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144話 ☆3『ウルフ討伐』①(夜)

 食事も食べ終え、空になった食器をテーブルの端にまとめて、ミルクをちびちびと飲みながら時間が流れる。



「……ずいぶん長い間話していたみたいだな。そろそろギルドへ向かうとしよう」


「そうだねハクくん、もう外は夕方になってきちゃったよ。まだクエストあると良いなぁ」



 アオは窓から入るオレンジ色の光を見ると、深いため息を吐く。今からギルドでクエストを受けるとしたら、夜のクエストとなる。



「大丈夫だよアオ、みんな討伐クエストはやらなくなってきているし、たくさんあるはずだよ。ただ、暗くなってきているから、お化けとか出るかも?」


「ひぃぃ! シンくん怖いこと言わないでよ!」


「お……お化けなんて、で……出るわけありませんわ!」



 アオは頭を抱えてテーブルの下に潜り込んで、ユカリは自分の身体を抱きしめるように震えていた。



「……この辺りではアンデッド系の魔物のことは聞かない、アオやユカリが心配することはないはずだ」


「俺はアンデッド系の魔物を見たことないんだけど、強かったりするの?」


「シンくんその話はやめようよ! 出ないんだから聞いてもしょうがないよ」


「そうですわ! するなら私がいないときにしてほしいですわ!」


「ユカリちゃんだけじゃなくて、僕がいないときにしてね!」



 俺がハクに聞こうとすると、テーブルの下からアオが涙目になりながら顔を出して俺の方を見て、ユカリも怒ったような顔で俺を見てくる。



「……アオもユカリもこう言っていることだ、また今度話すとしよう」


「その方が良さそうだねハク」



 俺とハクは、残ったミルクを飲み干すと、店員を呼んでお会計をする。店員のキャリーが伝票を持って俺たちの所にやって来た。



「お会計ですね、GP(ギルドポイント)でのお支払いでよろしいですか?」


「それでよろしくお願いします」


「かしこまりました。ギルドカードをお預かりします」



 キャリーは俺たちからギルドカードを受け取ると、それぞれが注文した分のGP(ギルドポイント)を抜いていくと、ギルドカードを俺たちに返した。



「またのご利用お待ちしております!」



 キャリーは食堂を出る俺らに頭を下げる、俺は「ごちそうさまでした!」とキャリーに伝えて、アオたちと一緒に、夕焼けの中、ギルドへ向かった。






 ■






 ギルドに着くとお酒の臭いがしてくる。ギルドではもうお酒を提供しているようで、冒険者たちはお酒を飲みながら騒いでいた。


 俺たちは掲示板に真っ直ぐ向かって行き、報酬が良さそうなクエストを探していく。



「朝には見かけないクエストが多いなぁ、でも報酬は高い。アオは何か良いクエスト見つかった?」


「うーん、どれにしようか悩んでいるところだよ、寝るまでに帰って来られるか分からないし……」


「そうよね、夜は魔物も強くなりますわ、そんな時間帯にクエストを終えて疲弊した状態で、街までの長い距離を移動するのは危険ですわ」


「……だったらこれで良いんじゃないか?」



 ハクが掲示板に貼ってあるクエストを剥ぎ取る。



「これなら夜に、長い距離を移動しなくていいね」


「確かにシンくんの言うように長い距離を移動しなくてもいいけど、これって街に帰るのは明日になるってことだよね?」


「そうですわ、街から出て野宿ってことですわよ!」


「だがその分報酬は高い、それにギルドが食事に寝袋まで用意してくれるようだぞ。少しでも出費を減らしたいアオには良いんじゃないか?」


「うぅ……」



 アオはこのクエストを受けるか悩んでいるようだ。



「……アオ、俺たちも一緒にいるんだ、安心しろ。そうだろユカリ」


「えっ、ハクくんはそれを私に聞きますの!? 私もどちらか言えば怖いですわ……野宿ですわよ」



 ユカリが怖がっているようなので、俺が勇気づける。



「ハクだけじゃなくて俺もいるんだ、それにこれだけ人数がいれば大丈夫だよ」


「……そうですわね、私頑張りますわ!」


「……ユカリは決めたみたいだな、あとはアオだけだぞ」


「うぅ……うん……頑張るよ……」



 アオは小さい声で言った。


 アオが覚悟を決めたので、俺たちは受付に向かう。すると、いつも受付にいるハンナさんがいなくなっていて、黒髪ポニーテールの女性ギルド職員が受付にいた。俺たちはそのギルド職員にクエストを渡す。



