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129話 ☆3『魔素の核の破壊』⑥(人形)

 俺たち全員がイカダに戻ると、4つ目の魔素の核の所までイカダを動かしていく。



「シザークラブの泡は大変だったっしょ」


「ミートはたくさん攻撃を受けていたものね」


「うんうん、心配になるくらいだったわ」


「ダメージもどれくらいだか分からないし、ミートはポーション飲みなさいよ」


「うわっ! 分かったから私の袋に触るなぁ!」



 フィーシュはミートの袋からポーションを取り出す。それをミートは奪い取ると一気にポーションを飲み干した。



「ふぅ……これで良いっしょ!」



 空になったポーションの容器をフィーシュに見せつけていた。



「うん、それで良し!」



 フィーシュはミートにそう伝えると、今度は俺に向かって話しかけてくる。



「シンも凄かったよ。シザークラブの泡がイカダに当たらないようにしてくれていたんでしょ?」


「初めてのことだったので上手くできていたか分かりませんが、頑張りました」


「あれ? 確かシザークラブの泡って途中で普通の泡に変わるから、わざわざ弾けさせなくても良かったよな。シンは無駄にダメージを受けちゃった感じっしょ」


「え? そうなんですかフィーシュさん!」



 俺はフィーシュにピラニアの時のように怒られるんじゃないかと思い顔を青くしていたが、フィーシュは俺の頭を優しく撫でる。



「わざわざ泡に構う必要はなかったけど、シンは上にいたイカダのことを心配して行動してくれていたんでしょ? 今回は水の深い所で戦っていたから、私たちは上に行く泡を気にしないでいたけれど、もし浅い所で戦っていたらどうなっていたか分からなかったわ。だから、ありがとうね」


「フィーシュさん……」



 また俺のやり方が悪くて怒られると思っていたから、褒められると思っていなくて胸がドキドキしている。



「みなさん着きましたよ」



 4つ目の魔素の核の真上まで来たようで、俺たちは潜る準備をする。


 フィーシュとミートは先に湖に飛び込み、ベジタは袋からマジックポーションを取り出して飲んでいた。



「ベジタさん、マジックポーション飲むほど魔力を使っていたのですか?」


「うんうん、そうよ。無言詠唱は消費魔力も多いのに威力も低いですから、魔物に通用するくらいの威力を出すにはたくさん魔力を使うんですわ」



 ベジタはマジックポーションを飲み切ると湖に入ろうとするが、先に潜っていたはずもフィーシュとミートがイカダに戻ってきた。



「あらあら、何かあったのですか?」


「ええ、エアーポーションの効果が切れ始めているわ」


「このまま潜っていったら、途中で息が出来なくなるっしょ」



 それを聞いて俺も自分に効いているエアーポーションの状態を確認すると、エアーポーションの効果は完全に消えていて、今は普通の呼吸をしていることに気が付いた。そのことをみんなに伝える。



「危なかったわ、あんな深い所で息ができないなんて怖いもの。ギルド職員さん、エアーポーションはありますか?」


「はい、エアーポーションでしたらまだありますよ」


「ありがとう。みんな早く飲みなさい」


「いや早く飲めって言ったって、私はさっきポーション飲んだばかりでお腹が……」


「何言っているの、シンもベジタもあと半分で飲み終わるんだから早くしなさいよ! それとも、私が飲ませてあげましょうか?」



 フィーシュはニヤリと悪い笑みをしながら、エアーポーション片手に1歩ずつミートに近づいて行く。



「や……やめろぉ!」



 涙目になりながら俺たちを盾にしながら、イカダの上でフィーシュから逃げ続ける。その間に俺とベジタはエアーポーションを飲み切った。そして今のうちに『パンプア』でバフをしておく。ベジタにも『パンプア』を使おうとしたら断られた。魔法を使って戦うので、力が上がるバフは無くてもいいみたいだ。


