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141話 2回目の☆2『ゴブリン討伐』②(飛翔)

「私とシンくんが2人きりになるなんて珍しいですわね」


「そうだね、いつもアオとかハクとかと一緒にいるもんね」


「そう言えばシンくんは新しい剣にしたのですわよね、使い心地は良いのかしら?」


「ああこの剣ね、実は試し切りを1回しただけで、実戦じゃまだ使っていないんだ……っ! ユカリ、目の前に魔物がいるよ!」



 話している最中でも周りを警戒しながら、森に向かっていると、森の入口に2体のゴブリンがいた。俺たちは身を屈めて草むらに隠れ、様子を見る。


 2体のゴブリンのうち1体のゴブリンは木の実を取ろうと木に登ろうとしていた。



「どうするユカリ、今なら木に登っているゴブリンはすぐには戦闘に参加してこないよ?」


「そうですわね、私は木に登るゴブリンの相手をしますわ。シンくんは……」


「俺は下にいるゴブリンと戦えばいいんだね」



 俺とユカリは武器を抜く、そして俺は一気に飛び出して行った。



「はぁぁぁ!」


「ゴブッ!」



 剣を振ると、スーッと刃がゴブリンの肉を切り裂き、肩からたくさんの血を流す。



「ゴッ……ゴブッッッ!」



 切られたゴブリンは傷口を手で押さえて痛みに悶えていた。押さえていてもポタポタと肩からは血が流れていく、切られた側の肩は、腕がだらんとしていて動かなくなっていた。



「抵抗をほとんど感じず滑らかに切った、ファングソードはこんなに攻撃力が高いのか!」



 剣を構えなおしてゴブリンに向ける。そして木に登ろうとしていたゴブリンは、いつの間にか枝の上にいて、こちらに対して威嚇をしてきている。



「ゴブッ! ゴブッ! ゴブッ!?」



 枝の上にいたゴブリンは、衝撃波を受けて空中に飛ばされた。そこにユカリが飛んで来て、空中で身動きの取れないゴブリンに攻撃をしていく。



「えい!」


「ゴッ……ゴブッ……」



 何度も細身の剣でゴブリンに突いて攻撃をする。そしてユカリは木を蹴って、隣にある木の枝に飛び乗った。



「シンくん、今のうちに!」


「ああ! えい!」


「ゴッ…………」



 俺はさっき肩を切ったゴブリンが逃げようとしていたので、後ろから近づいて背中を切りつける。ゴブリンは叫ぶことすらなく倒れこみ、経験値を吐き出す。俺はゴブリンを倒したことを確認すると、ユカリと戦っていたゴブリンの方を向く。



「『ウィンドショック』!」


「ゴッ…………」



 枝の上に乗りながら、ユカリは『ウィンドショック』を使って、地上にいるゴブリンを離れた位置から攻撃していく。ゴブリンは高い位置にいるユカリに攻撃する手段がなく、一方的に倒されて経験値を吐き出した。



「ふぅ……無事に倒せましたわ。シンくんの方は……」


「俺も倒せたよ」



 ユカリは俺が倒したゴブリンを見ると、枝から飛んで地面に着地する。



「シンくんの武器はかなり強いみたいですわね、ゴブリンを簡単に倒してしまうなんで驚きですわ」


「まさか俺もここまで強いなんて思っていなかった」


「これならシンくん1人でもゴブリン討伐は大丈夫ですわ」


「そうだね」


「ゴブッ!」



 俺たちが話をしていると、さっきの戦闘によって、他のゴブリンも近づいて来たようだ。数は1体、すぐに倒して場所を移動しないと、次から次にゴブリンが現れるかもしれない。



「すぐにゴブリンか!」



 俺は武器を構えて戦闘態勢に入る。



「さっきはシンくんが先に攻撃を仕掛けましたので、今度は私にやらせて欲しいですわ」


「ユカリ……良いよ、やってきな!」



 俺がそう言うと、ユカリは一直線に進み、ゴブリンの横を通りすぎる。ゴブリンがユカリの方に振り向くと、ゴブリンの胸からプシャっと血飛沫が舞う。



「ゴブッ!?」



 ユカリは何度もゴブリンの横を通り過ぎては攻撃をして、少しずつダメージを与えていく。しかしゴブリンは、ガードを固めながら木の幹にまで走ると、木に登ってどんどん上の方に移動していく。


 ユカリは地上からゴブリンを見上げる。ゴブリンもここまで高く登れば攻撃されないと思っているのか、笑みを浮かべながら近くに実っている木の実をもぎ取り、ユカリに投げつける。



「ゴブッ! ゴブッ!」



 ユカリは投げられた木の実をステップで避ける、そしてゴブリンが近くにあった木の実を全て投げ終え、少し離れた位置にある木の実を取ろうと幹から離れると、ユカリは『ウィンドショック』を使って攻撃をする。


