175話 ☆3『魔王軍の拠点調査』②(先制)
洞窟に着くと、洞窟の入口で数人のギルド職員が話しているようだ。話している内容は聞き取れないが、声のトーンからあまり良くないことが起きていると感じる。
俺たちが歩いて洞窟に向かっていることに気が付くと、ギルド職員が俺たちの所にやってくる。
「冒険者さんですね。この洞窟に何か用ですか?」
「俺たちは『魔王軍の拠点調査』というクエストを受けてここに来ました」
俺がそう言うと、ギルド職員たちの表情が明るくなる。
「丁度良かったです、実は私たちもこの洞窟の調査をしに来たのですが、魔物を避けながらの調査が難しく、困っていました。どうか一緒に調査をさせてもらえないでしょうか?」
「みんなどうする?」
「大丈夫だよ」
「……問題ない」
「大丈夫ですわ」
ギルド職員からの申し出に、みんな肯定的のようだ。
「良かった、それじゃあギルド職員さんたちは俺たちに付いてきてください」
「「「助かります!」」」
俺たちとギルド職員たちは、ランタンを装備して洞窟に入って行くのであった。
洞窟に入ってすぐのことだった、ウルフがいてこのまま進むウルフの視界に入ってしまう。ここは一本道なので避けて通ることもできない。
「戦うしかなさそうだね、みんな戦闘準備は良い?」
アオたちは頷くと、俺たちは武器を取り出し、先制攻撃を仕掛ける。
「ガウッ!」
俺たちの存在に気が付いたウルフはこちらを威嚇する、俺とユカリは二手に分かれてウルフの注意をどちらかに向けさせた。
ウルフは俺にヘイトを向けたようで俺の方を向くが、遠距離からアオとハクが魔法と弓矢で攻撃してウルフを怯ませた。
その隙に俺とユカリがウルフに向かって飛び掛かり、ウルフに致命傷を与えた。
「ガァ……ァ……」
ウルフは経験値を吐き出した。俺たちは周りに他のウルフがいないかを確認して、いないことが分かるとギルド職員を呼んだ。
「ありがとうございます! これでこの奥に進めそうです」
ここから先は警戒を強めて進んで行く。幸いにも魔物は現れなかったため、3方向の分かれ道がある所までやって来た。
ここで俺たちは分かれて進むことを決める、真ん中は俺、左はハク、右はアオとユカリだ。ギルド職員も1人ずつ俺たちの後に付いてくるようだ。
「じゃあみんな気を付けてね」
俺はそう言うと、真ん中の道を進んで行った。
■
ギルド職員と2人きりで先に進んでいる、壁や床を調べながら進んでいるが、魔王軍の拠点がありそうな痕跡は見当たらない。
「天井も問題はなさそうですね」
「もっと奥に進みましょう」
ランタンで天井を照らすが、やはり何も変わったところがなかった。
先に進もうとすると、何かが暗闇から動いたように見えた。奥にも光が届くようにランタンを向けると、アイアンタートルが歩いているのが見えた。
「アイアンタートルか……前に戦った時はみんなと一緒に戦っていたのに苦戦したから1人で戦いたくない。出来ることならみんなと合流してから戦いたいけど……」
アイアンタートルはまだ俺に気が付いていないのか、壁際まで歩くと、そこで動きを止めて休んでいるようだ。これなら不意打ちで倒せるかも知れないので戦闘準備をする。
「あの魔物と戦うのでギルド職員さんは隠れていてください」
「分かりました、お願いします!」
ギルド職員は岩陰に隠れた。
それを見届けた俺は、アイアンタートルの方に向き直す。
アイアンタートルに物理攻撃は効き難いが、もしものために事前に完全詠唱の『パンプア』で力にバフをかける。
いつでも反撃ができるように身構えながら、アイアンタートルの背後に回り込む。こちらの存在に気が付いていないみたいなので、今度は完全詠唱の『スマッシュ』を使う。
