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147話 ☆3『ウルフ討伐』④(暗視)

 森の入口まで辿り着くと、ジリリリと大きな声で鳴く虫が木の幹に止まっている。その虫はキャリーの持っているランタンに目掛けて飛んでくる。



「わわわっ!」


「きゃぁ! また虫ですわ!」



 虫はランタンに当たると、バチンっとランタンの表面に羽が当たり弾かれる。弾かれた虫は空中で体勢を立て直して、再びランタンに向かって飛んでくる。



「夏の夜は虫が多くて嫌ですわぁ!」


「森に入ったらもっと虫が明かりによって来るよぉ!」



 ユカリとアオは、ランタンを持つキャリーから距離を取り、遠くで身を丸めている。



「大丈夫ですよユカリさん、アオさん。ちょっと待っていてくださいね」



 キャリーはランタンを地面に置くと、虫はランタンに釣られて地面に向かって行く。その間にキャリーはカバンを降ろし、中から松明を取り出した。



「シンさん『ファイア』を使っていましたよね? この松明に向かって『ファイア』を近づけて火をつけてください!」


「うん、良いよ、『ファイア』!」



 俺は『ファイア』を唱えて手の平に火の球を出して、それを松明に近づける。キャリーの持っていた松明に火が付くと、ランタンと同じくらいの明るさがあり、ランタンにはない熱さを感じた。


 松明が燃えて明るくなると、ランタンに向かって飛んでいた虫が松明の炎に向かって飛んでくる。しかし、炎に向かって飛んでしまったため、羽が焼けてしまい飛べなくなり、地面にボトっと落ちる音が聞こえた。



「松明の明かりなら、向かってきた虫は炎にやられて飛んでこれなくなります! これならユカリさんや、アオさんが虫に怯えることはほとんどなくなると思います。ただ、ランタンと違って長持ちはしないので、松明がなくなったときは我慢してくださいね」



 キャリーが松明を使ったことで群がる虫がどんどんと羽を焼かれて動けなくなっていく。周辺の虫を焼き尽くしたのか、もうほとんど虫が寄って来なくなった。



「それにしても、夏の夜は虫が多いんだなぁ」


「んー、普段はこんなに寄って来ることはないんですよね。今日は虫が多くて不思議です」


「……虫のことはもう良いだろう、アオ、ユカリ、早く森に入るぞ」


「うん!」「はいですわ!」



 離れていたアオとユカリは虫が減ったことで俺たちの近くに戻って来た。



「それじゃあ森に入って行きましょう! ここからは暗くなるので、松明を持った私が先頭を歩きますね」


「キャリー、魔物にいつ襲われるか分からないから、俺が松明を持つよ」


「いえいえ、ご心配はいりません。私は自分の身は自分で守れます! シンさんたちが松明を持つと、魔物と戦う時に不便でしょうから、やっぱりサポーターの私が持つべきなんです」


「分かった、キャリーがそういうならキャリーに任せるよ」


「……なあシン、暗視ポーションを使うのはどうだ? シンは2つ買ったんだから1つ使っても良いんじゃないか?」


「そうだね、効果の確認もしておきたいし使ってみるよ」



 俺は袋から暗視ポーションを取り出し、一気に飲み干した。



「ぷはぁ……おっ! おっ!?」



 暗視ポーションを飲んだ後、暗くて見えなかった森の奥が徐々に明るく見えるようになってくる。あまりに見えすぎて一瞬だけふらついた。



「シンくん大丈夫?」


「大丈夫だよアオ、それにしても暗視ポーションは凄いね! 昼間より森が明るく見えるよ」



 草や葉の緑はより鮮やかな緑に、木に実る果物もハッキリと見える。これだけ明るく見えると、元々明るいなっている松明は眩しく見えるのかと思いきや、暗視ポーションを飲む前より明るく見えるだけで、眩しいとは感じなかった。



