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184話 ☆?『拠点設営団』②(切り株)

 馬車に揺られながら目的地に着くまで待っていると馬車が止まった。


 目的地に着いたのかと思い馬車から顔を出すと、洞窟まではまだ距離が離れていた。どうやら前を走っていた馬車が止まっていて進めないようだ。奥の方を見ると、その先の馬車も止まっている。


 このまましばらく進まないのかと思っていたら、洞窟側の方からギルド職員の大きな声が聞こえてきた。



「冒険者のみなさん! 拠点を広くしたいので、木を壊せる人は来てください!」



 冒険者たちは馬車から降りて、歩いて向かっているようだ。その中には力が強い冒険者だけでなく、魔法をメインで使うような見た目をした冒険者も混ざっていた。



「……シンは行かなくていいのか?」


「俺が? 木を壊せるほど力は強くないよ」


「……シンは火属性の魔法が使えるだろ」


「そうか! それで木を燃やして壊れやすくすれば良いんだね。じゃあ俺も木を壊すのに行って来るよ。ハクとアオは馬車で待っていてね」



 俺は馬車から出ると、他の冒険者に混ざって洞窟側に歩いて向かった。その途中で斧を装備したリクや、ザイゲンとコカを見つけて合流する。



「あれ、シンも木を壊しに来たのか?」


「うん、俺ってコカさんと同じで火属性魔法が使えるからね」



 リクとそんな話をしていると、ザイゲンが話に参加してくる。



「そうか、コカと一緒でシンも火属性が使えるんだな」


「初級魔法の『ファイア』くらいですけど、木が相手なら十分役に立つと思います」


「私の……魔法と勝負……」


「コカさんと俺とじゃ勝負にならないですよ!」



 コカはやる気を出したような表情で俺を見てくるが、俺とは使う魔法の強さが違いすぎることを知っているので、勝負にならないことは分かり切っていた。


 俺は手や首を振りコカとの勝負を拒否する。


 そのような会話をしながら歩いていると、馬小屋と人間用の小屋の前に冒険者が集まった。ギルド職員は空になった木箱を地面に置き、その上に立って俺たち冒険者に指示をする。その横や後ろには他のギルド職員が立っていた。



「私はここの拠点の管理を任されているギルド職員です、拠点主任とでもお呼びください。この場所を中心に拠点を設営するので、今からみなさんには邪魔になりそうな木を破壊して、拠点を広く使えるようにしてもらいます。木の破壊方法は自由です、斧で伐採したり、魔法で消したりなどしても構いません。破壊範囲は我々ギルド職員が示しますので、よろしくお願いします。では、作業開始です」



 拠点主任が作業開始の宣言をすると、ギルド職員たちに指示を出して、そのギルド職員たちが俺たちに破壊してほしい木の場所まで案内してくれる。


 みんな何人かのグルーブを作ってギルド職員に誘導されていった。



「あなたたちは私に付いてきてください」



 俺とリクとザイゲンとコカの4人は同じグループとして、ギルド職員の後に付いて行った。



「この木の破壊をお願いします」



 ギルド職員が指差す先には、俺の頭くらいの太さがある木が1本だけ生えている。リクは斧を両手で持ち、木に近づいていく。



「俺からやらせてもらうぜ。うりゃ!」



 リクは斧を構えて力を溜めると、木に向かって薙ぎ払った。カンと音が響きながら斧は深々と木に刺さる。斧を木から抜くと、木の半分以上が斧によって切られていた。



「もう一回! うりゃ!」



 リクが同じ場所に斧を振ると、バキバキという音と共に木は切断されて倒れた。



「この切り株はどうするんですか?」


「それは後で冒険者さんたちに道具を渡して掘り起こしてもらいます」



 俺の質問にギルド職員は丁寧に答える。するとザイゲンが切り株の前に行く。



「でも、今俺が抜いても構わないよな」



 ザイゲンはそう言うと、切り株を掴み持ち上げようとする。



「ふんっ! ふぅぅぅん!!!」



 ザイゲンは腕や額に血管を浮かばせるほど力みながら引き抜こうとした。切り株周辺の地面が少し持ち上がるが、ザイゲンは切り株から手を放し「ふぅ……」と息を吐き出す。


 もう一度掴み直して、今度は足の力も使って切り株を引っ張っていった。すると、ブチブチという音が土の中から聞こえてくる。そして切り株がグラグラし始めると、ザイゲンは切り株を引き抜くのであった。



