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150話 ☆3『ウルフ討伐』⑦(大群)

 俺たち4人は、4体のウルフにそれぞれ攻撃を仕掛ける。



「はぁぁぁ!」


「ガァ……」


「『ウィンドショック』! えいえい!」


「クゥ……」


「……ふん! ふん!」


「ァ……」



 俺とユカリとハクは、積極的にウルフの近くまで走り、攻撃をしてウルフを倒していく。



 オウマのおかげでこの辺り一帯が明るくなっているので、ウルフの暗闇に紛れて攻撃してくる方法は、ほとんど意味を成していなかった。



「よし、僕だってシンくんたちみたいに頑張るぞ。えい!」


「ガウッ!」


「うわぁ!」



 アオは槍を突いてウルフに攻撃をするが、浅いのかダメージを少し与えただけで、ウルフの攻撃を止まらない。アオの腕に噛みついて、引き千切ろうと口をギリギリと動かしている。



「アオくんから離れなさいですわ!」


「クゥ……」



 ユカリがアオに噛み付いているウルフに向かって一直線に進んで、細剣でウルフのお腹を突く。その痛みでウルフはアオから口を離して、ユカリの突きの衝撃で地面に転がる。



「……そこだ、ふん!」


「ァ……」



 ハクは転がるウルフを弓で追いかけながら狙いを定めて、ウルフのこめかみに矢を当てることができ、倒すことが出来た。



「大丈夫かアオ!?」



 俺はアオの側により噛まれた所を確認する。血は出ていないみたいだから加護は残っているようだ。



「支援魔法で防御力を上げていたからほとんどダメージはないよ。でも一応自分に回復をしておくね」



 アオは自分に『ヒール』を使って、噛まれたときに失った加護を回復した。



「これで元通り。それにしても、4体のウルフを同時に相手しても、僕がダメージを受けるだけで済むんだね」


「そうだね、このままウルフが4体以下ずつ来てくれれば、クエストは達成出来そうだ」


「そうはいかないみたいだよシン」



 俺の言葉に対して、後ろから俺たちの戦いを見ていたオウマが、空いている方の手で、森の方を指差した。



「シンさん! 森にたくさんのウルフがいますよ!」



 キャリーが手に持つ松明を震わせながら森の方を見ている。そこには、赤い目を光らせたウルフが10体以上いて、俺たちを睨んでいた。



「なんて数だ!」


「一斉に襲われたら大変ですわ」


「「「「「ワオーン」」」」」



 ウルフたちが一斉に吠える。この吠え方は森に入る前に聞いたことがある。仲間を呼ぶ声だ。


 俺たちはあまりの音の大きさに耳を塞ぐ。ウルフたちの仲間呼びが終わると、先ほどいたウルフが倍以上に数を増やしていた。



「ははは……この数を倒せたら、今日中に街に変えれそうだね」



 俺は今すぐこの場から逃げ出したい思いを押し込めて、顔を引きつらせながら強がりを言った。アオもハクもユカリも、顔に汗がにじみ出ている。



「……そんな事を言っている場合じゃないぞ、俺たちでどうやってこのウルフの大群を倒せるんだ?」


「うぅ……僕は何も思いつかないよ……シンくん、何か良い方法ないの?」


「そうだな……ユカリの『フライ』で、俺たちをこの壁の上まで運んでもらって、上からウルフを一方的に攻撃する……とか?」


「……確かに上から一方的に攻撃出来れば、俺たちでもこのウルフたちを倒せるだろうが。ユカリに俺たち全員を運ぶことなんて出来るのか?」


「そんなこと無理ですわ。私1人なら登れますけど、誰かを運ぶほど私の『フライ』は便利じゃありませんわ」


「やっぱり無理かぁ……」


「じゃあ僕があのウルフを何とかしてあげようか?」



 オウマが軽く笑みを浮かべながら俺たちにそう問いかける。



「オウマの強さは分からないけど、あの数のウルフは厳しいよ」


「あの程度なら全然問題ないよ。闇のエネルギーも十分足りているからね」



 オウマはそう言うと、ウルフに向かって歩き始める。



「無茶だってオウマ!」


「……シン!」



 俺がオウマを止めようと一歩足を踏み出す前に、ハクに肩を掴まれて止められる。そうしている間にも、オウマは前に進み、ウルフに囲まれてしまった。



「ガウッ!」「ガウッ!」「ガウッ!」


「このまま僕たちを見逃すなら、これ以上僕は君たちの邪魔をしない。なかなか良い条件だと思うけど、どうかな?」


「ガウッ!」「ガウッ!」「ガウッ!」