「……どうだ? ウルフはいそうか?」


「うーん、見渡しているけど何にもいないみたいだ」



 辺りを見渡しても、木と草があるだけで魔物は見当たらない。



「これだけ凄く見えるなら、俺が先に森の中に入ってウルフを探すのが良さそうだ」


「シンくん1人だと危ないですわ!」


「ちゃんとみんなの見える範囲内にいるから安心して。さあみんな森に入ろう!」



 俺たちは森の中に入って行くのであった。






 ■






 森の中を進んでいくと、虫の多さに俺は内心驚いていた。実は見えていないだけで、明かりに向かって飛んでこない虫もかなり多いみたいだ。



「きゃっ!」


「うぅ……また虫が飛んでくる……」


「本当に今日は虫が多く飛んできますね」



 みんなが虫に気を取られているときに、ハクが俺の横まで近づいてきて、話しかけてくる。



「……シン、さっきから変な臭いがしないか?」


「ああ、確かに少しだけ嫌な臭いがするね」



 臭いを嗅ぐと、血のような臭いが少しずつ強くなっていくのを感じる。そして臭いが強くなるほど虫の数も増えていく。



「……俺たちじゃ何が起きているか分からない、シンが様子を見に行ってくれないか、シンなら俺らと離れても見つけられるだろう?」


「分かった、俺だけ先に進んで様子を見てくる」


「……頼んだぞ」



 俺はハクに頼まれて、森の奥に1人で進んでいく。


 しばらく走っていると、2体のウルフを見つけて足を止めた。暗視ポーションのおかげか、先にウルフを見つけることができ、ウルフはこちらに気が付いていないようだ。


 俺は音を立てないように慎重にウルフに近づいて様子を覗き見る。


 木の幹に隠れながらウルフを見ていると、何かを食べているようで、モグモグと口を動かし、飲み込むと、地面にある何かに噛みついている。


 俺は何を食べているのか見るためにもう少し近づいてみると、ウルフが噛みついているものに手のようなものが見えた。



(手! だよなあれって……)



 何度見ても手である、だが、人間の手ではないということも分かって来た。


 俺は場所を変えて、食べられている対象の顔が見える位置まで回り込む、そうしてウルフが食べていたものの正体が分かった。



(ゴブリン……)



 そう、2体のウルフに食べられていたのはすでに事切れたゴブリンである。そしてこの位置まで回り込んで気が付いた、俺のいる位置のさらに奥に、食われたゴブリンたちの亡骸があり、その周りに虫が集まって来ていることを、


 この血の臭いの発生源を理解した。


 口の周りをゴブリンの血で染めたウルフたちは、ゴブリンゴブリンを食べ終わると、身体が少しだけ大きくなっていく。


 俺はその様子を、息を殺して見ていた。


 そしてウルフたちは鼻をスンスンと動かすと、俺が隠れている方向を急に向き、俺と目が合った。



「ガウッ!」「ガウッ!」



 ウルフたちは吠えると俺のいる方に向かって走って来る。



(ヤバイ! ここにいることがバレた!)



