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127話 ☆3『魔素の核の破壊』④(拳)

 ミートが壊した魔素の核を袋に詰めて、次の魔素の核がある場所まで移動するためにイカダまで戻っていった。



「ぷはぁ」



 イカダに上半身だけ乗せると、俺は空気を思いっきり吸い込む。


 エアーポーションを使っていて長い時間呼吸をしなくても良いとは言っても、息を止める事に慣れていないのと、ピラニアとの戦闘で空気を吐いてしまって、呼吸が乱れていた。


 ミートたちは呼吸が乱れていないようで、すぐにイカダの上に乗る。ミートとベジタは普通にイカダに手を置きながら乗ったのに、フィーシュは一旦湖に潜ると、勢いよく湖から飛び出して、そのままイカダの上に着地した。


 そんな姿に見惚れていると「早く上がってきなよ」と言われ、俺もイカダに乗り込んだ。






「はい、これが魔素の核っしょ」



 ミートはギルド職員に壊した魔素の核を詰めた袋を渡す。ギルド職員は袋を受け取ると、ザルを用意して、そこに袋の中身を入れていく。


 袋の中に入っていた魔素の核の欠片はザルに引っかかり、袋に入っていた水はザルを通り抜けていく。ギルド職員はザルから欠片を1つ取り確認をすると、魔素の核で間違いないということが分かった。


 軽く水気を切り、乾いた袋に詰め替えて、ギルド職員が預かることになった。



「みなさんありがとうございます、この調子で残りの4つもお願いします」



 そう言ってギルド職員は次の魔素の核がある場所までイカダを動かし始めた。



「はぁ……これで1つか」


「シンは危なかったっしょ、ピラニアに噛まれていたし」



 ミートは俺がピラニアと戦闘したことに対してからかいながら言ってくる。しかし、ミートとは違ってフィーシュは怒っているようだった。



「シン、ピラニアにあんな攻撃をするなんて何を考えてるの!」


「何って、剣で一刀両断しただけですよ。それのどこが……」


「それが大間違いなのよ! ピラニアは血に反応するの、ミートもベジタも血を出さないように攻撃をしていたわ。1人なら好きにすれば良いけど、今は私たちとパーティーを組んでいるの。シンのやったことはパーティー全員に迷惑が掛かっていたわ」


「ごめんなさい」



 フィーシュの言う通りだ。俺がいつも通りに剣で攻撃してしまったばかりに、ピラニアから血が出て、それに他のピラニアが反応してしまった。


 フィーシュたちが簡単にピラニアを倒せる実力があったから被害は俺だけで済んだが、もしアオたちだったら、リクたちだったらどうなっていたことか。


 おそらく倒せるだろうけど、無傷でとはいかなかったはずだ。俺が反省しなきゃいけないのは、パーティーに迷惑をかけたことはもちろん、楽に倒せた魔物を、強くしてしまったことだろう。



「まあまあ、彼も反省しているみたいだし、次は気を付ければ良いですから」


「……はぁ、そうね。シンもさっきから反省しているみたいだし、今回初めてピラニアと戦ったのよね? だとしたらもうあんな戦い方はしないでしょうし、これ以上はきつく言わないわ」



 ベジタに言われたからか、ため息をついて冷静になったフィーシュは、これ以上何かを言うつもりは無いようだ。でも、アドバイスを貰うなら今しかないと思い、聞いてみることにした。



「あの、もし良かったら、あのとき俺はどう戦うのが良かったか教えてもらえませんか!」



 俺がフィーシュにアドバイスを求めると、フィーシュは一瞬だけ目を見開き驚いていた、そして口角を上げる。



「私、そうやって前に進むための努力をする人好きよ」



 フィーシュは俺にピラニアとの戦闘で大事な戦い方を教えてくれた。



「ピラニアの目が青いうちは突撃しかしてこないの、攻撃されても避けやすくて、当たってもダメージが少ないこと。注意することが防御力が低さね、こちらの攻撃が通りやすいから弱点に見えるけど、ちょっとしたことで傷ができて血を流して興奮した状態になるの。だから、剣で戦うのは良くないわ」