「ハンナさんどこに行ったんだろうね?」



 アオが俺にそう聞いてくる。俺は知らないので答えようがなかったが、受付をやっているギルド職員が答えてくれた。



「あなたたちは昼間に活動している冒険者ね。ハンナは朝と昼に受付をやるギルド職員よ。夜は私が担当しているわ。ちなみに私の名前もヨルっていうのよ、夜に働くのにピッタリの名前だと思わない? シンくんに、アオくんに、ハクくんに、ユカリちゃん」


「僕たちの名前! 教えていないですよね?」


「私だってギルド職員よ、あなたたちのことは聞いているわ」



 俺が見たことないギルド職員でも、俺たちのことは知られているようだ。



「俺たちってそんなに知られているんですね。ハンナさんのこと教えていただきありがとうございますヨルさん!」


「どういたしまして、それじゃあクエストの紙を渡してちょうだい」



 ハクはギルド職員にクエストの紙を渡した。



「このクエストね、分かりました。クエスト内容を確認します」


 ――


 (ほし)3『ウルフ討伐』


 クリア条件:ウルフを20体以上討伐


 報酬金:3000(ゴールド) 6000GP(ギルドポイント)


 参加条件:(ほし)1から(ほし)3冒険者1人以上


 ~依頼内容~


 草原や森に潜むウルフを討伐せよ。


 食料と寝袋とサポーターをギルドが支給します。


 ――


「このような内容ですが、クエストを受けますか?」


「はい、お願いします」


「それではクエストを受注します、では食料と寝袋とサポーターを手配しますので、ちょっと待っててね」



 ギルド職員は受付から離れ、奥の方に消えていった。






 俺たちは食堂の空いたテーブルに座り『ウルフ討伐』の作戦会議をする。



「……さて、クエストが始まる前にウルフについて作戦会議だ。シンもアオもユカリも、ウルフの見た目と攻撃手段は分かっているな?」


「「「うん」」」



 俺たち3人とも、灰色の体毛で赤い目の狼みたいな魔物を想像して、首を縦に振った。



「……よし、じゃあ俺が知っている限りの他の情報を話す。ウルフは夜に出現することが多い魔物で、複数体で行動する。ウルフは暗闇でも俺たちを見つけることが出来る、よって暗い森の中で戦うのは危険だ」


「森の中が危険なのは分かるけど、草原まで誘導するの?」


「……いや、それは無理だろう。ウルフは速い、ゴブリンのような速度なら今日のシンのように追いつかれることなく草原まで逃げられるだろうが、暗い森の中を俺たちよりも速いウルフからは逃げられないだろう」


