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135話 鍛冶屋で新装備!②(鰐牙)

「ところでスミスさん、俺の装備って何が素材なんですか?」


「おや、シンが持ってきた素材じゃろ?」


「俺が持ってきた? ハンナさん何か知っていますか?」



 俺が聞くと、ハンナさんは軽く笑い、素材が何か教えてくれた。



「シンさんが昨日倒したワニゲーターの素材を使うんですよ」


「…………えぇぇ! あの素材を俺に使うんですか! 俺に使うなんてもったいないですよ」


「下位冒険者のシンの強さじゃもったいないかもしれん、じゃが、君がワニゲーターを倒したんじゃろ? だったら素材くらい使う権利があるとワシは思うがのぉ」


「そうですよシンさん、それに今から鉄の素材を集めていたら、(ゴールド)が足りなくなります。ですよねスミスさん」


「そうじゃ、装備を作るのは素材と(ゴールド)が必要じゃ。鉄などの素材ならここの鍛冶屋にもあるが、魔物の素材となると冒険者に用意してもらわんといけない」


「なるほど……ちなみに素材も合わせたらいくらになるんですか?」



 俺は恐る恐る値段を聞いてみる。



「素材の値段も含めるなら鉄の剣で1000(ゴールド)、鋼の剣なら3000(ゴールド)ってところかのぉ」


「高い!?」


「ワシらが冒険者に合わせて魂を込めて作るんじゃ、武器屋で売られている剣とは切れ味も耐久力も扱いやすさも段違いじゃよ。むしろワシたちに装備の依頼をする方が安くなるはずじゃ」



 自信満々にスミスは答える。



「武器は消耗品、何度も使っているといずれは壊れる。このようにな」


「あ、それは俺の……」



 スミスが出してきたのは俺の壊れた剣だった。ワニゲーターの血で一色に染められた折れた剣が台の上に置かれる。



「これは量産品の武器じゃが、持ち主のことが良く分かる。鍛錬や魔物との戦闘が刻まれとる。ワニゲーターとは関係ない刃こぼれもあった。命を預ける道具なのに手入れを怠っている証拠じゃな。冒険者が最初に使う武器によくある状態じゃ」



 怠っていると言われて心臓が跳ね上がる気持ちになった。命を預ける道具を俺は真剣に見ていなかったことを痛感させられる。



「反省すべきじゃがこれから気を付ければ良い。さて、そろそろ素材の準備をしなくてはのぉ。おい、ワニゲーターの牙を持ってきてくれ」


「はいよ!」



 スミスは素材を取りに行こうとした鍛冶職人に声をかけた。しばらくすると、たくさんの素材を背負って帰ってきた鍛冶職人がスミスの所まで来て、ワニゲーターの牙を渡して、自分の作業場に戻った。



「なんとも鋭く硬い牙じゃ、これなら良い武器になるじゃろ。あや、孫が戻ってきたようじゃ」



 振り返るとクリエートは早足で俺たちの所に帰ってくる。



「お待たせ」



 クリエートは身体に大きなハンマーや小さなハンマーに、熱した素材を挟む道具を何種類も持っていた。



「それがクリエートの道具なんだね」


「うん! これでシンの装備をカンカンっと作っちゃうよ!」



 目をキリっとさせたクリエートは、小さいハンマーをぶんぶんと振ってやる気十分のようだ。



「よし、それじゃあやってもらうとするかのぉ。これを使いなさい」


「これは?」


「クリエートさん、これはワニゲーターの牙ですよ。スミスさんからこの素材を使ってシンさんの装備を作るようにとのことです」


「えぇぇ!? 僕がいきなり使っちゃって良いの!?」



 クリエートはキラキラした目でスミスから受け取ったワニゲーターの牙を眺める。



「そうじゃ」


「やったぁ! これで強い武器が作れるよ」


「あっちに余っている炉があるから、そこを使いなさい」


「ありがとうお爺ちゃん! 行こうシン」



 クリエートは俺の手を掴むと、俺をその炉の所まで引っ張っていった。






 俺をイスに座らせると、クリエートは持っていた道具を全て下して、炉に火をつけてワニゲーターの牙を中に入れる。


 そして、俺の正面にイスを置き、クリエートは俺と顔を向き合うように座った。



「シン、手を見せて」


「手? 良いよ」



 俺は右手をクリエートの前に出す。



「右手だけじゃなくて両手を見せて。これからシンの手に合うように作るから」



 そういうことかと納得して、俺は両手を前に出す。


 すると、クリエートは俺の手の平や指の形をじっくり見たり、指の腹で俺の手の感触を確かめていた。



(あれだけ騒がしいクリエートが俺の手を見始めてから一言も話さない、そんなに大事なことなんだろう。それにしても、クリエートの手は柔らかいな。鍛冶職人って言うくらいだから、もっとゴツゴツしているのかと思った)



 クリエートの顔を見ると、息を荒くし顔全体がほんのりと赤くなっている。それに気が付くと、俺の息も荒くなっていることに気が付いた。



(なんだ? 座っているだけなのに……)



 何が理由か探ろうと辺りを見渡すと、炉に視線が向かう。炉の中は赤くなっていて、炉の周りにはもわもわっとした陽炎ができていて、熱い空気が漂っているようだ。どうやらあそこから熱風が来ていて、呼吸しにくいみたいだ。


 俺よりも炉に近い位置にいるクリエートは、バンダナの隙間から汗が垂れているのが見える。俺よりも熱いのは間違いない。


 そして、クリエートの顔をじろじろ見ていると、俺の手を観察するのが終わったらしく、顔を上げたクリエートと目があった。



「ふぅ……ありがとう! シンの手の形は覚えたよ。もうしばらくそこにいてね」



 クリエートは挟む道具を持ち、炉の中にあるワニゲーターの牙を取り出した。牙は赤くなっていて、それを大きめのハンマーを使ってカンカンと叩いて形を変えていく。


 牙の温度が下がると叩いても形が変わりにくくなるので、もう一度炉に入れ温める。こうすることで再び牙は赤く熱せられて形を変えられるようになる。


 厚みのあった牙が細くなると、次は角度を変えて真っ直ぐにしていく。こうしてワニゲーターの牙は、刃となり、剣と似たような形になってきた。


 水の入った容器に刃を入れると、ジューっという音と水蒸気が現れる。


 十分に冷やして熱を取ると、砥石を使ってを研いでいく。研ぎ終わった刃を休ませて、その持ち手となる部分を新しく作る。


 クリエートは俺の手を思い出しながら形を整えていく。整え終わると、休ませていた刃とくっつけて剣が完成した。



「ふぅ……シン、試しにこの木材を切ってみて」


「分かった」



 俺はクリエートから剣を受け取ると立てられた木材の前に立ち構える。


 今まで使っていた剣よりも軽く、手に吸い付くように持ちやすい。俺は斜めから切り下すと、スパッと木材が簡単に切ることができた。



「え? これ俺が本当に切ったの?」



 驚いて切れた木材と剣を交互に見る。



「上手くできているみたいだね。はぁ良かった、完成だぁ!」



 クリエートはお喜びしている、俺の新しい武器が手に入った。


 俺もクリエートと一緒に喜ぶのであった。

鍛冶屋では素材と(ゴールド)を用意することで装備を作ることができると知った。


クリエートがワニゲーターの牙を使って俺の剣を作った。その剣は今まで使っていた剣よりも軽く、簡単に木材を切ることができた。

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