「ふぅ……これは道具を使って引き抜く方が良さそうだな。1本抜くだけで大変すぎる」



 ザイゲンは抜いた切り株を置きながらそう言った。そしてギルド職員は次の指示を出す



「次はあの場所にある木をお願いします」



 ギルド職員が指差す先には十数本も木があった。



「今度は……私がやる……」



 コカはみんなの前に出ると、魔力を両手に溜めていく。



「『ガル・ドン・ファイア』」



 コカの両手を使って大きな炎の球を作って、それを木に向かって投げつけた。木の周りは炎で包まれていく中、コカは次の魔法の詠唱を始めていた。



「『ガル・ドン・ストーン』」



 空中に現れた石は長方形のような形になり、炎で燃える木に向かって飛んで行った。木を石で押しながら進んで行くと、木の燃えるパチパチとした音の中に、メキメキっと木が千切れるような音が聞こえてきた。


 魔法で燃やした木たちは、コカの『ガル・ドン・ストーン』の下敷きになる。コカが魔法を解除すると、何本かを除いて、そこには燃えて焦げている木が千切れて倒れていた。



「できた……」


「あんな一瞬で、凄いなコカ」


「たくさんの木が一気に! このあと俺も木を破壊するのに、コカのを見た後だと不安になってくる」


「シンはシンのできることをすれば大丈夫だよ」


「そうだね、リクの言うとおりだね」



 俺は俺のできる範囲をやるだけだ、そう思っていると、コカがある場所をずっと見ていた。



「あ……燃えちゃった……」



 コカが見つめる先に火が燃えている。どうやら『ガル・ドン・ストーン』の下敷きにならなかった火が他の木に燃え移っているようだった。



「あの辺りは今のところ広げる必要のない場所ですので、火を消しましょうか。誰か水魔法を使える人を呼んでください」


「俺が行きます!」



 ギルド職員が周りに助けを呼ぶが、俺が行ってくる。俺は急いで燃え移ったところまで向かい水魔法を唱えた。



「『ウォーター』!」



 俺が水をかけたことで、火が燃え広がる前に消すことができた。



「ありがとうございます! では私は切り株を掘るための道具を持ってきますね」



 ギルド職員が離れている間に、俺はコカが破壊できなかった木を切る。


 俺の『ファイア』で更に燃やしたりして脆くなった木に対して、俺は『パンプア』で力を上げ、何度も剣を振ることで切ることができた。


 全部切り終わる頃にはギルド職員が帰ってきて、コカ以外の3人で切り株を掘って抜いていた。

目的地に着く前に馬車が止まると「拠点を広くしたい」ということで、周りの木を壊せる冒険者が馬車から降りて集まる。その中には魔法を使う冒険者も混ざっていて、火属性の魔法が使える俺も参加する。


拠点主任から作業開始を言われて、色んな冒険者が木を破壊しに行く。俺とリクとザイゲンとコカの4人グループになって、ギルド職員の指示で木を破壊する。


リクは斧を使って木を切り、ザイゲンは切り株を引き抜き、コカは燃やしたり下敷きにしたりした。俺はコカが使った火が燃え移るのを消したり、壊せなかった木を切って行った。


そして、ギルド職員が持ってきた切り株を掘る道具で、コカ以外の3人で切り株を掘って抜いていた。



新キャラ紹介


・拠点主任


洞窟近くの拠点の管理を任されているギルド職員。

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