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188話 ☆?『拠点設営団』⑥(設置)

 俺たち冒険者は、魔石が入ったランタンを持って洞窟の前に集まった。ギルド職員が先に洞窟に入ると、こちらを向く。



「索敵は私がしますので、冒険者のみなさんは3人から4人ほどのパーティーを作ってください」



 冒険者たちは、自分と仲の良い冒険者や知り合いの冒険者の所に向かいパーティーを作っていく。みんな3人で集まっているので、俺も3人になるように冒険者を集めようと思う。


 パーティーを組む相手を探しているとユカリがこちらに向かってきた。



「シンくん、私をパーティーに入れてほしいですわ」


「いいよー。あと1人は誰がいいかな?」


「じゃあ俺を混ぜてくれよ」



 そう言ってきたのはソラだった。もちろん俺はソラが入るのに賛成だ。



「じゃあこの3人でパーティーを組む感じだね。ユカリもそれでいいよね?」


「良いですわよ」



 パーティーは、俺とユカリとソラの3人に決まった。


 他の冒険者もパーティーを組み終わったみたいで、ギルド職員からの指示を待つ。



「では1パーティーずつ私の後に付いてきてください」



 ギルド職員が洞窟の奥に進むと、冒険者たちは他のギルド職員にどのパーティーから行くか決められながら洞窟に入っていった。


 ある程度冒険者たちが洞窟に入り、俺たちも洞窟に入ろうとしたら、洞窟に入るパーティーを決めていたギルド職員も俺たちと一緒に洞窟の奥に進んでいくようだ。



「私も同行しますね。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」



 ユカリとソラも俺に続いて頭を下げて洞窟に入っていった。






 洞窟を進んでいくと、ランタンの中の魔石が光り出す。外と同じとはいかないが、洞窟内はかなり明るくなって、洞窟の壁から天井まで照らされていた。



「これってアルンの洞窟で見かけた……」


「そうです、ランタンに入っているのは、魔素に反応して光る魔石です」



 目の前を歩くギルド職員が光る魔石の説明をしてくれる。魔素に反応するなら、魔素が無くならない限り光が消えることはないだろう。



「ああ、このランタンにあの壁が光っていたやつが入っているのか」


「ということは、この辺りは魔素が多いということですわね。洞窟に入る前は今より光っていませんでしたわ」



 ソラはランタンを顔の高さまで持ち上げて魔石を見て、ユカリは両手で包み込むようにランタンを持ち、光の強弱を観察していた。


 しばらく歩いていると、洞窟の奥で黄色い光が広がり消えた。



「なんだ今のは!?」


「魔物が出たようですね」



 ギルド職員は腰に付けた3つの袋のうち、後ろにある袋に手を入れると、そこから何かを取り出し、それを上に向けて放つ。


 すると、緑の光が洞窟内に広がり始めた。俺たちは目を手で隠して光に耐えていると、すぐに光は消えるのであった。



「この光はなんですの!?」



 ユカリが光に驚いていると、ギルド職員が自分の使った色の光がどんな意味を持つのか教えてくれた。



「これは、光で状況を伝えあっているのです。私が使った緑色は異常なしを伝えるものです。ほら、後ろから付いてきているギルド職員も緑色の光を出しました。これをどんどんと後ろのギルド職員に伝え、最後尾にいるギルド職員にも伝わるようにします」



 緑の光の意味は理解できたが、最初に見た光は黄色い光だ。俺はそれについて聞いてみる。



「黄色い光は何を伝えているのですか?」


「黄色は魔物が近くにいることを伝える光です。これからすぐに魔物との戦闘になるでしょう」


「確かに、魔物と冒険者が戦っている音が聞こえるね」



 ソラは両耳に手を当てて、洞窟の奥から聞こえる音を聞いていた。


 俺もソラと同じように耳に手を当てて音を聞こうとするが、音が小さくて音の正体までは分からなかった。ソラの言うことが正しいなら今も戦っている。


 俺とユカリは加勢に向かおうと先に進もうとするとギルド職員に止められた。



「魔物と戦っているなら加勢しに行かないと!」


「その必要はありませんよ、ほら」



 洞窟の奥では緑の光が広がって消えた。



「緑の光ということは戦闘が終わって異常なしということです。もし異常があるなら赤い光を出しますので、その時は加勢に行きましょう。さあ、先に進みますよ」



 歩みを止めていた俺たちは再び歩き出した。






 しばらくすると、洞窟の入口側から青い光が広がって消えた。



「どうやら最後尾が洞窟に入ったようですね。青い光は明かりを設置する合図です。しばらくしたらここに明かりを設置する職人たちが現れますので、待っていましょう」



 ギルド職員は俺たちの後ろを付いてくる冒険者パーティーにも聞こえるように言い、青い光を上に向けて放った。


 ここで待っていると洞窟の入り口側からカンカンと音が響き渡る音が徐々に大きく聞こえるようになってくる。この音が明かりを設置している音なのだろう。


 洞窟の奥側ではときどき黄色い光が広がって魔物と戦闘しているようだった。


 俺は洞窟の奥や入口を交互に眺めていると、ランタンを壁に設置する職人たちの姿が見え始め、洞窟内がどんどん一定の明るさになっていった。


 そしてとうとう俺たちの所まで職人がやってきた。



「冒険者さん、ランタンを職人に渡してください」


「はい」



 俺たちは1人の職人にランタンを全部渡すと、ランタンを受け取っていない職人たちは足場を作り始めた。ランタンを受け取った職人はその足場に乗り、壁や天井にランタンを設置していった。


