165話 2回目の☆2『薬草調達』③(追加)
兵士は倒したベアードの前まで来る。
「まさかベアードがミーナミ村まで来るとはな、みんな、魔物を倒したから運ぶのを手伝ってくれ!」
兵士がそう言うと、建物に身を潜めていた村人たちは一斉に動き出す。大きめの荷台をどこからか持ってきて、その上にベアードを載せて、村の奥の方に運んでいった。
「一段落ついたことだし、君は村長に薬草を届けるといい。魔物を入れていた袋と中身は俺が運んでおこう」
「はい、ありがとうございます。それじゃあ村長に届けてきますね!」
俺は兵士に破れた魔物の入った袋を渡し、ベアードが吐き出したスライムの横を通り、村長の家に向かった。
家に入り、イスに座る村長に薬草の入った袋を渡すと、村長はクエストクリアに必要な薬草30つ以上入っていることを、袋の中身を確認して、自分の座るイスの下に袋を置いた。
そして、紙を机の上に出すと、その紙に印をつけて、小さい袋と一緒に渡された。
「クエストありがとう。その紙はクエストクリアした証だ、それをギルドに見せればすぐに報酬がもらえるぞ。それと、その小さい袋に入っているのはGだ」
俺は袋を開けると、中には100Gが入っていた。
「それは多く薬草を採ってきてくれたので追加報酬といったところだ、受け取ってくれ」
「良いんですか! ありがとうございます!」
「それと、ここからはお願いになるんだが、もう1回薬草を採ってきて欲しいんだ。もちろん報酬はちゃんと出す」
「良いですけど、ギルドにクエストを出しているんですよね? 俺にもう1度依頼しなくても待っていれば他の冒険者が来るんじゃないですか?」
「そうなんだが、今日は雨が降っているだろう? こんな日は冒険者が来ないことは珍しくない。村の者たちはこの採れたばかりの薬草をアイテムに変えていく仕事がある。だが、この量じゃ今日中に使い切ってしまう。だからもう1度薬草を採ってきてくれないか?」
村長にお願いを受けるか悩んだが、報酬も出してくれることだし、ベアードも倒されたことで、森の脅威は少なくなっているだろうと判断して引き受けることにした。
薬草の場所は、また兵士に聞くように言われたので、村長の家から出ると、兵士の所へ向かった。
「あれ、いない」
村の入口まで来たが、どこにも兵士の姿がなかった。俺は近くにいる村人に話しかける。
「すみません、ここにいた兵士さんって今どこにいますか?」
「ああ、兵士さんなら、運んだ魔物の解体をするのに奥の方に行ったよ」
村人が指差した場所は、村長の家とは反対方向の場所にあった。村人にお礼を言い、兵士が魔物を解体している場所に向かった。
村人に教えてもらった場所に着くと、ザクッザクッと音が聞こえてくる。ベアードを部位ごとに切り分けていく兵士がそこにいた。
「ん、君か。クエストは終わったんだろ? 帰らなくて良いのかい」
兵士はチラッとこちらを見て誰が来たのか確認すると、ベアードの解体作業をするために目線を俺から外して、ベアードに向ける。
「実は村長にもう1回薬草を採って来るように頼まれちゃいまして、他の薬草のが採れる場所が知りたいんです」
「俺が教えた場所の薬草は全部採っちゃったのかな?」
「いや、まだ半分以上残っています」
「だったら同じところで薬草を採って来ると良いよ」
「良いんですか」
「どうせ数日したら薬草は生えてくるし、気にしなくても良いよ。それよりも気になるのは、このベアードなんだ」
兵士は、解体が終わって、肉の塊となっているベアードを見る。
「爪にはゴブリンの痕跡があるのに、ゴブリンを食べた痕跡がないんだ。襲ったけど食べなかったということは、何か別のものを狙っていて、それの邪魔になるから戦ったと思われる。君はベアードに追われていたんだ、何か心当たりはあるかい?」
「そういえば、追いかけられて逃げている途中にゴブリンがいて、そのゴブリンを囮にしてきました」
「袋にゴブリンは入っていなかった。ということはまだ森にゴブリンが残っているかもしれない、手遅れかもしれないが、薬草を採りに行くときに、そのゴブリンを回収しておいてくれ」
「はい!」
俺は、薬草を採って来るだけではなく、倒されたゴブリンの回収もすることになった。兵士から新しい袋を渡されて、森へ向かった。
■
村を出て、森の中を進んでいるが、ゴブリンがどこで襲われたか正確な位置は分からない。俺がベアードから逃げてきた方向から探していくしかない。
幸い、ベアードが木にぶつかりながら追いかけてくれていたおかげで、ぶつかった木は他の木に比べて変形していて、何も手掛かりがないという状況は避けられていた。
そうやって変形した木を頼りに進んで行くと、争ったような痕跡がある場所まで辿り着いた。
地面や周りの草に血が付いているので、ここでゴブリンをベアードが襲ったのだろう。俺はゴブリンを探すが、見つけられないでいた。
「どこにいるんだ」
俺は草をかき分けながら探すと、目の前の地面にゴブリンの手だけが残されていた。どうやら他の魔物に食べられてしまったようだ。
「これだけしか回収できなかったか……」
俺はゴブリンの手だけを袋に詰めて、目的の薬草が生えている小さな池に向かう。今度は魔物に会うことなく池まで辿り着くことができた。
俺は池の周りにある薬草を採ろうと近づくと、池の水が盛り上がり始めた。
「何だ!? おっと!」
池から触手のようなものが伸びてきて、俺に襲い掛かって来る。俺はそれをとっさに避けた。池から現れたのはミズクラゲだった。
俺は剣を抜き、戦闘態勢に入るのであった。
倒したベアードを村人たちが荷台を使って運んで行った。
薬草を納品してクエストクリアすると、クリアの証明書を作ってもらい、多く薬草を持ってきたので、追加で100Gもらえた。
そして、もう一度薬草を採ってきて欲しいとお願いされる。
俺はそれを受けてもう一度小さな池に向かった。その道中に回収できなかったゴブリンを回収しようとすると、そこには手しか残っていないゴブリンがいた。
池に着くと、池の水が盛り上がり、ミズクラゲが現れた。




