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172話 無言詠唱鍛錬!②(手伝い)

 頭の中で完全詠唱をしてから、無言詠唱を行う。



(『スマッシュ』!)



 先ほどと変わらず、小さくて遅く、ゆらゆらと的に向かって飛んで行く。その後、何度も完全詠唱をしてから『スマッシュ』を使ってみたが、目に見える形の成果は出なかった。



「うぅ……魔力が無くなったか。でも、完全詠唱の無言詠唱は5発も使えるんだな。最初の不発だった無言詠唱を含めれば6発……いや、省略詠唱の無言詠唱だったから、7発分の魔力だったかも……うっ!  少し休憩しなきゃ」



 一気に魔力を使ったことで、軽い頭痛や眩暈がした。俺は頭を手で押さえながらイスのある所まで歩き、座ると疲れが吹き出してきたのか、テーブルに突っ伏して息を整える。



「あんな威力じゃとても使えないな、それに発動までに時間がかかりすぎる。しばらく鍛錬しないと実戦で使うことは無理そうだ」



 俺は数分休むと体調が回復したので、剣の鍛錬に入ろうと顔を上げると、態度の悪い店員ことギルド職員が、台車で荷物を運びながらやって来た。



「あの、何か俺に用ですか?」


「用があると言えば用がある。こいつを処分するのを手伝ってくれないか」



 ギルド職員が台車に乗っている箱をパンパンと叩きながら言った。複数ある箱の1つを開けると、中にはぎっしりと魔法石が詰まっていた。だが、魔法石にしては光が弱く、使える魔法石には見えない。


 ギルド職員は箱から1つ魔法石を取ると、それを俺に見せながら話し始める。



「この魔法石にはまだ魔力が残っている。しかし、魔力が残ったままだと色々と不都合なことが起こる」


「何を手伝って欲しいか大体分かりますけど、俺に何をして欲しいんですか?」


「その言い方は手伝ってくれるってことで良いんだな。この箱に入っている魔法石の魔力を抜いて欲しいんだ、抜き方は分かるか?」


「分かりますけど、何であなたがやらないんですか」



 俺はムッと口を尖らせて、ジト目でギルド職員を見る。そんな目で見ている俺に何の悪びれもなくギルド職員は「面倒くさいからだ」と答えた。



「別にタダでやらせようとは思ってない、手伝ってくれたらこれをあげよう」



 ギルド職員は、台車にある箱を1つ持ち上げると、その箱はガシャガシャとビン同士がぶつかり合う音が鳴る。箱をテーブルの上に置いて蓋を開けると、箱の中には大量のマジックポーションが入っていた。



「凄い量のマジックポーションですね、手伝ったら1本くれるってことですか?」


「いいや、全部だ」


「え、全部? 聞き間違いですよね?」



 俺は自分の耳を疑ったが、ギルド職員は本気で言っているようだった。



「ここにあるのは不良品のマジックポーションだ。道具屋や支給品として出せるほど質が高くない物で、捨てるしかないんだ。だが、そんな不良品でも一応魔力は回復する、使わないのはもったいないだろ?」


「確かにそうですけど、この量を俺1人じゃ飲み切れないですよ」


「飲み切れなくても良いよ、どうせ捨てるんだし」


「持ち帰るのはダメなんですか?」


「それはダメだ、空のビンの数が合わなくて俺がドラコニスさんに怒られちまう。この訓練所だけで飲んでくれ」


「はぁ……分かりました、マジックポーションは頑張って飲みますよ。それで、魔法石から魔力を出すために使う釜とか火炎コンロはどこにありますか?」


「それはこっちだ、ついでに魔法石とマジックポーションも運んできてくれ」



 ギルド職員が歩き出すので俺は魔法石やマジックポーションの入った箱を台車に乗せて付いて行く。道具屋からこの訓練所の出入口とは違った場所に扉があり、そこは関係者しか入ることのできない部屋のようだった。