 ウルフたちはより大きな声で吠え始める。オウマの言うことを聞く気はないようだ。



「それが、君たちの答えだね…………」



 オウマは、今まで集めた闇を握り潰すと、それを空に向かって放り投げる。今まで押さえつけられていた闇は、地面に向かって雨のように降り注いだ。



「ガァ……」「クゥ……」「ァ……」



 数十体もいたウルフたちが次々と黒い閃光に貫かれて、何体かのウルフは経験値を吐き出し、それ以外のウルフは虫の息になるほどのダメージを受けていた。



「たくさんいたウルフを一瞬で……」



 俺たちはオウマの強さに驚いて、開いた口が塞がらなかった。そして、辺りが急に暗くなる。



「何だ、暗くなったぞ!?」


「暗くなったのは、僕の集めた闇が元の場所に戻ったからだよ。さあ、まだ息のあるウルフを倒しな。今なら反撃されることなく簡単に倒せるよ」


「グ……グルゥ……」


「……っ! 今はチャンスだ、ウルフが弱っているうちに倒すぞ!」



 ハクは弓からナイフに武器を変え、虫の息のウルフに止めを刺していく。それに続いて、俺たちも、ウルフに止めを刺しに向かった。






 ■






「これで……最後っ!」


「ァ…………」



 この場にいるたくさんのウルフを一気に倒したことで、大量の経験値がキラキラと輝き、宙に浮いている。それが俺らの全身に集まって来る。



「止めを刺すだけだったけど、数が多いから大変だった。これもオウマがウルフを弱らせてくれたおかげだよ」


「どういたしまして」


「……これで、クエストクリアに必要な討伐数になっただろう」


「はいです! 20体以上は確実にあると思います!」



 キャリーは倒したウルフを回収していく。



「ここまで手伝ってもらったから、クリア報酬をオウマにも分けないといけないね」


「僕はそういうのはいらないよ」


「本当にもらわなくていいの?」


「うん、あっても使わないからね」


「……オウマもこう言っていることだ、報酬は俺たちだけで良いだろう」


「あとは僕たちが無事に森から抜けて街に帰るだけだね」


「そうですわね……ふぁ。終わったと思ったら眠くなってきましたわ」



 ユカリはあくびをして眠そうにしている。ずっとウルフと戦っていたのに加えて、ユカリは魔法や技をたくさん使い、魔力を消耗している。眠くなるのも当然だろう。



「……ユカリは疲れているようだし、この状態で帰るのは危険だろう。寝て明るくなってから帰ろう。俺も走り続けて疲れた」


「僕もハクくんと同じく、疲れちゃった」


「そうだね、さっきまで戦って血があちこちに飛び散っているけど、ここなら見通しもいいし、ここで食事にして寝ようか。キャリー、食事の支度と寝袋の用意をお願いするね」


「分かりました!」


「待って」



 キャリーはカバンを下ろそうとすると、オウマが声をかける。



「俺と父さんがこの洞窟に住んでいるって言ったでしょ? 騒がないって約束してくれるなら、洞窟を使っても良いよ。そこなら外から魔物に見つかることはないからさ」


「ありがとう、助かるよ!」


「オウマくんありがとう」


「使わせてもらいますわ」


「……助かる」


「オウマさんありがとうございます!」


「じゃあ行こうか」



 オウマの後について行き、俺たちは洞窟に入って行った。

4体のウルフと戦うことになり、俺とユカリとハクは1人で体のウルフを倒すことが出来た。アオは倒すのに手間取り、ウルフに噛み付かれ、ユカリやハクの助けを借りてウルフを倒すことが出来た。


その4体と戦っている間に、森にはたくさんのウルフがこちらを睨んでいて、仲間呼びをして、数十体という大群となった。


オウマが代わりに戦ってくれるみたいで任せてみると、集めた闇を空に放って、それが雨のようにウルフたちに降り注いで、一部のウルフは経験値を吐き出し、それ以外の全てのウルフは虫の息にまで追い詰めた。


生き残ったウルフたちは、俺たちが止めを刺して、大量の経験値を得る。そして、クエストに必要なウルフの討伐数以上を倒していることが分かった。


ユカリはあくびをしたり、ハクやアオも疲れているので、この場所で朝まで過ごすことに決める。


すると、オウマから「洞窟を使っても良いよ」と言われて、俺たちは洞窟に入って行った。

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