 マジックポーションをさっき飲んだばかりのベジタの方が飲むのが辛いはずなのに、そんなことは微塵も感じさせなかった。



「捕まえたわよ。さあ飲みなさい」



 ミートは後ろから抱き着かれるように捕まり、口元にエアーポーション容器を持ってこられる。



「分かった、飲む! 自分で飲むから放してほしいっしょ!」


「……本当?」



 耳元で呟くフィーシュに、ミートは首を縦に何度も振った。エアーポーションをフィーシュから両手で受け取ると、容器を見つめて唾をゴクリと飲み込み覚悟を決め、一気に飲み干していった。



「ぷはぁ……苦しい……」


「はい、よくできました。私も飲まなきゃね」



 フィーシュもエアーポーションを一気に飲み干す。



「遅くなったわ! そろそろ行きましょ」



 フィーシュは大きく息を吸って、勢いよく湖に飛び込む。それに俺たちもついて行く。






 ■






 4人一緒に深くまで潜ると、4つ目の魔素の核を見つける。ここを守っている魔物を探していると、そいつは現れた。



(この触手……ミズクラゲか!)



 ゆらゆらと魔素の核近くで守っている。近づこうとすると触手で威嚇をしてくる。


 身体が柔らかい魔物だからミートのハンマーではダメージを与えることは困難だろう、俺は剣を構えて一緒に戦うことを選ぶ。


 フィーシュは俺と目を合わせるとミズクラゲの横辺りを指差す。俺はそれを見て、フィーシュの指差す方へ移動する。


 俺が移動すると同時に、ミートとベジタは一緒に移動をする。ベジタも武器は短剣しか持っておらず、ミズクラゲの触手と戦うには厳しかった。


 ベジタたちが向かう先は湖の底。ベジタは地面に手を付くと地面がどんどん盛り上がってくる。



(ミズクラゲはシザークラブと違って常に浮いている、土を盛り上げても体勢を崩すことなんて……)



 そう考えていたら、シザークラブの時より土が盛り上がっていた。盛り上がった土がボロボロと崩れると、中から人の形をした土の塊が現れた。



(あれは、ゴーレムか! そうか、ベジタさんはゴーレムも作れるのか)



 俺の倍くらいの大きさがある土のゴーレムは、ミズクラゲに向かって攻撃を仕掛ける。


 ミズクラゲはゴーレムを触手で縛るが、ゴーレムの表面の土がへこむくらいで、そのくらいなら動きに支障が無いようだ。ただ、ベジタはゴーレムを操っている間は、地面に手を付いたままになるみたいだった。


 大部分の触手をゴーレムに使っているミズクラゲに、フィーシュが攻撃を仕掛ける。


『ウォーター』でミズクラゲの身体に穴を開けるが、空いた穴がすぐに塞がってしまう。何度も『ウォーター』を使っているが、ダメージはあるのにミズクラゲの回復力の方が高くて埒が明かなかった。


 ミズクラゲの方も、フィーシュの攻撃は気にしていなかったが、さすがに我慢の限界が来たのか、フィーシュに向かって触手を伸ばしてくる。しかし、その触手をゴーレムが掴み動きを止める。


 ミズクラゲが再びゴーレムに意識を向けたところで、フィーシュが近づき、触手の一部を槍で切られる。


 切られた触手は、少しの間ウネウネと動いていたが、そのうち動かなくなり経験値を出した。だが、ミズクラゲの切られた触手の断面から新しい触手が生えてくる。


 新しい触手が生え終わると、2本同時にフィーシュに襲い掛かる。フィーシュは2本とも切り落とすと、触手の断面からまた触手が生えて来ていた。



(ミズクラゲってこんなに回復力が高い魔物だったか? いや、水の中だからこんなに回復が早いんだ。道理で水の近くにいるこいつらとの戦闘を避けるわけだ。だが、どうやってその回復力の高いミズクラゲを倒せばいい? フィーシュさんの攻撃力よりも、ミズクラゲの回復力が高いんじゃいくら戦っても……)



 戦い方を考えていると、俺の方にも触手が襲ってくる。俺は剣で触手を切り、断面図から生えてくる新しい触手を見ていた。



(この触手は生えてくるのが遅いな、どういうことだ?)



