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149話 ☆3『ウルフ討伐』⑥(オウマ)

 逃げるために森の奥に進んでいるので、街から遠ざかっていく。ある程度進んで振り返るとゾンビがいなくなっていて、別の方向に進み、街に帰ろうとするが、そこからゾンビが現れてしまう。



「『ファイア』!」


「『ウィンド』!」


「逃げるよ!」


「ヴゥゥ……」「ヴゥゥ……」「ヴァァ……」



 追ってくるゾンビたちに魔法を当てながら逃げるが、次から次にゾンビが追いかけてきて、数が減るどころか増えてきていた。



「追って来なくなったと思って別の道に行こうとすると、すぐゾンビが出てくる。キリがないぞ……うっ!」


「どうしたの、シンくん!?」



 走りながら目を押さえる俺を心配してアオが声をかけてくる。



「大丈夫だよアオ、暗視ポーションの効果が切れてきたみたいで、どんどん視界が暗くなってきているだけだよ。でも困ったな、暗視ポーションが切れたら、ゾンビから逃げるのも大変になるぞ」


「ヴァァ……」


「『ファイア』!」


「『ウィンド』!」



 横から現れたゾンビに向かって俺の『ファイア』と、ユカリの『ウィンド』で炎上させる。しかし、このやり方だけではゾンビは倒せない。



「……ふん!」


「ヴァァ……」


「……もう矢が10本もない、火の中に矢を放っているから回収もできない、これ以上ゾンビを倒すと俺たちの武器がなくなる」



 ハクが矢で炎上したゾンビを攻撃して倒れさせて、やっと経験値を吐き出す。1体倒すのにかかる武器や魔力多いため、いずれ抵抗手段がなくなり、全滅するだろう。



「私はまだまだ『ウィンド』を使えますわ!」


「俺は魔力を使いすぎて、そろそろ『ファイア』が撃てなくなりそうだ……」


「……仕方ない、シンはしばらくの間、魔法を使わないでくれ」


「でも、そんなことしたらゾンビを燃やせないよ」


「……俺がシンの代わりにゾンビに火をつける」


「ハクさんそんなことできるんですか!?」


「……もちろん俺1人では無理だ。キャリー、布と油はあるか?」


「予備の松明に使う布と油はありますよ!」


「……それを俺に渡してくれ」



 ハクはキャリーから布と油を受け取り。そして、布をナイフで切って、布の切れ端を複数作る。


 ハクは布の切れ端に油をしみこませると矢に結ぶ。そして、キャリーの持つ松明に自分の矢を近づけて、矢に結ばれた布に火がついた。



「……キャリーが使っている明かりが松明で助かった。松明の火を利用すれば、油を浸み込ませた布に火がつき、火の矢にすることができる。それをゾンビに撃ちこむ」


「ヴゥゥ……」



 ゾンビの額に火の矢が当たり、火がゾンビの身体に燃え移る。



「……ユカリ!」


「分かりましたわ! 『ウィンド』!」


「ヴァァ……」



 ユカリの魔法で風が送られ、火の矢が刺さった部分から徐々に火が大きくなり、ゾンビが炎に包まれていく。次第に炎は弱くなり、ゾンビは焼かれて経験値を吐き出した。ハクとユカリの2人でも倒せることが分かった。



「燃えましたわ!」


「おぉぉ! ハクとユカリだけでゾンビが倒せているよ!」


「凄いねハクくん!」


「さすがですハクさん!」



 みんなハクの作戦が上手くいって喜んでいる。



「……だが、これが使えるのも俺の矢の本数まで。時間稼ぎにしかならないぞ……っ! なぜ起き上がる!」



 先ほど焼かれて経験値を吐き出したゾンビが、骨だけになったのに再び起き上がり、俺たちを追いかけてくる。



「さっき経験値を出したじゃないか、なんでまだ動けるんだ!?」


「……考えたくはないが、俺の放った火の矢では火が足りなくて、燃え切らなかったのだろう。ゾンビは倒せても死体は骨となって残った、その骨が再びゾンビになったんだ」


「それじゃあ!?」



 みんな目を見開いて驚く。次にハクの口から出される言葉が何か分かっていたからだ。言わないでほしいと誰もが願うが、そんなみんなの気持ちを理解しつつ、ハクは困ったような表情で言葉にした。