 壁はレンガで出来ていて、窓はなく光が入らないので部屋は真っ暗である。


 ギルド職員はランタンに明かりを灯すと、部屋に何があるか見えるようになった。魔法書やダンベルなどの強くなるための物などが置いてあった。色々道具がある中で、釜や火炎コンロが置いてあるのを見つけた。



「水はどこにありますか?」


「水はここにある、この鍋を使って釜に入れてくれ」



 ギルド職員はそう言うと部屋から出ていこうとした。



「ちょっとどこに行くんですか!」


「これから訓練所の掃除をするんだ、サボるわけじゃない。魔法石の魔力を抜き終わったらアンタはマジックポーション使って鍛錬してくれ」



 そう言い残してギルド職員は扉を閉めた。



「はぁ……報酬があるだけマシか、とりあえず釜を火炎コンロの上に置いて、水を入れなくちゃ」



 俺は釜を持ち上げて火炎コンロの上に置くと、水場から鍋に水を入れて、それを釜に移し替えることを繰り返した。水場から釜まで離れているので、往復が大変だった。


 そうやって釜に必要な量の水が集まると、台車にある箱を開けて魔法石を火炎コンロの中にいれて火を点けた。しかし、少しすると火は弱くなり消えてしまう。



「魔法石に魔力があまり残っていないからすぐ消えちゃうのか。こうなったらたくさん魔法石を入れて長く火が持つようにしないとね」



 魔法石の入った箱に手を突っ込み雑に掴むと、その魔法石を火炎コンロに入るだけ詰めて火を点ける。すると、ボワっと一瞬火が強く燃え上がるが、そこから先は普通の火炎コンロと同じように動き始めた。



「…………沸騰するまで待つ間にやることがないな、魔法石から魔力を取り出すのが目的だから、魔法石を水で洗わなくても良いし、この時間を何に使おうかな。そうだ! どうせマジックポーションを一気に飲むことは出来ないから、今のうちに何本か飲んじゃうか」



 俺は箱からマジックポーションの出し、蓋を開けて飲み始める。1本飲み終わると魔力が回復していくのを感じることができた。



「ギルド職員は不良品って言っていたけど、俺からしたら十分なくらい魔力が回復するよ。よし、もう1本飲むぞ!」



 こうして俺は次々とマジックポーションを飲んで行った。そして3本目を飲んだ辺りで、俺の魔力がかなり回復したことを感じた。



「よし、魔力が戻って来たぞ。でもまだ沸騰に時間がかかるみたいだ」



 そうして他に何をするか考えていると、目の端に的が見える。俺はその的を動かして、良い感じの場所に設置した。



「どうせ俺の無言詠唱は威力が高くないからここで鍛錬しても大丈夫だよね」



 俺はそう自分に言い訳をして、的に集中していく。そして、無言詠唱で『スマッシュ』を使った。予想通り、俺の『スマッシュ』威力が低いので、部屋の他の物を傷つけることはなかった。



「待っている間の時間潰しも出来たことだし、鍛錬とお手伝い頑張るぞ!」



 この後俺は、釜の様子を見ながら無言詠唱を的に当て、魔力が無くなったらマジックポーションを飲んで回復。火炎コンロの火が消えれば魔法石を入れ替えてと、楽しく過ごすことができた。

完全詠唱の無言詠唱なら6~7発ほど『スマッシュ』を使えることが分かった。


魔力を使いすぎて体調が悪くなって、イスに座って休んでいると、態度の悪い店員ことギルド職員が台車で荷物を運びながらやって来た。


台車には光の弱い魔法石と、不良品のマジックポーションがあり、俺は魔法石から魔力を取り出すことを手伝うお礼で、捨てるはずのマジックポーションを使わせてもらえるようだ。


関係者しか入れない部屋に入れてもらうと、そこには訓練所で使うような道具などが置いてあった。そこに釜や火炎コンロがあったので、それで魔法石から魔力を取り出していく。


水が沸騰するまでの間にやることを探していたら、的を見つけたので、マジックポーションを飲んで魔力を回復させると、釜や火炎コンロの様子を見ながら無言詠唱の鍛錬を行った。

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