「でもユカリなら逃げ切れそうだよね」


「明るい時間なら私が囮をやっても良いですわ、でも今回は暗い森の中で1人……考えただけで怖いですわ」



 ユカリは眉を下げて困ったような表情をする。



「でも困ったな、ユカリが無理なら複数体で行動するウルフを誘き寄せて、森の中より明るい草原で倒すなんてことはできないよ」


「「「…………」」」



 みんな良い案が思いつかないのか、俯いて黙っている。俺もどうやって暗い所から明るい所まで誘き寄せるか考えているが、良い案は思いつかない。



「夜でも森が明るければなぁ……あっ! そうだ、そうだよ!」



 俺はあることを思いつき立ち上がる。



「何か閃いたんだねシンくん!」


「ああ、でもそれができるかどうかは調べてみないと分からない。ちょっと道具屋にまで行って調べてくるよ」


「待って、私も行きますわ」


「僕も!」


「……俺も行こう」



 みんな立ち上がって俺の後に続き、道具屋まで付いてくる。そして俺は店員の所まで行き、お目当ての効果がある道具はあるか聞いてみた。



「店員さん、ここには暗闇でも明るく見えるポーションみたいなものってありますか?」



「ああ、あるよ。暗視ポーションのことかな?」



 店員の言葉を聞いて俺たちはみんなの方を向き、親指を立てた。



「あんたら『ウルフ討伐』するんだったな、さっきクエストを受ける声が聞こえていた。暗視ポーションは1本300GP(ギルドポイント)だが、どうする?」



 店員が棚から青紫色の液体が入った暗視ポーションを取り出し値段を教えてくれる、300GP(ギルドポイント)と今の俺たちじゃ高い値段だ。だが、これがなければウルフとは森の中で戦えない。



「……これって暗視ポーションじゃなきゃダメなのか? 今思いついたんだが、ランタンを使ってウルフと戦うっていうのは……」


「そいつは辞めといた方が良いぜ、ランタンが照らせる範囲はそこまで広くない。ウルフみたいに速い魔物だと、見えたころには反撃が間に合わない位置まで近づかれているってことになる」


「……そうか」



 ハクは良い案を思いついたと思ったが、店員に効果があまりないことを教えられていた。



「それでどうする? 暗視ポーションを買うのかい?」



 俺は悩んだ結果、2本購入。アオ、ハク、ユカリは1本購入した。



「毎度あり~」



 俺たちが道具屋から買い物を済ませると、受付の前にはヨルさんと大きなカバンが置かれていた。



「大きいカバンですね」


「この中にはあなたたちの食料や寝袋が入っているわ。あとはサポーターが到着するのを待つだけね」



 ヨルさんがそういうと、外から走ってくるような音が聞こえて、ギルドの扉が開いた。



「遅れてすみません! サポーターのキャリーですっ……あっ、シンさんアオさんハクさんユカリさん!」


「今回もサポーターをやってくれるのはキャリーなのか!」


「そうみたいですね! よいしょっと」



 キャリーはヨルさんの隣にあるカバンを楽々背負うと俺たちの方を見る。



「クエスト頑張ってね」



 ヨルさんは手を振って俺たちを見送ってくれるようだ。



「ではシンさんたち、クエストに行きましょう!」



 こうして俺たちはキャリーに連れられてクエストに出発した。

夕方になるまでみんなとの食事を楽しんだり、アンデッド系の話をしていると、アオやユカリが怖がっていた。


ギルドの受付にはハンナさんがいなくなっていて、代わりにヨルさんというギルド職員が受付を担当していた。朝と昼はハンナさんが、夜はヨルさんが受付をやるみたいだ。


『ウルフ討伐』のクエストを受けて作戦会議をした結果、暗視ポーションを道具屋で購入して、暗い森の中でも戦えるようにした。暗視ポーションの数は、俺が2本、アオ、ハク、ユカリが1本。


サポーターとしてやって来たのは、またもやキャリーだった。キャリーは俺たちの食料や寝袋の入ったカバンを背負うと、クエストに出発するのであった。



新キャラ紹介


・ヨル


ギルドの夜の受付をしている黒髪ポニーテールの女性ギルド職員。



アイテムの紹介


・『暗視ポーション』


青紫色の液体のポーション。飲むと暗い所が明るく見えるようになる。


材料には『めぐすり草』が使われている。



魔物紹介


・ウルフ


灰色の体毛で赤い目の狼みたいな魔物。牙や爪などが鋭く、攻撃されたらダメージは大きいと思われる。動きは速い。暗い所でも目が良いので見えている。


夜行性なのか、夜の森や草原に出現する。群れで行動していることが多く、1体見たら他にもいると思った方がいい。

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