 設置が終わると足場を崩して運びやすいようにする。そして職人たちは奥に進んでいった。


 カンカンと音が響かなくなると、洞窟の奥から紫の光が広がり消えた。



「どうやら先頭は引き返すようです。私たちも外に出ましょう」



 ギルド職員は紫の光を上に放ち、他のギルド職員に伝えると、俺たちと一緒に外に出た。






 洞窟の外に出ると。空は夕焼けに変わってきている。長い時間洞窟内に入っていたようだ。


 冒険者とギルド職員は全員外に出てきたことを確認すると、拠点主任が集合をかける。



「みなさん作業お疲れ様でした。今日はもう暗くなり始めたので、次の作業は明日にします。まだ拠点の建物が完成しきっていないので、ここで一泊するなら野宿になってしまう冒険者さんが出てくることでしょう。ですが、馬車と一部のギルド職員はアルンに帰るので、アルンに帰って休みたいという冒険者は馬車に乗ってください。では、明日もよろしくお願いします」



 拠点主任は頭を下げると、建物の中に消えていった。


 ほとんどの冒険者は馬車に乗り込んでアルンに帰るようだ。俺も馬車に乗り込もうとすると、背中を引っ張られる。


 振り向くと、クリエートが俺の背中を引っ張っていたようだ。



「シン、行っちゃうの?」



 そう言うクリエートは寂しそうな目で俺を見ていた。



「そうだね、寝袋もないし野宿よりは自分の部屋で寝た方が良いからね」


「テント持ってきているから! シンさえ良ければ、僕のテントで泊ってよ」



 クリエートは最初強めな口調で言うが、途中でしおらしい口調に変わっていった。


 俺は今からアルンに帰って、朝になってここに戻ってくるまでの時間と労力のことを考える。そして、クリエートのテントで一泊するのとどちらが良いかを考えた結果、俺はクリエートの方を選択した。



「じゃあクリエートのテントにお邪魔させてもらおうかな」


「っ! やった、ありがとうシン! これで夜もお話とかできるね!」



 クリエートはかなり喜んでいるようだった。



「ヒューヒュー! なかなかやるなぁシン」


「ちょっと、からかうのはやめてよソラ!」



 馬車の中から顔を出して、口笛を吹いた後ソラが俺をからかった。俺は顔を少し赤くしながらソラに言い返す。ソラはニヤニヤしながら馬車の奥に引っ込んでいった。


 俺は馬車から離れてクリエートの隣に立つ。


 馬車は他に乗る冒険者がいないことを確認すると、アルンに向かって走り出すのだった。


 それを俺とクリエートは見えなくなるまで見送った。クリエートは顔に付けたバンダナを全部外して、綺麗な顔とセミロングの灰色の髪が夕日に照らされる。



「じゃあシン、今夜はよろしく!」



 クリエートの笑顔と共に空には一等星が光り出した。俺の1日はまだ終わらないようだ。

洞窟に入る前に、冒険者たちはパーティーを組む。ギルド職員が戦闘で索敵をしながら洞窟に入ると、パーティーは他のギルド職員の指示に従い、1パーティーずつ洞窟に入っていった。


俺はユカリとソラの3人でパーティーを組んで、ギルド職員と一緒に洞窟に入った。


洞窟に入るとランタンの光が光り出す。どうやら魔素に反応する魔石のようだ。


ギルド職員は光の色でお互い伝え合って作業を進めていく。


職人たちが俺たちの持っていたランタンを壁や天井に設置する。洞窟から出ると夕焼け空になっていたので今日の作業を終了する。明日もあるため、アルンに帰って休みたい人は馬車と一緒にアルンに帰る。


俺はクリエートのテントに泊ることになったので拠点に残ることになった。


俺の1日はまだ終わらないようだ。



・ギルド職員たちが使っていた光の正体


ギルド職員たちは、赤、緑、青の3種類で、それを使って情報を伝えていた。


・赤は助けを呼ぶための色

・黄色は赤と緑を混ぜた色で、魔物が近くにいることを伝える

・緑は異常なしを伝える色

・青は明かりを設置する合図

・紫は赤と青を混ぜた色で、先頭が帰ることを伝える

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