180話 ☆2『火炎草調達』②(陽炎)
「暑い……なんだこの暑さはっ!」
手をうちわ代わりにして顔に風を送るが、それは熱風となって俺の顔に当たり、余計に暑いと感じてしまった。
水を飲みながら進むと緑色の壁が見えてくる。その近くに木でできた看板が立てられているのを見つけた。
その看板には『これより先、アッチッチ平原』と書かれていた。
「この暑さでまだアッチッチ平原じゃなかったのか……というよりこの緑の壁って草だよね?」
壁かと思っていた物は、近くで見ると草だった。俺の頭くらいの高さまで成長していて、壁と勘違いをするのも無理はない。
その草に手を突っ込むと、暑い空気が手に伝わって来る、だがこれならアッチッチ平原に向かう道中の方が暑かったので、俺はホッとして、草を掻き分け先に進んだ。
草の青臭い感じが充満する中を進んで行く。掻き分けた草が顔に当たり熱いと感じたり、口に入って苦いと感じるなどの事があったが、魔物が現れそうな気配は今のところなかった。
進んで行くと、草の色が緑色から黄緑色に、そしてどんどん細くなり、黄緑色から枯草色に変わっていった。
緑色だった草では掻き分けても、手を離すと元に戻ろうとしてきたが、枯草色の草は掻き分けた後に手を放しても元に戻らず、折れたままだった。
さわさわと、風で草が擦れる音が聞こえはじめると、今日感じた中で一番熱い熱風が吹き始め、俺の身体にも当たった。
「熱っ!」
この熱風で『ウォーター』で濡らしていた髪や服は乾き、顔から垂れていた汗も消えていった。
「これはマズイ」
俺は急いで袋からクーラーポーションを取り出し、一気に飲み干した。すると、全身に感じていた暑さが嘘のように消え、吹いてくる風が、春風のように心地の良いものに変わった。
「凄い、これがクーラーポーションの効果か。これなら火炎草を探すのが楽になる! 効果が無くなる前に早く採って帰ろう」
俺は枯草色の草を掻き分けて先に進んだ。先に進むほど草は無くなり、地面は土だけとなった。
「とうとう草も生えなくなったか、ん? あれは……」
地面からは陽炎ができていて、周りの景色がゆらゆらと揺れているように見える。その中に火のような形をしたオレンジ色の花と緑色の葉をした草が生えているのを見つけた。
「あれは火炎草じゃないか!」
俺は火炎草に近づいて、火炎草を引き抜き袋に詰めた。
「これで1つ採ったぞ、この辺りに生えているんだな。お、向こうにも火炎草があった!」
次に見つけた火炎草は束になって生えていて、一気に5つも見つけることができた。このペースなら簡単にクエストクリアに必要な数か集まると思っていたら、突然地面に影ができた。
空を見上げると、炎を纏った鳥がこちらに向かって来ていた。
「クワァ!」
「あれは、ファイアーバード! こんな所にもいるのか」
俺は横に飛んでファイアーバードの攻撃を避ける。
するとファイアーバードは羽を広げて角度を変え、空に向かって進み始めて地面に当たることなく、俺を起点にしながら周りを飛んでいる。
俺は剣を抜き、いつでもファイアーバードの攻撃が来てもカウンターをできるように備える。
ファイアーバードは俺が剣を構えて待っているのを見ているからか、攻撃を仕掛けるチャンスを待っているようだ。
「そうだよな、普通ならこんな暑い場所だと、待っているだけでファイアーバードの有利になるよね。だけど今の俺はクーラーポーションのおかげで、暑さで体力が減ることはない! でもクーラーポーションの効果にも限界があるから、そっちが来ないなら俺から攻めるよ」
俺は魔力を手の平の集め、ファイアーバードに向かって魔法を放つ。
「『ウォーター』!」
放たれた水の球は、ファイアーバードの進む方向に向かって飛んで行く。狙いはバッチリで、ファイアーバードは避けられないと確信したのだが。
「クワァ!」
「なにっ! 『ウォーター』が吹き飛ばされただと!?」
ファイアーバードは羽で『ウォーター』を吹き飛ばして回避してきた。ただそんなことよりも気になることがあった。
俺の使った『ウォーター』が小さすぎることだ。手の平にあって放つ前はいつもと同じ大きさだったのに、ファイアーバードの近くに着く頃にはかなり小さくなっていた。
「まさか、アッチッチ平原のこの暑さのせいで『ウォーター』が弱くなった? もう一回使えば分かることだ。『ウォーター』!」
ファイアーバードに向かって『ウォーター』を放つが、やはり進むたびにどんどん『ウォーター』が小さくなっていた。
「クワァ!」
ファイアーバードは『ウォーター』が脅威ではないと分かったからか、羽で吹き飛ばそうとしないで、俺に向かって突撃をしてきた。
『ウォーター』はファイアーバードの身体に当たるが、纏っていた炎の一部が消えるくらいで、あまりダメージを与えられなかったようだ。
ファイアーバードは加速しながら地面スレスレで移動してくる。
俺は剣を構えて、カウンターを入れるが、ファイアーバードだと思って切ったものは、陽炎が作り出した幻影で当たらず、ファイアーバードの突撃が俺のお腹に当たった。
「ぐわぁぁぁ!」
「クワァ!」
俺は少し吹き飛ばされて倒れ、ファイアーバードも別の場所で地面に落ちる。ファイアーバードは俺に突撃したことでダメージを受けたみたいだが、俺はそれ以上のダメージを受けていた。
先に動いたのはファイアーバードだった、俺に追撃をするのかと思ったら、火炎草が生えている場所に向かっているようだ。
俺は地面に倒れながらファイアーバードに向かって魔法を放つ。
「『サンダー』!」
だが、陽炎のせいでファイアーバードがゆらゆらと見えていて『サンダー』は当たっていないようだった。
その間に、ファイアーバードは火炎草を食べ始める。火炎草を咀嚼して飲み込むと、ファイアーバードの纏っている炎が強くなった。
「クワァァァ!」
大きな声で鳴くファイアーバードの口からは火が吐き出されていた。そして俺の方を向くと、口から火の球を飛ばしてくる。
俺の横に大きめの火の球が飛んで来て、俺の背後にある草が燃えた。
ファイアーバードは何回も火の球を飛ばしてくるが、俺の横を通り過ぎるだけ。どうやらファイアーバードも陽炎のせいで俺に火の球を当てられないようだった。
ここからどうやって立ち回るのが良いのだろうか、俺はそんなことを思いながら剣を握り直し立ち上がった。
緑色の壁が見えてきたと思ったら、アッチッチ平原に生えている草だった。俺の頭くらいの高さまで草が成長していたので、遠くから見たら緑色の壁に見えても仕方がなかった。
アッチッチ平原の草を掻き分けながら進んで行くと、緑色の草から黄緑色の草に変わり、そして枯草色に変わっていった。
濡らしていた髪や服が乾いてしまい、クーラーポーションを飲んで快適になった。
火のような形をしたオレンジ色の花と緑色の葉をした火炎草を見つけて採取する。
地面に影ができたので空を見ると、ファイアーバードが襲い掛かって来た。
『ウォーター』で攻撃するが、アッチッチ平原の暑さにやられていつもよりも弱くなっていた。
ファイアーバードに突撃され倒れていると、ファイアーバードは火炎草を食べ始めて火の球を使えるようになった。
俺の攻撃もファイアーバードの攻撃も、アッチッチ平原の陽炎のせいで当たらず、俺の後ろの草は燃えていて、後ろには逃げられなくなっていた。
俺は剣を握り直し立ち上がる。




