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170話 魔王軍の拠点報告!(分身)

 朝になりギルドに向かうと、食堂に接点のなさそうな2人が、同じテーブルで飲み物を飲んでいるのを見かけたので声をかけた。



「カイトにフィーシュさんじゃないですか。2人って知り合いでしたっけ?」


「何度か見かけることはあったけど、こうやって一緒にいるのは初めてだね」


「私も何度も雨の日に彼を見ただけで、こうして一緒行動するのは初めてよ」



 どうやらカイトとフィーシュは今日仲良くなったようだ。



「それにしてもシンは色んな人と関わっているんだね、フィーシュと話す時にシンの事を話題にできたから、すぐに打ち解けるようになったよ」


「そうね、私も話すことに困っていたけれど、シンのおかげで助かったわ」


「俺は助けた覚えはないですけどね……ところでなんで2人がここに? フィーシュさんはキッタ村に行っていたじゃないですか」


「そうなんだけど、調べて欲しいことがあるってギルドに呼び出されてここに来たの。カイトも私と同じでギルドから呼ばれたみたい」


「カイトも?」


「そうなんだ、呼ばれた理由も分からなくてね、フィーシュは上位冒険者なのに俺は下位冒険者。普通は冒険者の強さを合わせるものでしょ? なのに今回はそうじゃない。向こうを見てみなよ」



 カイトが2階に目を向けるので、俺もそこを見る。柵に寄りかかるフードで顔を隠した冒険者がいた。



「あそこにいる冒険者も俺たちと一緒にギルドに呼ばれたらしい」


「あの人あまり喋らないから何考えているか分からなくて怖いのよね、キッタ村の拠点でミートが話しかけても、返事はするけどそれだけで、いまいち盛り上がらないのよ」


「そうなんですね。俺の仲間にあまり話さない人がいましたけど、仲良くなったら口数が増えたので、フードを被ったあの人と仲良くなれば、口数が増えるかも知れないですね」


「そうだといいわね」



 フィーシュはそう言うとミルクを飲んだ。


 受付の隣にある扉が開くと、ナーゲが出てきた。ナーゲはチラッと2階を見ると、俺たちの方に向かって歩いてくる。



「全員集まっているようだな」


「ナーゲさんだ!」


「ようシン、昨日ぶりだな」


「そうですね。あのあと拠点は見つかったんですか?」


「いいや、まだ見つかっていない」



 ナーゲは首を横に振りながら両手を肩の位置まで上げため息を吐く。



「じゃあ拠点があったというのは嘘だったということですね。良かった」



 俺は胸を撫で下ろすと、ナーゲは「チチチ」と指を振る。



「まだ全部を調べたわけじゃないから、嘘だと決めつけられない。まだまだ調べてない所がある。その話は会議室でやろう、着いてきてくれ」



 ナーゲがそう言うと、カイトとフィーシュは立ち上がり、2階で柵に寄りかかっていた冒険者も階段を下りてくる。



「何ボサッとしているんだよ、シンも来るんだ」


「俺も!?」



 ギルドから呼び出されたわけじゃないのに、俺も会議室に行くことになった。






 会議室に着くと、イスに座るドラコニスの正面に俺たちが座る。左から、フードを被った冒険者、ナーゲ、フィーシュ、カイト、俺という順番だ。



「なぜここにシンくんが?」


「これからの方針に関わると思って、俺が連れてきた」



 ドラコニスは呼ばれていない俺がここにいることを疑問に思うと、ナーゲは連れてきた理由を説明して場を収めた。



「そうですか、森に魔王軍の拠点はありましたか?」


「調べてみたが、拠点の痕跡は森にはなかった。そして、森には魔王軍の拠点は無いと、俺とダイケンは考えた。だが万が一拠点があるかも知れないので、ダイケンには森を調べてもらっている。だが俺の予想ではとある場所に拠点があると思っている。それはシン知っているはずだ」