 まだまだウルフとの距離があるが、逃げてもハクたちと合流する前に追いつかれることは分かる。そこで俺は武器を装備して姿を出し戦闘態勢に入る。



「『パンプア』!」



 自分に力のバフをかけて少しでも攻撃力を上げる。そしてその後、ウルフに向かって『スマッシュ』を放った。ウルフは飛んでくる魔力の球を簡単に避けて進んでくる。



「やはりこれだけ距離が離れていると当たってくれないか!」



 俺は剣を構えてウルフに向かって走る。


 ウルフは噛みついてくるが、それに合わせて剣を横に薙ぎ払い、ウルフの横腹に傷を付ける。



「ガウッ!」



 もう1体いるウルフが俺の腕に噛みついて来ようとするが、俺はしゃがんで噛みつきを避け、下から振り上げるように剣で切り付ける。


 ウルフは後ろ足の付け根辺りに軽い傷を負うが機動力に問題はなさそうだ。



「大きくなっているからか、攻撃力を上げても瀕死にできないのか!」


「グルゥ……」「ガウッ!」



 横腹に傷を付けられたウルフが攻めてくる、足の付け根に傷を負ったウルフは、別方向に向かい、大回りしながらこちらに向かってくるのが見える。


 目の前のウルフは草当たり、音を立てて徐々に近づいてくるが、俺が剣を構えて走ろうとすると距離を取り、間合いに入ってこないようにしている。



(ウルフの狙いは分かっている、この目の前にいるウルフは囮だ。俺がこのウルフに注意を向けている間に、別方向に向かったウルフが俺の後ろから攻めるという作戦なのだろう)



 もし普通の状態だったら、ウルフのこの戦い方で俺はやられていただろう。だが、ウルフは俺が暗視ポーションを使って明るく見えていることを知らない、大回りしているウルフの動きは俺の目にハッキリ見えていた。


 音を極力なくしながら、噛みつこうとする瞬間まで声も出さずに後ろからウルフが攻撃をしてきた。



「そこだ!」


「ガァ……」



 ウルフに俺の剣が見事に当たり、頭から一刀両断することが出来た。そして1体倒して終わりではない、まだもう1体ウルフが残っているので、俺は走って攻撃しに向かう。


 作戦が上手くいって俺がやられると思って油断していたウルフは、仲間がやられたことで放心状態になっていた。そんな隙だらけのウルフは俺が目の前に来て剣を振り上げることにやっと意識を取り戻して、振り下ろされる剣の攻撃を避けようとする。


 しかしウルフの後ろ足に剣が当たり、血が溢れてくる。



「グルゥ……」


「もうその足じゃ走り回ることはできない!」



 ウルフはダメージを受けていない前足2本と後ろ足1本を使い走るが、さっきまでとは比べ物にならないほど遅い。



「ガウッ!」


「ふん!」



 俺は警戒しながら最後の一撃を決めようとしたウルフを切りつける。



「ガァ……ァ……」



 ウルフは倒れると、2体とも経験値を吐き出して戦いは終わった。






「はぁ……暗視ポーションを飲んでいなかったらヤバかった……そうだ! 食べられていたゴブリンがたくさんいるんだった、どうなっているのか見に行かなくちゃ」



 剣をしまい、虫の集るたくさんのゴブリンの亡骸の所まで向かった。


 そこには、あちこち食いつくされて骨ばかりになったゴブリンたちがいた。残った肉片に虫が集まっている。



「なんでこんなことになっているんだ、さっき倒したウルフたちが食べていたのか?」



 2体だけでこれだけ食べられるのだろうか? そのような疑問が浮かんだ時に、骨となったゴブリンのすぐ近くの地面に、大きい獣の足跡が残っていた。


 俺はその足跡を見ると、倒したウルフの方に戻り、ウルフの足を見る。



「同じだ、大きさが違うだけで、同じ形だ……」



 俺は、ウルフがゴブリンを食べて強くなっている個体がいることを知った。

虫が多くなってきたので、ランタンから松明に変えて、明かりに寄って来る虫を倒していた。


俺は暗視ポーションが2つあるので1つ使ってみると、昼間よりも明るく森が見えるようになった。


変な臭いがするのでハクから様子を見てきてほしいと頼まれ、俺1人で先に進むと、何かを食べるウルフ2体を見つけた。その何かを食べることでウルフは身体が少し大きくなっている。


何を食べているか知るため回り込むと、ゴブリンを食べていることを知る。そして、今いる位置より奥の方には、食べられたゴブリンたちの亡骸もあった。


2体のウルフを倒すと、ゴブリンたちの亡骸の近くに大きい獣の足跡を見つけ、ウルフと比べると、ウルフの足と同じ形をしていて、ゴブリンを食べて強くなっている個体がいると知った。


今回の戦闘で倒したウルフは2体なので、

ウルフ討伐数6体、残り討伐数14体以上。

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