 フィーシュの方の触手も生えるのが少しだけ遅くなっていた。どうやら俺の切った触手だけではないようだ。フィーシュの方の触手が完全に生えると、俺が切った触手の生える速度が上がった。



(っ! もしかして、回復力を分散させている?)



 フィーシュがまた触手を切ると、俺の方の触手は生えるのが遅くなった。



(やっぱりそうだ、ミズクラゲの回復力は、ミズクラゲの身体全てを合わせた回復力なんだ。だから、穴を開けられただけや、触手1本程度なら簡単に回復できるんだ。回復される前に何度も傷を付ければいい……でも、俺に近づく触手が少なすぎる。これ以上近づくと他の触手の相手をしなきゃいけなくて俺には厳しい)



 どうするか悩んでいると、たくさんの触手に縛られているゴーレムを見て閃いた。



(あるじゃないか! たくさんあって、俺に攻撃をしてこない触手が!)



 俺はゴーレムの所まで向かうと、ゴーレムを縛っている触手を切りまくった。触手は俺に攻撃をしてこようとしたが、触手同士が絡まって、俺に攻撃が出来なかった。


 別の触手が俺に攻撃をしてくるが、それはゴーレムが掴み取り守ってくれた。ベジタたちの方を見ると、ニコッと笑ってくれていた。


 俺がたくさんの触手を切ったことで、フィーシュを攻撃していた触手たちの回復が追いつかなくなり、より深い傷をミズクラゲに与えることが出来た。


 フィーシュによって触手が切られて、どんどんフィーシュに攻撃できる触手が減り、回復力よりも、こちらが与えるダメージの方が大きくなった。


 ミズクラゲの身体は切られすぎて小さくなり、フィーシュの攻撃によって身体が2つに別れてしまった。


 ここまで来ると回復が出来ないのかミズクラゲはビクビク震えると、経験値を出して回復することは無くなった。


 ミズクラゲを倒すと、フィーシュが俺のそばまで来て手を肩より上にあげて何かを待っているようだ。俺も手を肩より上にあげて、フィーシュの手の平を叩き、ハイタッチをして一緒に喜んだ。


 ベジタはゴーレムの操作を辞めると、ゴーレムはその場で動かなくなった。ミートは魔素の核をハンマーで壊して、4つ目の魔素の核の破壊に成功。


 こうして俺らはイカダに戻っていくのであった。

ミートはシザークラブとの戦闘でのダメージをポーションで回復、ベジタは無言詠唱で使った魔力をマジックポーションで回復、そして全員がエアーポーションの効果が切れかかっていたので、みんなでエアーポーションを飲んだ。


4つ目の魔素の核を守っていたのはミズクラゲだった。打撃系の武器や短剣を使うミートやベジタは戦闘から離れて、俺とフィーシュが表立って戦うことになった。


ところが、ベジタはただ戦闘から離れたのではなく、ゴーレムを作って俺たちと一緒に戦ってくれた。


水の中で戦うミズクラゲは回復力が凄くて、フィーシュの攻撃より、ミズクラゲの回復力が上だったが、たくさん傷付いていると回復が遅くなると分かり、ゴーレムを縛っている触手を切ることで、一気に回復力を落として、触手での攻撃を減らし、ミズクラゲの回復力よりもフィーシュの攻撃の方が上をいき、勝つことが出来た。


魔素の核は残り1つとなった。



魔法の紹介


・『ゴーレム』


ゴーレムを作る土属性魔法。ベジタは無言詠唱で使っていた。使う人や魔力によってゴーレムの質や量が変わる。


ベジタは自分で操作することで魔力の消費を抑えていたが、ゴーレム自身が勝手に動くようにも出来る。

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