「なるほど、じゃあ俺は剣以外を使うべきだったのか……でもフィーシュさんみたいに無言詠唱で魔法を使えないし、逃げるしかないのかな?」


「そんなことないわよ。さっきも言ったけど、ピラニアは防御力が低いの、だから剣が使えなければ殴れば良いのよ」


「殴る!?」


「そうよ、魔法を使うより時間はかかるけれど、殴ることでも実は倒せちゃうの」



 まさか殴るというアドバイスが来るとは思わず驚いていた。


 そしてこのタイミングでイカダは止まり、ギルド職員から魔素の核の上に着いたと教えられる。



「それじゃあ今教えたアドバイスをやってみようね」


「あっ、ちょっと!」



 そう言うとフィーシュは一番に湖の中に飛び込んだ。



「まあシン、頑張るしかないっしょ」


「そうそう、私たちもいるから負けることは無いわ」



 ミートとベジタは俺にそう言ってから湖に飛び込んだ。もうやるしかないと思い、俺はイカダに乗っている今のうちに完全詠唱で『パンプア』を唱えて力を上げ、空気を身体にたくさん溜めてから湖の中に飛び込んで行った。






 ■






 俺が湖の中に入ると、ランタンを持ったフィーシュは魔素の核に向かって一直線に進んで行く。それに合わせて俺たちも後を付ける。


 そして、2つ目の魔素の核を見つけた。


 ミートが慎重に近づくと、魔素の核の近くの地面がグラグラと動いて、ピラニアたちが現れ突撃をしてきた。


 警戒をしていたミートは難なく避けて、ハンマーでカウンターをして1体を倒す。ピラニアたちは何体もミートに襲い掛かることで、魔素の核からミートを遠ざけそうとしていた。


 ミート1人では対処できなくなり、俺たちがいる所まで引き返してくる。


 すると、ミートばかり狙っていたピラニアたちは俺らにも攻撃を仕掛けてくる。


 俺に向かってくるピラニアの1体に狙いを定めて、全力で拳を振りぬいた。



(どうだ!)



 俺の拳と自分の突撃の衝撃で、ピラニアは身体を痙攣させている。しかし、他に襲ってくるピラニアの対応に数十秒も使っていたら、俺が殴ったピラニアの痙攣は止まり、再び動きだした。


 俺はピラニアの突撃を避けるのではなく、ガードを固めて攻撃するチャンスを狙っていた。



(こいつらの攻撃はあまり痛くない、お腹に突撃さえされなければ、空気が漏れることもないし大丈夫。狙うのはピラニアが正面から突撃をしてきたタイミング、その時に思いっきり拳を叩きこむ……来た!)



 ピラニアに頭に拳を叩きこんだ、そして身体を痙攣させている。その間に他のピラニアが襲ってきて、このピラニアの対応をするのだが、今回はあえて対応はしないで、痙攣しているピラニアに追加で攻撃をする。


 何度も殴っている間に、俺も何度もピラニアたちに攻撃され、口から空気を漏らしていく。


 そんな甲斐があってか、殴り続けていたピラニアから経験値が出てくることを確認した。



(倒した! 残りも片付けるぞ!)



 1体倒したことでピラニアたちの攻撃が緩くなり、残りのピラニアも時間をかけて拳で倒していった。


 俺が全てのピラニアを倒し終えている頃にはミートたちはピラニアを倒し、魔素の核を破壊して袋に詰め終わったあとだった。






 俺たちはここでの役目を終えたのでイカダに戻って、次の魔素の核の場所まで移動する。

壊れて欠片になった魔素の核をギルド職員に渡した。


フィーシュがシンのピラニアとの戦い方に怒っていた。俺が戦い方を教えてほしいと頼むと、剣などの斬撃系ではなく拳などの打撃系を使った方が良いと教えてもらった。


『パンプア』を使ってから2つ目の魔素の核に向かい、そこでもピラニアと戦った。


フィーシュに教えてもらった拳で殴るという方法を試して、ピラニアを倒すことが出来た。


魔素の核は残り3つだ。

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