れていないんだね」


「そうみたいだね、それに後ろには冒険者もたくさんいるし、どんどん設置作業を進めても問題ないって感じかな。おっ、作業の音が聞こえてきた!」


「ソラくんの言う通り、カンカンと叩く音が微かに聞こえてきますわ」



 俺たちが設置作業に気を取られているうちに、前を歩く冒険者のランタンが遠くに行っていた。



「そうだった、昨日は設置作業が始まる時に職人たちを待つために立ち止まっていたけど、後ろの冒険者たちがランタンをたくさん持っているから、俺たちは止まらなくていいんだ! 前の冒険者に追いつかなきゃ」



 俺たちは早歩きで進み、距離を縮めた。そして黄色い光が広がって消える。



「あれは魔物が近くにいる光ですわね!」


「羽の音にキィキィという鳴き声が聞こえる。一旦戻ってギルド職員の指示を貰うか?」


「いや、このまま進もう。前を歩く冒険者は歩く速さを変えないで進んでいる。だったら俺たちも同じようにしよう」



 俺たちは慌てずに、洞窟を進み続ける。次第に洞窟の奥で戦っている音が聞こえるようになってきた。



「やめてくれぇぇぇ!」


「うわぁぁぁ!」


「誰か押さえろ!」



 奥からは冒険者の叫び声が聞こえてくる。その直後、赤い光が広がり消える。


 前を歩く冒険者が走り出して戦っている冒険者の加勢に向かった、俺たちも走って追いかける。



「なんだこれは!?」



 魔物と戦っているはずの冒険者が、他の冒険者に襲い掛かり、ダメージを与えていた。ギルド職員は壁際の方に避難していて、様子を見ていた。


 襲われた冒険者は、俺たちが加勢に来てくれたことを知ると大声で叫んだ。



「そいつはサウンドバットの攻撃で混乱している! 押さえつけてくれ!」



 すぐに俺たちより早く加勢に来ていた冒険者たちが、混乱している冒険者を押さえつける。それでも混乱している冒険者は叫びながら武器を振って暴れていた。



「キィキィ」「キィキィ」「キィキィ」


「あいつがサウンドバットか!?」



 天井付近にランタンの光を集めると、コウモリのような見た目の魔物が3体飛んでいた。黒っぽい色をしていて、羽を広げているときの大きさは俺の肩幅より少し大きいくらいだ。



「まずは混乱を治さないとね」



 ソラは混乱している冒険者の前に立つと、笛を口に咥えて吹いた。


 ビーっという甲高い音を混乱している冒険者に聞かせると、冒険者は体を震わせた後に混乱が治り、意識が正常になった。



「そんな方法で混乱を治すなんて、ソラは凄いな」


「まあね」


「よし、それじゃあサウンドバットを倒そうか!」



 俺は天井に向かって手を向けて魔法を放つ。



「『スマッシュ』!」


「キィキィ」



 サウンドバットは『スマッシュ』を余裕で避ける。



「くっ……素早くて避けられるか。でも剣じゃ攻撃が届かないし」


「チチチチ」「チチチチ」「チチチチ」



 サウンドバットが天井に止まると、鳴き声とは違う音を出し始める。



「なんだこの音、心がザワザワしてくる」



 音を聞いていると気持ちが昂り始め、それと同時に不安に思う感情も沸き始めてくる。



「気を付けろ! 混乱したのはその音を聞いたせいだ!」



 混乱させられていた冒険者が俺たちに忠告してくれる。



「なんだって!? うっ!」


「「「うぅぅぅぅ……」」」



 俺やユカリや他の冒険者は苦しみながら耳を押さえて耐えている。しかし、愉快な笛の音が聞こえてきて、気持ちの昂りや不安な感情は消えていった。


 笛の音が聞こえる方を向くと、ソラが笛を吹いている。



「俺がサウンドバットの混乱攻撃を笛で抑えるから、その間にシンたちで倒してくれ」


「分かった! でも剣は届かないし、魔法も簡単に避けられちゃう。いったいどうすれば……」


「でしたら、私がやってみますわ! 私なら『フライ』で空を飛べますので、サウンドバットに近づけますわ」



 ユカリは細身の剣を抜き、攻撃の準備をする。



「そうだね。じゃあユカリは天井のサウンドバットをお願い。俺はユカリの攻撃から逃げるために下りてくるサウンドバットを狙うよ」


「俺たちも下りてきたサウンドバットを狙うぜ」


「お願いします!」



 作戦は決まった。俺と他の冒険者たちも武器を構えて、サウンドバットが下りてくるところを狙う。



「いきますわ!」



 ユカリはジャンプをすると、空中で『フライ』を唱えて空中を蹴り、天井に止まって混乱攻撃をしているサウンドバットの目の前まで行く。


 サウンドバットもユカリがここまで近づいてくるとは思っていなかったようで反応が遅れた。



「えいえい!」


「キィキィ!」「キィキィ!」



 ユカリの攻撃が2体のサウンドバットに当たり、サウンドバットは地上に落ちてくる。


 俺は剣で切りつけると、サウンドバットの体からは血が出て、そのまま経験値を吐き出した。もう1体のサウンドバットは、他の冒険者が倒してくれたようで、地面に倒れて経験値を吐き出していた。



「キィキィ!」


「まだ1体残っているぞ!」



 残ったサウンドバットは天井付近で飛び回り、狙いにくいように動いていた。そして、ここで気が付いた。いつの間にかソラの愉快な笛の音が止まっていることを。



「やっと混乱攻撃を止めてくれたね」



 ソラは手を天井に向けながらボソッと呟くと魔法を放つ。



「『ドン・トルネード』!」



 洞窟内に竜巻が起こり、飛んでいたサウンドバットは竜巻に巻き込まれて上手く飛べなくなり地面に落下する。


 ソラは落下したサウンドバットの上まで移動すると、手を地面に向けて魔法を放つ。



「『ドン・ウィンド』!」


「キィ……」



 サウンドバットは切れ味の良い風で体を切り刻まれて経験値を吐き出した。俺はギルド職員にまだ他に魔物がいないか確認する。



「ギルド職員さん、これで出てきた魔物は全部ですか?」


「全部です、ありがとうございます!」



 ギルド職員は緑の光を打ち上げ、後ろにいる冒険者やギルド職員たちに異常が無くなったことを伝えるのであった。

俺とユカリとソラの3人は、ランタンの設置されていない洞窟を進んでいく。今回は奥に進みながら後ろではランタンの設置が始まるようだ。


赤い光が広がって消えたので、俺たちも戦闘に加勢すると、魔物の混乱攻撃により混乱させられた冒険者が、他の冒険者を襲っていた。


その冒険者を押さえつけて、ソラが笛の音を使って混乱を治す。


襲ってきた魔物はサウンドバットで、混乱攻撃を仕掛けてくるが、ソラが笛で音を出して防いでくれている。


天井に剣が届かず、魔法も避けられるので、ユカリが『フライ』を使って近づき、攻撃して地面に下ろす。


下りてきたサウンドバットを俺や他の冒険者が倒して、最後の1体はソラが倒した。


ギルド職員は戦闘が終わったので緑の光を打ち上げて、異常なしを伝えるのであった。



魔物の紹介


・サウンドバット


コウモリのような見た目で黒っぽい色をしていて、羽を広げているときの大きさはシンの肩幅より少し大きいくらいだ。


攻撃方法は、噛みつくことと、変な音を出して混乱状態にさせてくること。

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