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145話 ☆3『ウルフ討伐』②(赤目)

 街の出入り口に着くと、夕方だった空は星が見えるほど暗くなっていた。



「待ってください、今明かりをつけます」



 キャリーはカバンからランタンを取り出して明かりをつけた。おかげで暗くて数歩先までしか見えなかった道が、数十歩先まで見えるようになった。



「これで先が見えるようになりました、行きましょう!」



 キャリーはスタスタと夜道を歩いていく、俺たちもその後ろを走って追いかける。



「キャリー、先頭だと魔物に1番襲われやすいから俺たちが先頭になるよ」


「そうですわ、シンくんとハクくんが前を守って、アオくんと私が後ろを守りますので、キャリーちゃんは私たちの間にいて良いですわよ」


「そうですか! ではお言葉に甘えさせていただきます」



 キャリーは笑顔で数歩下がって、俺たちの準備が終わるのを待っている。



「……やれやれ、勝手に陣形を決められたな。いつもはユカリが前で、俺が後ろなはずだが、どうして今回は俺が前なんだ?」


「そ……それは、私が怖いとかじゃありませんわ。ハクくんは弓を使うから、私たちよりも近づく魔物の気配に敏感だと思って前にしただけですわ!」



 ユカリは目を泳がせながら答える。



「……なるほどな、もっともらしいことを言っているが、怖いからというのは分かった」


「どうしてそれを!」



 ユカリはなぜ怖がっていたことがバレてしまったのか驚いているが、ハクだけじゃなく、俺もアオも、そしてキャリーもユカリが怖がっていることには気が付いていた。



「……そんなに態度に出ていれば誰だって気が付く。だが、これだけ暗いんじゃ、俺が前に行ったところで、シンたちと魔物の気配の感じ方に差は出ないことだけは言っておくぞ」



 ハクはそうみんなに伝えて、俺と一緒に先頭に立ってくれる。アオもユカリも、キャリーの後ろにつき、前後左右どこから魔物が来ても、誰かしらキャリーを守ることのできる陣形になる。



「準備もできたし、いよいよウルフ討伐に出発だ!」


「「「「おー!」」」」



 俺たちは、森を目指しながら、草原を歩いて行った。






 草原を歩いていると、虫の「リリリリッ」と鳴く声が聞こえてくる。俺たちが草をかき分けて進むと、鳴き声は止まり、飛んで逃げてしまう。



「きゃあっ!」


「どうした、ユカリ!?」



 ユカリが叫び出して何事かと思って振り返ると、ユカリの肩に虫が止まっていた。



「虫ムシむしぃ! 誰でもいいから取ってほしいですわぁ!」



 ユカリの肩に止まっている虫は、親指くらいの大きさをしていた。こんなのが肩にいたら怖いと思うのも仕方がない。


 ユカリは自分の服を強く握りしめ、虫から少しでも距離を取ろうと、虫が止まっている肩とは反対の方向に顔を向けている。


 涙目になりながら震えているユカリに俺は近づき、肩に止まっている虫を払う。



「虫はもう肩にいないよ」



 ユカリはゆっくり顔を向けて、目を細めながら自分の肩を見ると、虫がいなくなっていることを確認して安堵する。



「良かったですわ……」


「うわぁぁぁ! 助けてぇ!」


「今度はアオか!」



 アオの方を向くと、アオのお腹には足がたくさん生えている虫が張り付いていた。そしてその虫は、少しずつアオの顔の方に進んでいるようだ。



「こっちに近づいてきているよぉ!」



 アオは叫びながらパニックを起こしていた。俺は『ファイア』を唱えて、手に火を出してアオのお腹に付いた虫に火を近づける。すると、火を嫌った虫がアオの服から離れて逃げていった。


