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189話 クリエートのテントで一夜!(砥石)

「じゃあみんなを見送ったことだし、まだ夕日があるうちにクリエートのテントを準備をしようか」


「そうだね、僕の荷物は鍛冶屋ができる場所に置いてあるから付いてきて!」



 俺はクリエートと一緒に、鍛冶屋が建つ予定の場所まで行った。


 まだ鍛冶屋には屋根や壁はなく、資材などが並べられていて、その近くに大きな袋が何個か置いてあった。どうやらその袋はクリエートが持ってきたもので、鍛冶に使う道具だったり、テントに使うための布や棒が入っていて、テントに関係する道具だけ袋から出した。


 クリエートは地面にテントの床となる部分を敷くと、その四つ角に棒を立てる。



「シン、これ押さえて!」



 俺はクリエートから棒を押さえるように言われ、両手でしっかり握った。


 クリエートは腰からハンマーを出すと、棒を上から叩き、地面に刺していく。


 ある程度棒が地面に刺さると、クリエートは棒に触れて揺らす。まだ少し揺れるため5回ほど棒を叩き、強い力を与えなければ倒れないほどの棒が立った。


 これを合計4本分やると、その4本の棒を全て覆い隠せるくらいの大きさの布で上から被せる。棒に触れる部分をロープで結んで固定すると、簡易的なテントが出来上がった。



「完成したよ!」



 クリエートは自分の荷物を持ちながらテントの布を下から上に持ち上げて中に入っていく。そして中からクリエートは布を持ち上げたままこちらを見ている。



「どうしたの? シンも入りなよ」


「うん、今行く」



 俺は身を屈めて、テントの中に入っていった。


 クリエートが布から手を放すと、テントの中は真っ暗になり何も見えなくなった。



「ふふふ、えい!」


「え、なに? うわぁ!」



 クリエートは可愛らしく笑うと、俺の背中に抱き着いてきた。暗闇で何も見えないし、クリエートが抱き着いてきているから無理に引き剥がすこともできない。



「えへへ」


「あははは! くすぐったいよ」



 クリエートは俺の脇腹をくすぐってくる。俺は身をよじり、くすぐりに堪えていた。しかし、ものの数秒で我慢の限界になり、クリエートを巻き込むように床に転がる。


 その衝撃でクリエートの手が、俺の脇腹から離れた。



「お返しだ!」


「えっ、ちょっと待って! わはははっ!」



 今度は俺がクリエートの脇腹をくすぐって反撃した。手足をバタバタさせて暴れるクリエートの声は拠点に響く。



「ご、ごめんなさい。もうやらないから許してっ!」



 笑いすぎて呼吸がおかしくなってきているクリエートが謝ったので、くすぐりのお返しはこのくらいにして手を離した。クリエートはしばらく呼吸を整えていると、ランタンの明かりを点ける。


 テントの中は明るくなり、布の壁と床だけの何もない空間が見えた。



「ふぅ……騒いだから熱くなっちゃったね。空気入れ替えるために開けてくるよ」


「僕も熱くなったから外に出るよ」



 俺とクリエートは一緒にテントから出る。もう夜になっていて、拠点の建物にランタンが設置され、明るくなっている。それを眺めていると、ムッとした表情の拠点主任がこちらに向かって歩いてくる。


 拠点主任はテントに目をやるとため息をついた。



「騒ぐならもっと離れたところでお願いしますよ。テントは隙間だらけなので外に丸聞こえですから」



 拠点主任が周りに目を向けると、拠点に残った冒険者に、ギルド職員や職人の何人かがこちらの様子を見ていた。



「「ごめんなさい」」



 俺らは拠点にいるみんなに謝り、みんなは建物の中に戻っていった。拠点主任もそれで許してくれるようだ。



「次からは気を付けるのですよ」


「「はい」」



 拠点主任はそう言い残して帰った。



「ああそうだ、シンの剣を砥ぐの忘れていたよ!」


「そういえばそんなこと言っていたね。でももう夜で暗いし、砥ぐのは後ででもいいんじゃない?」


「ランタンをたくさん使えば明るくなるし、すぐに終わるから大丈夫だよ。じゃあ剣借りるね」



 クリエートは俺の腰に付けた剣を鞘ごと持っていくと、テントの中に置いてある道具を持って砥ぐ準備をする。


 砥石を水に浸してから周りにランタンを置いて、影ができないように調整すると、剣をじっくり見て状態を詳しく確認する。


 砥石を水から取り出し、シュッシュッと剣と砥石の擦れる音が聞こえてくる。


 ときどき刃の様子を見ながら、砥ぐ角度を変えて、どんどん剣と砥石の擦れる音が小さくなっていった。



「よし、これで切れ味が戻ったよ!」


「ありがとうクリエート」



 ランタンの明かりの反射で、俺の剣はキラリと光る。それを鞘に戻して腰に装備する。



「これで明日のクエストも安心だね」


「うん、それもこれもクリエートがこのファングソードを作ってくれたおかげだよ」


「えっへん、もっと褒めていいんだよ! あれ、良い匂いがしてきたよ」



 クリエートは口角を上げ喜んでいると、鼻をピクピクと動かし、匂いを嗅いでいる。俺にも美味しそうな良い匂いが分かった。


 食堂の方から料理人が顔を出すと、夕食の準備が終わり食べられるそうだ。


 拠点にいる人たちは食堂に集まり食事を楽しんだ。


 その後、テントに戻って寝転がりながら、今までにあったことをクリエートに聞かせて、クリエートも俺と会っていない間に起きた出来事を話して2人楽しく会話をしていた。






「そろそろ眠くなってきたね」


「ふわぁぁぁ……そうだね、そろそろ寝ようか。ちょっと待ってて」



 クリエートは袋から1枚の布を出した。そしてその布を俺に被せると、クリエートも入ってくる。



「これで一緒に寝られるね」



 クリエートは俺の片手を握りながらそんなことを言う。



「これはさすがに恥ずかしいよ」



 俺は離れようとしたがクリエートは手を放してくれない。クリエートの顔を見るともう寝息を立てているようだった。



「はぁ……仕方ないな」



 俺は空いているもう片方の手でランタンの明かりを消して、テントの中を暗くする。



「おやすみ、クリエート」


「…………」



 俺の言葉にクリエートは寝息で返す。俺も目を閉じ、クリエートと手を繋ぎながら眠るのであった。

クリエートがテントを建てるときに棒を持ったり布を持ったりの手伝いをする。


テントの中でクリエートと、くすぐり合いをする。


シンの剣をクリエートが砥ぐ。


夕食を食べた後、今まで何があったか話しているうちに眠くなり、同じ布を被って手を繋ぎ寝るのであった。

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