「…………ゾンビは俺たちじゃ倒しきれない」






 夜風が吹き、顔の汗を乾かす。生暖かいはずの空気が冷たく感じる。ゾンビの呻き声と、俺たちの走る足音が頭の中に響き渡る。


 俺たちはゾンビから逃げ続けるしか道はないのかと思っていると。



「……………………るよ」



 どこからか声が聞こえてくる。



「ん? ハク、何か言った?」


「……いや? シンこそ何か言ったか?」


「ゾンビの他に何かいるの?」


「これ以上増えないでほしいですわ」


「シンさん、ハクさん、何か聞こえるんですか?」



 声のような音が聞こえているのは俺とハクだけで、アオとユカリとキャリーは聞き逃したようだ。



「誰かに呼ばれたような気がしたんだ」


「……俺も何か分からないが聞こえたぞ」


「………………られるよ」


「そうそう、こんな感じの……っ! 誰の声だ!?」



 みんなの顔を見るが、全員頭を横に振り、自分じゃないと答える。



「…………こっちにおいで」


「どこだ? どこから声が聞こえる!?」



 目を凝らして辺りを見るが、不審なものはどこにもない。



「シンくん、前!」


「何だ、あの炎は!?」



 俺たちはこれから進む道の先に黒い炎を見つけて、走るのを止め警戒する。



「警戒しなくても大丈夫、と言っても信じられないか」



 黒い炎を手の平に浮かばせた何者かが木の陰から現れる。


 見た目は俺たちと同じくらい幼く、黒髪ロングの黒目の少年。所々傷んだ服を着ていて、素足である。


 俺はそいつの顔に覚えがない、みんなに確認しても、知らない子供のようだ。



「ヴゥゥ……」「ヴゥゥ……」「ヴァァ……」


「っ!」


「僕に付いてきて」



 得体の知れない少年は走り出す。



「あ、ちょっと!」


「……ゾンビよりはマシだ、シン、あいつを追いかけよう」


「そうだよシンくん、あの子を1人にしていられないよ」


「そうですわ、あの子も炎が使えるみたいですし、ゾンビが倒しやすくなるかもしれませんわ」


「行きましょうシンさん!」


「仕方ない、どうせ俺たちはゾンビから逃げるだけなんだ、付いて行ったら何か変わるかもしれない」



 俺たちは得体の知れない少年に付いて行くことになった。






 ■






 走り続けると、木同士が離れていて、空が見えるほど葉などが月明かりを遮らない空いた空間に出た。



「ここまでくれば大丈夫かな」



 少年は黒い炎を消して、俺たちを待っている。



「はぁ……はぁ……やっと追いついた……」



 俺だけじゃなく、みんなも息を切らしているが、この少年だけは、呼吸を全く乱していない。



「ここは?」



 辺りを見渡すと、半円状に木が離れているだけで、目の前には壁があり、そこには穴が開いていて洞窟のようになっていた。この洞窟に少年は俺たちを連れてきたかったのだろうか?