 虫がいなくなったことを確認して、俺は出した『ファイア』を消した。



「うぅ……」


「……虫くらいで騒ぎすぎだ」


「あんなのが身体に付いていたら騒ぐよ!」


「アオくんの言う通りですわ!」



 ハクの冷めた態度にアオとユカリが熱く自分の思いを語っていた。



「……はぁ、どうでもいいが、あれはどうするつもりだ?」


「「あれって?」」



 アオとユカリは、ハクが指差す方に顔を向けると、暗い中に赤い2つの点が少し揺れながらそこにいた。



「っ! あれはウルフか!?」



 赤い2つの点はウルフの目のようで、アオとユカリの叫び声に釣られて来たのか、まだまだ森は遠いのに、1体のウルフがこちらを睨んでいる。



「グルゥ……」



 唸るような声でこちらの行動を観察しているようだ。俺は剣を抜き、ハクは弓ではなくナイフを構えて、いつ襲われても反撃できるように準備する。



「周りに他の魔物はいる?」


「……見たところあのウルフ1体だけのようだ」


「ごめんなさい、私が虫に大きな声を出してしまったのがいけないんですわ……」


「僕も大きな声で叫んじゃったよ……ごめんね」



 ユカリもアオも申し訳なさそうにしている。



「……今更謝っても仕方がない。それに、ウルフは1体だけのようだ。暗闇での練習相手に良い条件だ」


「そうだね、ここは草原で星明りが照らしてくれているから、見えにくいとはいえ完全に見えないわけじゃない。ウルフの戦い方をこいつから学ぼう!」


「分かったわ!」


「うん!」



 ユカリとアオも武器を構える。



「キャリーは俺たちの後ろに隠れていて」


「分かりました!」



 キャリーが俺とハクから少し離れて、ウルフから遠ざかる。



「……シン、暗視ポーションはまだ使わないんだろ、どうやって戦う気だ?」


「ウルフの攻撃方法を見たことあるから、それを試してみようと思う」


「……そうか……っ! ウルフが動き出したぞ!」



 ウルフは俺たちが待ち構えているのを見て、ジグザグに進みながら、狙いを定められないように動いてきている。


 ウルフの赤い目が目印になっているが、暗いせいでいまいち距離感が掴みづらい。だが、いくら揺さぶりをかけても、ある瞬間だけは決まった行動をする。


 俺はそこに狙いを定めて剣を引き、振りぬく構えをとる。



「ガウッ!」



 ウルフは吠えると一直線に俺に飛び掛かって来る、俺はこのタイミングを待っていた。



「えい!」


「ガァ……」



 ウルフは俺の横を通過すると、地面に身体を擦らせながら倒れ、血を流す。俺の振った剣は、一直線に迫るウルフを捉えて、一太刀を入れることに成功していた。



「まだウルフは生きている! トドメを刺して!」



 俺の言葉に反応して、立ち上がれていないウルフにトドメを刺しに動いたのはハクだった。



「……ふん!」


「ガァ……ァ……」



 ナイフでお腹を刺したことで、ウルフは力尽き、経験値を吐きだした。



「ふぅ……意外と上手くいった」


「あんなに速いウルフに攻撃を合わせるなんて、シンくん凄いですわ!」


「うんうん」



 俺は武器をしまうと、ユカリとハクが寄ってきて、褒めてくれる。



「……よく合わせられたな、どうやったんだ?」


「それは、俺を攻撃してくる瞬間を狙ったんだよ。他の冒険者がウルフと戦ったところを見せてもらった時に、攻撃する時は動きが単調になることを言っていたから、俺は、ウルフが一直線に俺の所に向かってくるタイミングを狙ったんだ。おかげで簡単にカウンターを決められた」


「……なるほどな、やるじゃないか」



 ハクは片手を肩より上に上げて、俺に微笑みかける。俺はハクのその行動を理解して、片手を肩より上に上げ、ハイタッチをした。



「ではシンさん、私はこのウルフを回収しますね」


「ああ、頼むよキャリー」



 キャリーはランタンとカバンを地面に置き、カバンから袋を取り出すと、その袋に倒したウルフを詰める。そしてそれをカバンの中にしまい、カバンと背負い、地面に置いたランタンを拾った。



「これで倒したウルフが荒らされなくなりました」


「キャリーありがとう、じゃあみんな、先に進もうか」



 みんなは頷くと、森に向かって俺たちは進んで行った。

街の外に出ると夜になっていたので、キャリーがランタンをつけて、数十歩先まで見えるようになった。


キャリーを守るため、俺とハクが前に、アオとユカリが後ろにつく。


ユカリとアオは、服に虫がついていてそれに怖がり騒ぎ出す、その声に釣られたのかウルフが1体俺たちの所に来ていた。


暗くて赤い目が見えるウルフは、ジグザグに動き狙いを定められないようにしていたが、攻撃する瞬間は動きが単純になるので、そこを狙って一太刀を入れ、ダメージを受けて立ち上がれないウルフをハクがトドメを刺した。


キャリーが倒したウルフを回収して、俺たちは森に向かって進んでいく。


ウルフ討伐数1体、残り討伐数19体以上。

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