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182話 ☆2『火炎草調達』④(泥団子)

 草の中を隠れながら移動していると、緑の草の中にオレンジ色の何かがあるのを発見する。近づいてみると、火炎草だったので、地面から引き抜き袋に入れた。



「こんな草むらにも火炎草は生えているんだな。これなら魔物に見つからずに採れそうだ」



 それから、草を掻き分け歩き続けて火炎草を何度も見つけるが、草の中で見つけた火炎草は9つで、合計10つだった。


 クエストクリアに必要な火炎草の数は20つなので、あと10つ必要だった。



「やっぱり草のない所を探さないとダメだな。よくよく考えたら、火炎草は暑い所に生えるんだから、内側に行くほど暑くなるアッチッチ平原だったら、そりゃ内側の方が生えやすいよね」



 俺はそっと内側の方向の草を、片目だけ見える分だけ掻き分けて、周りの様子を見る。


 空にも地面にも魔物はいない、そして火炎草も生えていない。それが分かると場所を変えて、同じことをする。



「空にも地面にも魔物はいない。おっ、火炎草発見! しかも3つだ」



 俺は、すぅーっと息を吸うと草を一気に掻き分けて、一直線に火炎草の所まで走る。火炎草の前まで来ると、3つとも引き抜いて、火炎草を握ったまますぐ近くの草に向かって走り出し、草の中に入って隠れた。


 そして、物音を立てないように慎重に周りを見渡して、魔物が近くに来ていないかを確認する。



「…………よし、魔物に見つかっていないな。これで一気に3つも火炎草が手に入ったぞ」



 俺は空いた手でガッツポーズをすると、火炎草の根についた土を落として袋に詰めた。そして、火炎草を探しに別の場所へ向かう。






 草を掻き分けて周り様子を見ると、また火炎草が3つ生えている所を見つけることができた。ただ、火炎草の近くにファイアーバードが座っていて、近づいたら俺の存在に気が付かれる。



「魔力はほとんど残っていない、戦闘になったら一方的に襲われるだけだろう。どうやってバレずに火炎草を採るか……アレをやればファイアーバードの注意を別の場所に向けられるかも?」



 俺は今いる自分の所の地面に向かって手の平を向ける。



「『アース』! うっ……眩暈がする、魔力が空になったみたいだ。でも何とか欲しいものは出せた」



 地面には俺が使った『アース』によって、土が盛られている。俺はその土に、お湯に変わってしまった水を1ビン分土にかけた。


 盛られた土にかからなかった水は、アッチッチ平原の土にかかり、水をすぐに吸収して乾いてしまった。


 俺が『アース』を使って出した土は、水を吸収してもすぐには乾かず、両手で丸めれば塊になって、泥団子を作ることができた。



「よし、これを投げればファイアーバードの注意を逸らすことができるはず! でもまだこの泥団子は柔らかすぎる。もう少し土を混ぜて固めないと」



 俺は泥団子に少しずつ土を混ぜて、硬すぎず柔らかすぎにならないように調整する。


 そして、良い感じの硬さになったら、力を溜めて、勢いよく空に向かって泥団子を飛ばした。


 飛んで行った泥団子はファイアーバードの上を通過して、その先にある草むらに音を出しながら落ちた。



「クワァ?」



 ファイアーバードは泥団子が落ちた所を見ている。そして立ち上がり、泥団子の所まで飛んで行った。


 俺はファイアーバードがいなくなった隙に、草から出て走り出し、生えている火炎草を全て採り、ファイアーバードが戻ってくる前に草に隠れる。


 火炎草を袋に詰めているとファイアーバードが戻ってきた。



「クワァ! クワァ!」



 どうやらさっきまでここにあった火炎草が無くなっていることに気が付いたのか叫んでいる。


 しばらく旋回して盗んだ犯人を捜しているようだが、犯人を見つけることができず、落ち込んだ様子を見せ、別の場所に移動した。






 俺は移動するファイアーバードを隠れながら追っていく。すると、ファイアーバードは何かを見つけたのか、地面に降りて行った。その場所を見てみると、火炎草が5つも生えている。