 ゴブリンはとっさに木の幹に隠れてユカリの『ウィンドショック』から身を守った。



「あんな高い所にいられたらこっちの攻撃が全部避けられるね。ユカリ、ここは一旦逃げた方が良いんじゃない?」



 このままだと上から攻撃され続けるし、他のゴブリンもここに来るかもしれないので、逃げの提案をする。しかし、ユカリはこの状況を苦しいとは思っていないようだ。



「シンくん、大丈夫ですわ。あそこにいるゴブリンは私の新しく覚えた魔法を使えば倒せますわ」


「新しい魔法!?」


「そうですわ、この前シンくんとハクくんと一緒に馬車の護衛をやりました時に、ファイアーバードとの戦闘がありましたわよね?」


「うん、空を飛んでいたからなかなか思うように戦えなくて、ハクの『ボイズスモーク』で地上に落として戦っていたね」


「そうですわ、あの時は『ウィンドショック』しかなくて、空にいる魔物に無力でしたわ。でも、私が覚えた魔法は空にいる魔物と戦うための魔法! だからあのくらいの高さにいるゴブリンにも使えるわ」



 ユカリはゴブリンから目を離さないように後ろに下がる、そして十分距離を取ると、走り出して地面を思いっきり蹴る。ゴブリンがいる高さまで半分も届いていなかったが、ここでユカリは魔法を唱えた。



「『フライ』!」



 ユカリが魔法を唱えると、足に羽のようなものが生えて、何もない空中を蹴ると、ゴブリンが隠れている高さと同じ場所の枝まで辿り着いた。



「ゴブッ!?」



 まさかここまでいきなり来るとは思っていなかったゴブリンは慌てて逃げるが、うっかり手を滑らせて、枝を掴み損ねて空中に放りだされる。



「えい!」



 ユカリはそんなゴブリンのお腹を剣で突き、地面に叩き落とす。ドンッという低い音が辺りに響いた。



「ゴ……ゴブッ…………」



 地面に落ちた衝撃で口から血を吐き出し身体を痙攣させていたゴブリンは動かなくなり、経験値を吐きだした。


 ユカリは高い所から躊躇なく飛び降りると、途中で『フライ』と唱えて空中を蹴り、落下速度を落として、スタっと軽い音を立てて地面に降りてきた。



「ね、大丈夫でしたわ」


「これがユカリの新しい魔法か……凄いね!」


「ありがとうシンくん、この魔法が役に立って良かったわ」


「それじゃあそろそろこの辺りから離れようか、結構な音を出しちゃったし」


「そうですわね、遠くの方からゴブリンの声と複数の足音が聞こえてきますわ」



 森の色んな方向から、こちらに近づいてくる音が大きくなっていく。



「見つかる前に行こう!」


「きゃっ」



 俺はユカリの手を握ると、草原の方へ走り始めた。その直後にたくさんのゴブリンたちが現れたが、俺たちを追いかけることなく、逃げ切ることができた。






「ふぅ……危なかったね、まさかあんなにゴブリンが集まってくるなんて思わなかったよ」


「そうですわね、何体いたのかわかりませんが、10体以上集まって来ていましたわ。シンくんが手を引いてくれなかったら危なかったですわ」



 ユカリは頬を赤くして上目遣いをして俺を見るので、俺は慌てて手を離した。



「ああごめん! 手を握ったままだったね!」



 俺は空気を変えるためにゴブリンの話題へと話を戻した。



「冒険者のほとんどが討伐クエストをやらないから、戦闘をしていた俺たちの所に集まって来ていたのかもね。さすがにあの数の多さだと、何かの拍子で一気に負けそうだよ」


「そうね、みんなで固まって行動した方が良いのかしら?」


「いや、むしろバラバラに行動した方がゴブリンを分散できて良いんじゃないかな? 何かあってもユカリは『フライ』を使って飛んで逃げればいいし、俺はゴブリンの襲ってくる数が少なかったら、この剣で1体ずつ相手にして倒していくよ」


「シンくん……そうですわね、もう私たちは1人で戦えますわ」


「うん! それじゃあここからは俺たちも別行動だ。まだ近くにゴブリンがいるかもしれないから、別の所から森に入ろう。クエストが終わったら俺を待たないで街に向かうんだよ」


「分かったわ、シンくんも自分のクエストが終わったら私を置いて街に向かってね」



 俺とユカリはお互いに笑うと、ユカリは走って他の所に向かい始めた。それを見送った俺は、ユカリとは違う方向から森に入って行った。

俺とユカリが話しながら森を目指していると、森の入口に2体のゴブリンがいたので戦闘を始めた。その2体を倒すと、新たにゴブリンが1体現れる。


木の上に逃げたゴブリンが、上から木の実を投げて攻撃してきたが、ユカリが『フライ』を使って一気に高所まで移動してゴブリンを叩き落した。


冒険者が討伐クエストをやらないからか、ゴブリンが多く集まってくるので、ゴブリンが分散するように、ユカリとも別行動をする。



魔法の紹介


・『フライ』


空を飛ぶ風属性魔法。足に魔法の羽が生えて空中を蹴ることができ、空を飛ぶことができる。蹴る方向によって、空中で方向転換できたり、落下中に蹴ることで地面に向かう速度を上げたり下げたりできる

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