「自己紹介がまだだったね、僕の名前はオウマ、最近この洞窟に父さんと住み始めたんだ、君たちの名前は?」


「俺はシン」


「僕はアオだよ」


「私はユカリですわ」


「私はキャリーです」


「……俺はハクだ」


「シンにアオにユカリにキャリーにハクだね」



 オウマが俺たちの顔と名前を憶えていく。



「……こんな所に住んでいるのか」


「事情があってね、元々北の方に住んでいたんだけど、ここまで逃げてきたんだ」


「北ってことは、オウマは……魔王軍に襲われて……」


「ヴゥゥ……」「ヴゥゥ……」「ヴァァ……」


「ここまでゾンビが追いかけてくるのか!?」



 後ろを振り返るとゾンビが3体現れる。しかし、それ以上は追ってきていないようで、この3体だけのようだ。



「ふん」



 オウマが手の平に黒い何かが集まる。すると、この辺りがどんどん明るくなってくる。



「オウマ何しているの?」


「ああ、ここ一体に広がる闇を集めているんだよ。どう? 僕が闇を集めているから、明るくなったでしょ」


「本当だ、明るいよ!」


「凄いですわ!」



 アオとユカリは明るくなったことに喜んでいる。



「僕が闇を集めている間にゾンビを倒しなよ、シンたちが炎を使ってゾンビを燃やしていたのは見ていたよ」


「実は、もうほとんど魔力を使っちゃって、3体に『ファイア』を使えるか分からない。オウマがさっき出していた黒い炎は使えないの?」


「僕が戦うとシンたちのためにならないから戦闘には参加しないよ。アオに戦わせれば良いじゃないか」


「えぇっ! 僕の『ウォーター』じゃゾンビは倒せないよ」


「あれ? アオは森に入る前に回復魔法使っていたよね?」


「使っていたけどそれがどうしたの? というよりオウマくんは何でそんなこと知っているの?」


「もちろん見ていたからさ。みんなはこの暗闇で見えていないだろうけど、僕は暗闇でも遠くまで見えるから」



 オウマがそんな能力まで持っているのかと俺たちは驚かされてばかりだ。



「それで、ゾンビとアオの回復魔法に何の関連性があるの?」


「ゾンビは、というより、アンデッド系やゾンビ系の魔物は回復魔法でダメージを与えられるんだ」


「そうなの!?」


「試しにやってみると良いよ」


「うぅ……うん、やってみる!」



 アオは勇気を出してゾンビに近づき、回復魔法をかける。



「『ヒール』!」


「アァァッッ!!!」



 ゾンビの身体はみるみる崩れていって、経験値を吐き出した。



「嘘!? アオの『ヒール』で、一撃でゾンビを倒したぞ!」


「そんな方法があったとは!」


「凄いですわアオくん!」


「……その調子で他のゾンビも頼む」


「うん! 『ヒール』『ヒール』!」


「アァァッッ!!!」「アァァッッ!!!」



 アオが1人で、ここにいるゾンビ3体を倒した。



「やった……僕やったよ!」



 アオは大はしゃぎである、だが、ゾンビを倒して喜んでいると、ゾンビ以外の魔物もやって来た。



「グルゥ……」「グルゥ……」



 ウルフたちが草むらから姿を現し、俺たちを狙っている。



「僕が明るくしているから、まともに戦えるはずだよ。頑張りな」



 俺とアオとハクとユカリは、ウルフに向かって攻撃を仕掛けるのであった。

ハクが布と油を使って火の矢を作り、俺の『ファイア』の代わりをしてくれたが、火が弱く、ゾンビを倒しても、残った骨がゾンビとして再び魔物になった。


暗視ポーションの効果も切れて、逃げる俺たちの先に黒い炎があり、木の陰から少年が出てくる。その少年が「付いてきて」というので、付いて行くことになった。


付いて行くと半円状に木同士が離れた空間に出て、目の前には壁があり、そこには洞窟があった。オウマと名乗る少年は、父親と一緒にその洞窟に最近住み始めたみたいだ。


森から3体のゾンビがやってきて、オウマは周りの闇を集めることで明るくして、アオにアドバイスをして『ヒール』を使わせ、ゾンビ3体を倒した。


そして次にウルフたちがやって来たので、俺たちは攻撃を仕掛けるのであった。



新キャラ紹介


・オウマ


見た目はシンたちと同じくらい幼く、黒髪ロングの黒目の少年。所々傷んだ服を着ていて、素足である。


元々北の方に住んでいたが、分け合って父親と一緒に森の中にある洞窟に最近住み始めている。


体力があるのか、走っても呼吸を乱さず、黒い炎や、闇を集めて周りを明るくしたりなどを無言詠唱で行っている。

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