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19話 魔法鍛錬!⑤(完全詠唱)

 今日の空は曇り気味でいつもより暗い。目が覚めると真っ先に魔法石を見る。昨日と同じ光を出している、夢ではないことにまず安心した。念のため魔法石に魔力を流した。少し魔力を吸収して、それ以上は吸収しなかった。


(よし! ちゃんと魔力を溜めきったな)


 魔法石をしまい朝の鍛錬の準備を始める。その間にアオとハクも起きてきた。外に出ると、いつもは話しかけてこない生徒も「大丈夫か?」と俺に聞いてきた。


「休んだおかげで元気になったよ!」


 ずる休みをしていたとは言えないので嘘をつく。飛んだり跳ねたりをすることで元気になったアピールもした。そんな談笑の時間も終わりみんな朝の鍛錬を始める。たかが数日参加しなかっただけなのに、みんなとの差がいつも以上に離された。


(魔力だけを鍛えていた俺と差が付くことはしょうがない)


 その後は何事もなく朝の鍛錬も昼の授業も終えた。


 ――


 今日の予定はすべて終わったので、俺は魔法石と魔法書を持ってランド先生の部屋に向かった。部屋に入るとランド先生に光らせた魔法石を見せる。


「ランド先生、魔法石を光らせることができました!」


 俺から魔法石を受け取り、まじまじと見つめる。大丈夫だと分かっていてもドキドキする。


「……よく頑張りましたね」


 魔法石をテーブルに置き、ランド先生は俺の頭を撫でて褒めた。


「魔法を使うのに十分な魔力が出るようになったので、これからはシンくんに魔法を教えていきます」

「よろしくお願いいたします!」

「もう読んだかもしれませんが知り過ぎて困ることはありません。席に座って魔法書を読みます」


 俺は席に座り、横にランド先生が来る。


「シンくんは魔法書で気になった魔法などはありますか?」

「無属性魔法が気になりました。他の属性魔法より扱いやすそうと思って」

「無属性魔法ですか。確かに人間の魔力は無属性なので、属性を変えなくていいという点では扱いやすいですね、ただ……威力が弱いこと、無属性が弱点の魔物が少ないというところが弱いところです」


 扱いやすい魔法なだけに威力もそれなりなことは察しがついていた。


「ダメならまた鍛え直すだけです!」

「……分かりました、では無属性魔法のページを開いてください」


 俺は魔法書をテーブルに出して、言われたページを開いた。


「ダメージを与え続けるなら『バースト』と言いたいところですが、これは魔力を一直線に放ち続ける魔法なので多くの魔力を使います。今のシンくんの魔力量では他の魔法の方がダメージを与えられるでしょう」


 ランド先生が俺の魔法書をめくる、一つ一つよく見て習得させる魔法を選んでいるようだ。


「まずは『スマッシュ』を習得しましょう。魔力の塊を放つ魔法ですので威力はあります。1発に魔力を込めるので外せば不利になりますが、動いてる魔物に当てることは考えなくていいです。シンくんにはまだ早いので、スライムが止まっているところを不意打ちで当てましょう」

「ではこの『スマッシュ』を覚えたいと思います」


 最初に習得する魔法が決まった。


「『スマッシュ』の呪文を、魔力を込めずに詠唱してみましょう。魔法は魔力を込めなければ発動しないので安心してください」

「分かりました」


 俺は呪文が書かれたところに指を置きなぞりながら詠唱を始めた。


「我が魔力を一つに……球へと型作り……大いなる魔素を集い……不純なる魔を我に……我に適応し糧となる。サンラ……ルンボ……アイド……ケブン……バイタ……」


 書かれた呪文を詠唱する、言いなれていないことと一つ一つの意味が分からないので、滑らかに発音することができず詰まってしまう。


「初めてはこんなものです、鍛錬を積むことでスラスラと言えるようになります。目標は『スマッシュ』の魔法名だけで魔法が発動させることです。魔法名で発動させるには魔力の流れを知り、制御できなければなりません。呪文の詠唱はそれを助けてくれるものなので、完全詠唱ができるまでひたすら覚えましょう」


 俺はその後『スマッシュ』の完全詠唱を何回も言い記憶していく。魔法書を読みながらなら完全詠唱ができるが、見ないで詠唱することができなかった。根気よく覚えていくしかないだろう。


「スラスラと詠唱できるようになってきましたね。そのくらい言えれば鍛錬には十分です。次は魔力を込めながら完全詠唱をしてください」

「……あの……魔法書を使わずに詠唱できるようになるまでやらなくていいのですか?」


 すぐに鍛錬の難易度が上がったので、俺は思わず聞いてしまった。


「もちろんそれができれば良いのですが、冒険者となると数多くのスキルを使います。そうなると完全詠唱を完璧に覚えていることが難しいのです。私でも魔法書を読みながらでないと詠唱できません。魔法名のみの省略詠唱が使いやすいのです」

「ランド先生でも見ながらじゃないと完全詠唱は厳しいのか……」

「使い慣れた魔法ならもちろん覚えていますよ。全部を覚えることが大変ということです。さあ、魔力を込めながら完全詠唱をしてください」


 魔力を込めながらの詠唱は難しく、魔力に意識が行くと詠唱が言えなくなり、詠唱に意識が行くと魔力が乱れることとなった。今日の魔法鍛錬の成果は、『スマッシュ』の完全詠唱だけなら言えるようになったこと。


 魔法を使えるようになるにはまだまだ先になりそうだ。

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