16話 魔法鍛錬!④(呪文)
目を覚まして窓を見るとまだ薄暗かった、どうやら早く起きてしまったみたいだ。二度寝をしようとしたが、完全に眠気が無くなっていたので起きておくことにした。瞑想を始めようと思ったが、魔法書を読む前に眠ってしまったことを思い出し魔法書を読む。
(魔法名はもちろん、呪文や効果についても書いてあるね)
明かりが無いので、顔を本に凄く近づけて読む。
『ファイア』『ウォーター』『サンダー』『アース』『ウィンド』
これらが火・水・雷・土・風の初級魔法のようだ。そこを基本にして色々な魔法があり、ランド先生が使っていた『ストーン』は土魔法になるみたいだ。中級魔法や上級魔法もあり、ドン系、ガル系などと書いてあった。
(属性魔法は、魔力をそれぞれの属性に合わせないと十分な威力にならなかったり、発動しなくなったりもするのか。確か人間は無属性の魔力を使っているはず……いきなり属性魔法を覚えることは厳しそうだ。無属性の魔法は無いのか?)
パラパラとページをめくると無属性の魔法を発見する。
『バースト』『バレッド』『スマッシュ』などという魔法があり、
『バースト』は、魔力を一直線に放ち続ける魔法で、
『バレッド』は、魔力の針を複数本放つ魔法で、
『スマッシュ』は、魔力の塊を放つ魔法のようだ。
(無属性魔法は魔法と言いつつほぼ物理攻撃みたいなものだな。それでも完全詠唱さえできれば、今の俺の剣での攻撃よりはダメージが与えられそうだ。呪文の詠唱も属性魔法に比べたら短いから覚えやすそうだし)
そうやって次々と魔法を見ていくと、無属性魔法から星属性魔法のページになった。星属性魔法は回復にバフ系デバフ系、状態異常や状態異常解除などサポート向きの魔法が多く書かれていた。
(バフ系の魔法があるのか。攻撃力を上げる魔法を使えるようになれば、毎回魔法を使わなくて済むから魔力に余裕ができそうだな。戦闘前なら完全詠唱を使えても、戦闘中は長々と詠唱している余裕はなさそうだから、もし攻撃魔法を使って1発で仕留められないことを考えると、こういうバフ系魔法も悪くないね)
そうやって魔法書に没頭していると、日の光は差し込んでないが、周りがだいぶ明るくなっていることに気が付いた。明るくなったことでもっと細かい部分も読みやすくなっていた。
(まだまだ時間はあるから、覚えられるだけ覚えちゃおう)
『魔法の歴史』と書かれたページがあったので読んでいく。
魔法とは元々魔物が使っていたもので、魔物は言葉を発しないが強大な力によって高威力を出す。これは人間が無言詠唱と呼んでいる詠唱方法だ。もし人間が同じように使えば低威力なのは確実なのになぜ高威力で出せるのか。それは、魔物の魔力が無属性ではない個体がいるからである。
(なるほど……魔法は魔物が使ったものを真似たのか)
無属性の魔力の人間が同じように魔法を使うなら、呪文による補助が必要であった。無属性の魔力を別の属性に変えたり、魔力の流れを良くしたり、足りない魔力を周りから集めたりと……
などなど、人間が魔法を使えるようになるまでの苦労が書いてあった。
(なかなか面白かった)
俺は魔法書を閉じる。いつもより読み辛い環境で読んだからか疲れが出始めた。休憩も含めて朝の鍛錬まで瞑想を始める。
――
朝の鍛錬が始まった。いつもと同じことをして今日も無事に終わる。空には雨雲が増えているので、お昼ごろには雨が降りそうだった。学校内に戻ると、どこからかズドンズドンと重いものが落ちてくるような音が何回も聞こえてくる。みんなも音に驚いているけど最初だけで、落ち着いて昼食を楽しんでいた。
昼食を終えると、外は土砂降りになっていた。こんな天候でも外で授業をやるみたいだ、こんな天候だからこそやる意味があるのかもしれない。今日やることは、ランド先生が用意した高低差のある石を登る鍛錬だ。1つ1つの大きさを考えると、石というより岩と呼んだ方がいい大きさだ。大量の岩は山となり、高さもあるが横も長くなっているので緩やかといえる。晴れていたら頂上まで登ることができる生徒はほとんどいただろうが、当然足場は雨で濡れていて、上から流れてくる水が障害物となっている。頂上を見るために顔を上げると雨が顔にかかり視界が悪くなる。
(登り辛いな!)
濡れた足場のせいで踏ん張りは効かず、流れる水で手や足がすくわれる。何人かはそれで転び一番下まで戻される。俺もその1人だ。登りやすそうなところは諦め、水の流れが緩やかなところを探す。高さが急にはなるけど濡れているだけで、水がほとんど流れてない場所があった。
(これならいけそうだ)
中段くらいまでは順調に登れていたが、上に続く道は無かった。横に飛び移ればまだ道は続くが、この悪天候では危険なので素直に降りることにした。一番下まで降りることができて油断したせいか、最後の一歩で足を滑らせ身体中泥だらけになった。結局この日は誰も頂上に辿り着けずお昼の授業は終わった。
――
みんな考えは同じなのか、お風呂はいつも以上に混んでいた。雨で冷えた身体を温めるために長居しているようだ。待っている間に泥だらけの服を洗う、身体はどんどん冷えていく。泥が多くついていたせいで、すべての泥を取っていたらお風呂の列の最後尾になっていた。やっと順番が回ってきた。最後なので気が済むまでお風呂に浸かっていた。
(長く入り過ぎたのかな?頭がぼーっとするなー)
お風呂から上がり着替えて、ふらふらとした足取りで部屋に戻る。自分のベッドに横になるとすぐに眠りについてしまった。