(やっぱり『スマッシュ』が大きくなっている。これを圧縮して……)
『スマッシュ』はグググっとゆっくり圧縮されて、徐々に威力が強くなってきていた。アイアンタートルはまだこちらに気が付いていない、もっと威力を高められる。
異変に気が付いたアイアンタートルがこちらにゆっくりと顔を向けた。
「クワッッッ!」
アイアンタートルが俺を敵と認識したが、十分すぎるくらい『スマッシュ』は圧縮されていた。
「『スマッシュ』!」
『スマッシュ』はアイアンタートルに向かって飛んで、アイアンタートルのアゴに辺り、進行方向が変わり、甲羅の下にある地面に当たった。
「くっ……狙いが逸れたか……ん?」
「クワッッッ!」
地面に当たった『スマッシュ』が膨らみ、アイアンタートルの甲羅を持ち上げる。それによりアイアンタートルがひっくり返った。
グラグラと動いているアイアンタートルは、首を伸ばして地面を押し、起き上がろうとしている。
俺は剣を抜き、アイアンタートルの頭の方に回り込むと、アイアンタートルの伸ばした首に向かって剣を振り下ろして首に切り傷を付けた。
「クワッ!」
アイアンタートルは血を流しながらしばらく手足をバタバタとさている。
ひっくり返った状態から回転攻撃をしようとしていたが、回転が強くなるにつれて、首から血が噴き出すようになった。
ひっくり返っているせいか、上手く回転を制御できていないが、壁に激突しながらもアイアンタートルは俺に攻撃をしようと迫ってくる。
俺はそれを避けて体力切れを狙う。
アイアンタートルは徐々に体力を失って、動きが鈍くなり、最後の力を振り絞ろうとしたところに俺は攻撃をする。
「『スマッシュ』!」
「クワッ…………」
アイアンタートルは『スマッシュ』を当てたことにより、完全に動かなくなり経験値を吐き出した。
「ふぅ……最初の攻撃でひっくり返ってくれたおかげで有利に戦闘が進められた。さあ、先に進みましょう!」
俺は隠れていたギルド職員を呼び先に進んだ。
先に進むと明るくなって外が見えてくる、そして橋も見えてきた。
「「シンくーん!」」
真上から声がするので、そちらの方を向くと、ユカリとアオがこちらに手を振っていた。梯子があったので、ユカリとアオがそれを使って降りて、俺と合流した。
「ユカリ、アオ! そっちはどうだった?」
「私たちの所には何もありませんでしたわ」
「シンくんの所には何かあったの?」
「まだ何も見つけられていないよ。これからもっと奥に行くつもり」
「そうなんだね、じゃあ今から僕たちもシンくんに合流するよ」
「私はハクくんの様子を見に行きますわ」
「分かった! ユカリ気を付けてね」
ユカリは俺が通って来た道から戻り始めて消えていった。
アオと、アオたちと一緒に行動していたギルド職員も一緒に連れて、洞窟の奥に向かうのであった。
洞窟に着くと、入口にギルド職員が数人いた。このギルド職員も調査に来ているみたいだが、魔物を避けて調査できないので、入口で困っていた。そして、俺たちと一緒に調査することをになった。
洞窟に入るとウルフが1体いたので、先制攻撃を仕掛けて難なく倒した。
3方向に道が分かれていたので、真ん中は俺、左はハク、右はアオとユカリと進む道を決めた。ギルド職員も1人ずつ俺たちの後に付いてくる。
俺が進んだ道にはアイアンタートルがいて、最初の攻撃で有利な状況を作ることができ、1人でも倒すことができた。
先に進んで橋の所まで来ると、ユカリとアオと合流する。
アオと、アオたちと一緒にいたギルド職員は俺と一緒に奥に進み、ユカリはハクの様子を見に、俺の通った道から戻って行った。




