174話 ☆3『魔王軍の拠点調査』①(洞窟)
目を覚ますと光が窓から差し込んでくる、今日も良い天気のようで、朝なのに暑いと感じる。食事を済ませて装備を整えると、俺は部屋を出る。
すると、ユカリも部屋から出てきて目が合った。
「シンくん、おはようですわ」
「ユカリおはよう。あれ? なんかいつもと雰囲気違うね」
「分かりますか。装備を少し変えたのですわ」
ユカリは俺の側まで近づくと、周りに人がいないか確認をしてから、服の下に着るインナーを首元から指で摘まんで俺に見せてくれた。
「このインナーは涼しいのに、水属性の耐性が少し上がる服なんですわ」
「へぇ、ただのインナーにも戦闘に役に立ちそうな耐性があるんだね。ユカリに似合っていて良いと思うよ」
「そう言ってもらえて嬉しいですわ」
ユカリは服を褒められて喜ぶと、アオやハクも部屋から出てきた。
「シンくんとユカリちゃんとハクくんおはよう! みんなもこれからギルドに行くんでしょ?」
「アオおはよう。俺はギルドに行くかな」
「アオくんおはようですわ。私も行きますわ」
「……俺も行く」
ここにいるみんなはすぐにギルドに行くようなので、俺たちは話しながらギルドに向かうこととなった。
ギルドに着くと、何やら騒がしい。掲示板に冒険者が群がっているようだ。
「みんな何を騒いでいるんだろう?」
俺がそう思っていると、ハクが他の冒険者から何があったか聞きに行った。しばらくすると、話を聞き終わったハクが俺たちの所に戻って来る。
「何があったって?」
「……魔王軍の拠点調査がクエストに張り出されているみたいだ」
「えっ、魔王軍の! でもそれって上位冒険者がやるようなクエストだよね、何で下位冒険者の掲示板にそんなクエストが?」
「……話を聞く限りだと、場所の特定ができていないらしく、下位冒険者が怪しい場所を調査して、特に怪しかった場所を上位冒険者が後日調査するらしいぞ」
「ああ、ほとんどがハズレかも知れないのに、魔王軍と戦う上位冒険者の戦力を削って拠点調査をしている余裕がないんだもんね」
俺は下位冒険者に拠点調査のクエストが来たことに、そのような理由があると思って納得する。
「それで、ハクはそのクエスト受けるの?」
「……俺は受けるつもりだ。どうせこの時期は討伐系のクエストはほとんどないし、そのせいで他のクエストは冒険者と奪い合いだ。リスクは高いがその分報酬も良いクエストだから、受ける価値はあるぞ」
「それもそうか。アオやユカリはどうする?」
「魔王軍の拠点は怖いけど、調査するだけなら僕でもできそうだし、もしかしたら拠点は無いかも知れないから行こうかな」
「みんな行くなら私も行きますわ!」
「……決まりだな。クエストは俺が取って来る。シンたちは受付で待っていてくれ」
ハクはそう言って、騒ぐ冒険者たちの間を通って掲示板に向かって行った。俺たちは、ハクがクエストを持ってくるまで受付でハンナと話しながら待つ。
「シンさんたちは、他の冒険者さんたちに比べて魔王軍に関わること多いですよね」
「ハンナさんもそう思いますか? 俺もそう思っていたところなんですよ。そうでしょアオ」
「そうだね。でも特にシンくんは、僕やユカリちゃんやハクくんよりも魔王軍と関わること多いよね」
「そうですわね。シンくんが関わることに魔王軍が関わっていますわ! もしかしたら、これから私たちの調査する場所に拠点があるかもしれませんわ」
「ユカリ、さすがにそんなことにはならないよ」
俺は笑いながらみんなにそう言うが、みんなは俺に疑いの視線を向ける。
「そんなに見つめられると、本当に魔王軍に関わるかも知れないからやめてよ」
「冗談ですわよ、シンくんが魔王軍と偶然多く関わっているだけなのは、私もアオくんもハクくんも分かっていますわ。そうでしょアオくん」
「えっ! ごめんなさい。僕はちょっとシンくんなら本当に魔王軍の拠点を見つけるかもって思っちゃったよ」
「まあシンさんのは偶然にしては頻度が多すぎますからね。アオさんのように思われても仕方ないと思います」
「はぁ……そうなっちゃうよね」
俺はガックシと肩を落とした。すると、クエストの紙を持ったハクが俺たちの所にやってくる。
「……どうかしたんか、シン?」
「ハクか……偶然魔王軍と関わることが多いって話で盛り上がって落ち込んでいるところだよ」
「……そうか、事情は詮索しないが、これからクエストをやるんだから、その前に気分は戻しておけよ」
ハクはそう言うと、ハンナにクエストの紙を渡す。
「このクエストですね、分かりました。クエスト内容を確認します」
――
☆3『魔王軍の拠点調査』
クリア条件:拠点がありそうな場所の調査報告
報酬金:1500G 6000GP
参加条件:☆2から☆3冒険者3人以上
~依頼内容~
ギルドが指定した場所に向かい、その周辺の怪しい所を調査して報告すること。
――
「このような内容ですが、クエストを受けますか?」
「……それで頼む」
「それではクエストを受注します。調査して欲しい場所をここから選んでください。ちなみにまだ誰もこのクエストを受けていないので、どこでも好きな場所を選べますよ」
ハンナは地図を広げると、調査する場所に赤い丸が書かれていた。たくさん赤い丸があり、そのほとんどの場所は俺が行ったことのない場所だった。
「シンくんが選んでみてよ」
「そうですわね、その方が魔王軍の拠点を見つけられるかもしれませんわ!」
「またそんなことを……俺が選んだからって、そこにあるとは限らないよ。そうだろハク」
「……どこに拠点があるかなんて分らないんだ、好きな場所を選べばいいだろ」
ハクにそう言われたので、俺はため息を吐いた後、地図に書かれた赤い丸の場所に指を置く。
「シンくん、ここは?」
「以前アオたちやリクたちやザイゲンさんたちと鉱石調達に行った洞窟だよ」
「あの洞窟ですわね! 確かに奥の方に魔王軍の拠点があってもおかしくないですわ」
「そうでしょ」
「……シンの勘が当たるといいな」
場所が決まったのでハンナに報告する。
「そこですね、ではみなさんクエスト頑張ってください!」
俺たちはハンナに手を振ると、洞窟に必要な道具を揃えてから、街を出て洞窟に向かうのであった。
ユカリが水耐性が少し上がるインナーを着ていた。
ギルドに着くと冒険者たちが騒いでいて、その理由は、魔王軍の拠点調査がクエストに張り出されているからだった。
俺が魔王軍と関わることが多いということで、俺とアオとハクとユカリの4人で調査する場所を俺が選ぶことになった。
選んだ場所は『鉱石調達』をした洞窟で、その洞窟に必要な道具を揃えてから、街を出て洞窟へ向かうのであった。




