178話 ☆3『魔王軍の拠点調査』⑤(報告)
俺たちの服が脱がされると、ユカリは顔を赤くして岩陰の所まで走って行った。
ここでギルド職員はユカリが女の子だったことを思い出し、急いでフォローをしにユカリのもとへ向かう。ユカリの姿は隠れて見えないが怒っている声が聞こえ、ギルド職員がペコペコと謝っている姿が見えていた。
そして、ユカリに何かを渡してギルド職員がこちらに戻って来る。
「すみません、女性がいるのにこんなことをしてしまって……彼女には謝って来ましたので、多分許してくれたと思います。では、みなさんを綺麗にしていきますよ」
ギルド職員が俺とアオとハクの身体と服の汚れを落としていく。
腕を持ち上げて、脇から手首までに着いた墨を取ると、今度はお腹や背中を拭かれていった。身体を汚れを落としてもらっている間に、服もギルド職員によって綺麗にされていくのを俺は眺めていた。
「これでよし、全員拭き終わりました。服に付いた汚れはどうですか?」
「こちらもほとんど拭き終わりましたが、中まで浸み込んだ汚れは取り切れないですね。ここでは水の確保も難しいですし、街に帰るまではこれが限界です」
「そうですか。冒険者さん、そういう事みたいですので、街に着くまで我慢してください」
「ここまで綺麗にしてもらえただけで十分です! ありがとうございます」
俺はギルド職員から綺麗になった服を受け取り服を着る。アオやハクも受け取った服を着終えたようだ。
「ユカリ、俺たちは服を着たからもう出てきて大丈夫だよ」
岩陰からユカリがゆっくりと顔を出し、俺たちを見る。俺たちが服を着ていることを確認すると、岩陰から出てきた。
「ギルド職員さん、さっきは怒ってごめんなさいですわ」
「こちらこそ、配慮が足りませんでした、申し訳ありません」
ユカリとギルド職員はお互いに謝り合うと、ユカリが汚れた布をギルド職員に渡した。
「この布ありがとうございますわ、おかげで服の内側に付いた墨が落とせましたわ」
「私たちにできることはこのくらいしかなかったので、少しでも役に立てたようで良かったです」
ユカリは墨で汚れた布をギルド職員に返した。
こうして俺たちは橋から移動を始めて、洞窟の外に出るのであった。
洞窟を出ると、小屋の近くに馬車が止まっていた。
「馬車が何でここに? 誰か他に来た人いるのかな?」
「それは私たちが読んだ馬車ですね。荷物が多くなると思って朝に予約をしていたんです。ですが、スクイーカにほとんどやられてしまって、冒険者さんに回収してもらったこのビンだけしか運ぶものは無くなりました」
悲しそうな表情をするが、その姿は一瞬で消え、笑顔に戻す。
「このまま街に戻りますが、良かったら冒険者さんも乗っていきませんか?」
「良いんですか!?」
「ええもちろん」
俺たちはギルド職員たちの行為に甘えて、馬車に乗せてもらうことになった。
そして、馬車に揺られながらアルンに帰るのであった。
■
アルンに着いたが馬車は止まらない、どうやらギルドの前まで向かってくれるようだった。
ギルドの前まで来ると馬車は止まり、俺たちとギルド職員は馬車を降りる。
「それではみなさん今日はありがとうございました。みなさまのご活躍を今後も期待していますね」
ギルド職員たちは俺たちにお礼を言うと、ギルドに入って行った。俺たちもその後に続き、クエストクリアの報告をしに向かう。
ギルドに入ると、クエストクリアの報告をするためにハンナの所に向かう。
「クエストお疲れ様でした。調査報告は会議室でお願いします」
ハンナにそういわれて少し待つと、他のギルド職員が俺たちの所まで来て、会議室まで案内をしてくれる。
会議室に着いて、イスに座って待っていると、先ほど俺たちを会議室まで案内したギルド職員が、俺たちの正面に座った。そしてもう1人別のギルド職員が会議室に現れる。
「あれ? ドラコニスさんは?」
「ドラコニスさんは他の仕事がありまして、ここにはしばらく来れそうにありません。私と彼の2人のギルド職員が調査報告の確認をさせていただきます」
「分かりました」
俺たちは洞窟での出来事をギルド職員に話した。ギルド職員はメモを取りながら俺たちの話を聞き、俺たちが実際に目にして感じたことなどを話やすいように誘導してくれた。
「なるほどなるほど……ありがとうございます。みなさんの調査報告のおかげで、魔王軍攻略に一歩近づきました」
「俺たちの情報が役に立てましたか?」
「他の調査報告と比べてみないことには分かりませんが、この場所に魔王軍の拠点がある確率が高いですね」
「そうですか……」
「ではこれにてクエストクリアとさせていただきます。こちらが報酬金となります」
俺は375G入った袋を受け取り、
ギルドカードには1500GPが追加された。
みんなも同じ報酬をもらったようなので、部屋から退出し、ギルドの外に出た。
「それじゃあみんな帰ろうか」
「うん!」「……ああ」「そうね」
俺たちはクエストで危ない目にあったのに、それでもこうして楽しく話しながら宿に帰るのであった。
「……またな、シン」
「ばいばいシンくん」
「シンくんおやすみなさいですわ」
みんなと宿で別れた後、俺は水場に向かい、スクイーカにやられた墨の汚れを完全に落としていく。それが終わると、濡れた服を部屋で干して、眠るのであった。
身体に付いた墨をギルド職員が落としてくれた。
ギルド職員が朝に予約した馬車に、俺たちもアルンに乗って帰って来た。
ドラコニスじゃない別のギルド職員が、俺たちの調査報告を聞いてくれた。