 ただ、その場所にはさっき降りて行ったファイアーバードとは別のファイアーバードが座っていた。



「クワァ!」


「クワァ!」



 元々いたファイアーバードは、自分の火炎草が取られないように威嚇をしている。ここに降りてきたファイアーバードは、火炎草を自分の物にしたくて威嚇をしていた。


 お互い羽を広げて自分を大きく見せて相手を引かせようとするがなかなか引かない。ついには空に飛び、ファイアーバード同士で争い始めた。



「クワックワァ!」


「クワクワクワァ!」



 空中では身体をぶつけ合い、くちばしでつつき合う光景が繰り広げられる。


 お互い相手の事に集中していて、こちらに気が付きそうもない。俺は草から出ると、火炎草を引き抜いていく。



「クワァ? クワァァァ!!!」


「気づかれた!」



 俺が火炎草を採っているところをファイアーバードに見られて、追いかけられる。草に隠れてみるが、2体とも火の球を飛ばして、草を燃やして隠れる場所が無くなる。


 隠れても無駄と判断した俺は、アッチッチ平原の外に出ようと全力で走る。剣を抜き、草を切りながら外側に向かって行った。


 アッチッチ平原から出ると、暑い空気から解放されて涼しさを感じる。



「はぁはぁ……外に出た! あぁ、涼しい」


「クワァ!」「クワァ!」


「くっ、やっぱり追いかけてくるよな!」



 ファイアーバードは俺に火の球を飛ばしてくるが、火の球がアッチッチ平原から出ると、火力が弱まった。


 そしてファイアーバードは、アッチッチ平原から離れる俺を見ているにも関わらず追いかけて来ない。どうやらアッチッチ平原から離れる気はないようで、俺に向かって鳴き声を聞かせるだけのようだ。






 俺はファイアーバードが見えなくなるまで走り続け、次第に鳴き声は聞こえなくなり、足を止めて肩で呼吸をする。



「はぁ……はぁ……ここまで来ればもう大丈夫」



 俺は木の陰に入り、座って身体を休ませる。ファイアーバードから逃げるのに必死で、袋に詰める時間がなかった火炎草を見ると、1つだけ花が焦げていた。



「1つ無駄になったなぁ。でも残りの火炎草でクエストクリアに必要な数は集まった」



 俺は火炎草を袋に詰めて、街に帰って行った。






 ■






 魔物とも遭遇することなくアルンに着くと、ギルドに向かいクエストクリアの報告にいく。



「確認しますね。1、2、3、4、5……火炎草を20つ確認しました。クエストお疲れ様でした。こちらが報酬金となります」



 俺は400(ゴールド)入った袋を受け取り、

 ギルドカードには1200GP(ギルドポイント)が追加された。


 報酬を受け取ると、ギルドの食堂でミルクを注文して、一気に飲み干す。アッチッチ平原にいて喉が渇いていたからか、今までで一番ミルクを美味しく感じることができた。


 その後は、汗を流すために水浴びをして身体を綺麗にし、さっぱりした状態で自分の部屋に帰り、ぐっすりと眠るのであった。

草むらにも火炎草を見つけて9つほど採った。


しかし、草の中はアッチッチ平原の内側に比べると暑くないので、内側も探すようになる。


そこで3つの火炎草を見つけ、次はファイアーバードが座っている近くに火炎草を3つ見つける。これには『アース』を使って土を出し、お湯になった水で濡らして泥団子を作った。その泥団子を投げてファイアーバードの注意を引いてる間に火炎草を採る。


無くなった火炎草を落ち込んだ様子で見たファイアーバードは別の場所に移動する。それを追いかけると火炎草が5つ生えていた。


しかし、そこには別のファイアーバードがいて争いが始まる。俺はその間に火炎草を採ったが、気づかれて追いかけられる。


アッチッチ平原から出るとファイアーバードが追って来なかったが、追いかけられている時に飛ばされた火の球で火炎草が1つ焦げた。


その焦げた火炎草を除外してもクエストクリアに必要な数が集まっていたので、ギルドに帰ってクエストクリアの報告をするのであった。

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