「なるほど、それでシンくんを」



 ドラコニスは俺の方を見る。



「森になくて俺なら知っているって……まさか池の中?」



 俺が驚いていると、ナーゲが理由を説明する。



「確証はない、だがそこ以外考えられない。ダイケンが岩にロープ結んで池に放り込んだが、手持ちのロープじゃ底に着きもしなかった。村長に確認したが、あの池はそこまで深くないとのことだ。シンは池に入ったと言っていたが、どれくらいの深さだった?」


「結構潜りましたけど、まだまだ底が見えませんでしたし、深くなるほど周りも広くなっていました」



 俺の言葉を聞いて、黙って話を聞いていたフードを被った冒険者が反応する。



「なるほど」



 それを聞いたフィーシュとカイトが遅れて理解する。



「私たちに池に入れって事ね」


「ということは、ギルドに呼ばれたのは水が得意な冒険者だね」



 カイトの言葉にドラコニスが訂正を加える。



「それ以外にも、無言詠唱が得意な冒険者を選んでいますよ。君たちはこれから池に入って魔王軍の拠点を探してもらいます。水中じゃ魔法の詠唱が困難ですから、無言詠唱が活躍するでしょう」



 ドラコニスは5枚紙を用意すると、次々と焼印をしていく。そうして出来上がったものを俺たち全員に配った。



「アイテムの準備をするので、その間は先ほど渡した許可証を使い訓練所で待機するか、食堂にいてください。では私はこれで失礼します」



 ドラコニスが会議室から出てしまったので、俺たちもここから出ていった。



「訓練所に行くか」


「そうですね!」



 ナーゲと俺に付いてくるように、許可証を持った全員が訓練所に向かって行った。






 訓練所に着くと、ナーゲとフィーシュとカイトはイスに座って談笑を始める。フードを被った冒険者は、壁に寄りかかっているようだ。



「ヤミィもこっちに来て話そうぜ」


「…………」



 フードを被った冒険者のヤミィは、ナーゲを無言で睨みつけると、フードを深く被った。



「俺たちに混ざりたくなったらいつでも来いよ、ここ開けとくぜ」



 ナーゲは1つイスを用意すると自分の隣に置いた。そしてナーゲはフィーシュたちとの談笑を再開する。


 俺は壁に寄りかかるヤミィに話しかけた。



「初めまして、俺シンって言います。ヤミィさんで良いんですよね?」


「…………」



 話しかけても反応がない、フィーシュの話では、返事は返してくれるとのことだったのにそれもなかった。


 俺の事が嫌いだから返事をしないのかと思っていたら、後ろから悲鳴が聞こえてくる。



「うわぁぁぁ!」


「おっ!」


「きゃっ!」



 振り返ると、ナーゲの用意したイスに、ヤミィが座っていた。



 俺は壁に寄りかかっていたヤミィの方を見ると、やはり壁に寄りかかっていたヤミィがいる。手を掴もうと触れると、ヤミィの身体をすり抜け、手は壁に当たってしまった。


 そして、壁に寄りかかっていたヤミィは散るように姿を消していった。



「なんだこれは、目を離していなかったのにいつの間に……」



 俺はイスに座るヤミィを不思議そうに見るのであった。

カイトとフィーシュが食堂に一緒にいた。


ナーゲ、カイト、フィーシュ、ヤミィ、俺の5人で会議室に向かった。


魔王軍の拠点は池にあるかもしれないので、水が得意な冒険者と無言詠唱が得意な冒険者が集められていた。


準備ができるまで、訓練所にいることになった。


ヤミィから目を離していなかったのに、いつの間にかナーゲたちの所に移動していた。



新キャラ紹介


・ヤミィ


フードで顔を隠した黒髪黒目の男性。

(ほし)4冒険者であり、無言詠唱と闇属性魔法が得意で、気配を消したり分身を作ったりする。

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