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123話 訓練所で鍛錬!④(雷風)

「我が魔力を雷に……雷電が如く……裁きを下す……大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる。メンガ……テヨク……コヨン……アイド・ケブン・バイタ」



 俺の魔力が雷に変わり、バチバチと光る雷は手の平から今にも離れていきそうだ。



「『サンダー』!」



 魔法を放つと『サンダー』はジグザグに進み、的ではなく壁に当たった。しかし威力が低いことと、一瞬しか当たらなかったことで壁に痕は残らなかった。



「使ったことないけど、私も『サンダー』やってみる! シン、その本貸してよ」


「はいどうぞ」



 ミートに本を貸すと『サンダー』の魔法について書かれているページの文字を黙って読んでいく。



「だぁぁ! 詠唱が頭に入ってこないっしょ! よくシンはこの詠唱を覚えていられるね」


「俺だって覚えていないですよ。だからこうして魔法書に書かれている詠唱を見ながら魔法を使っているんです」


「ふーん、なんとなく分かったよ。本ありがとね」



 ミートは魔法書を俺に返して、的の正面に立ち目を閉じ集中する。手を前に突き出すと、目を見開き省略詠唱で唱える。



「『サンダー』」



 ミートの手からビリっと雷が出ただけで的には全く届いていなかった。



「……シン! もう一回本を読ませて」



 今度は真剣に魔法書を何度も読み込んで、再挑戦するようだ。



「もう大丈夫、本を読みながらならできるっしょ」



 魔法書を片手に持ち、開いた手を前に突き出して完全詠唱を唱える。俺よりも詠唱がぎこちないが、魔法書に書かれた詠唱を一言ずつ丁寧に読み進めていった。



(2回目とはいえミートさんも今日初めて『サンダー』を使うはずなのに、俺よりも完成度が高い!)



 俺の時よりもバチバチと光る雷、ミートは完全詠唱を全て唱え終わる。



「『サンダー』」



 バチバチとした黄色い閃光が的に向かって放たれる。しかしジグザグに枝分かれした『サンダー』は的には当たらず、壁に数ヶ所当たってしまった。しかし、ミートの完全詠唱の『サンダー』も壁に痕は残らなかった。



「やっぱりミートは魔法を大きくしちゃう傾向にあるみたいだね、完全詠唱なら壁に焦げ目がついても良いはずなのにそれがないわ。これじゃあ威力が低すぎるよ」


「そうそう、今後のことを考えても、完全詠唱でこの程度の魔法じゃこれから先の戦いで足を引っ張ってしまうわ」


「だよなぁ、せめて省略詠唱であの威力なら威嚇に使えるのに」


「戦闘で使わない『ファイア』よりも弱い『サンダー』なんて使い物にならないわよ」


「……はぁ、それもそうだよね」



 ミートは大きなため息をついて落ち込んでいた。俺よりも強い魔法を使いながらも、仲間のフィーシュとベジタからはその威力に不満を言われている。また『ファイアが弱い』と言われた時のように2人に怒るかと思っていたが、今回は受け入れているようだった。


 そんな3人を眺めていると、道具の貸し出しをやっていたギルド職員が近づいて来る。



「ミートさん、フィーシュさん、ベジタさん。ギルドの準備が整ったようなので、会議室まで向かってください」


「「「はーい」」」


「んじゃ私たちは行ってくるね。この本ありがと、次会うのは当分先になりそうだけど、その時はよろしくっしょ」


「また会いましょう」


「うんうん、またね」



 ミートは手を高く上げ大きく振り、フィーシュは凛々しく別れを告げ、ベジタはペコリと頭を下げて訓練所を出て行った。ギルド職員はそれを見届けていた。



「さて、俺の仕事は片付いたし、サボらせてもらいますか」



 ギルド職員はあくびをすると、退屈そうに道具を貸し出す所に戻っていった。






 ■






「行っちゃった……」



 俺は1人ぽつんと訓練所の真ん中に寂しそうに立っている。しかし、いつまでもこうしている訳にもいかないので、次の魔法の準備をする。



「次は風属性魔法の『ウィンド』か……以前の俺なら、そろそろ魔力が切れてもおかしくない頃だけど、まだ使えそうだ」



 自分の中に残っている魔力を感じ、魔法書の『ウィンド』のページを開く。



「我が魔力を風に……風穴が如く……時代を運ぶ……大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる。ツイメ……ヌバヤ……フナシ……アイド・ケブン・バイタ」



 俺の魔力が風に変わり、刃のように鋭くなっていく。



「『ウィンド』!」



 風の刃が的に向かって飛んでいく。前に進みながら上下左右に回転する『ウィンド』は、なんとか的の端に当たった。もしあと半回転遅れていたら壁に当たっていただろう。



「これで無・火・水・雷・土・風の6つの属性の完全詠唱で使うことができた。後は省略詠唱でも使えるか確認しないとね」



 俺はこの後、無属性以外の魔法を省略詠唱で使っていった。だが、鍛錬が足りないみたいで不発に終わる。最後に使った風属性魔法の省略詠唱で、俺の魔力は無くなった。


 俺は地面に座り、肩で息をしながら休憩する。



「省略詠唱はまだまだだけど、魔力が増えて多く魔法が使えるようになっているな。次は剣の鍛錬だ」



 呼吸が落ち着くと剣を抜いて、振り下ろす素振りを始める。俺の吐く息に合わせて剣を振り、息を吸いながら構える。剣が前よりも軽く感じ、力も速さも上がっていると分かる。


 振り下ろす素振りをある程度やったら、次は横に薙ぎ払う素振りを始める。右から左へ、左から右へと交互に剣を振っていく。


 全身から汗が出て。服が肌に張り付いている。素振りを辞めると、剣を地面に刺し、膝に手を置いて中腰の体勢になり呼吸を整える。


 顔から顎に、顎から地面にと汗がポタポタと垂れていく。服で顔から出る汗を拭い、訓練所の壁に寄り掛かる。


 そんな俺の近くにギルド職員がコップに水を入れて持ってきてくれたようだ。



「凄い汗の量だ、これでも飲め」


「ありがとうございます!」



 差し出された水を俺は一気に飲み干す、生き返るような美味さと感じるほどの水だった。



「はい、水の料金100(ゴールド)な」


「え!?」


「嘘だよ、無料だよ。ビックリしちゃった?」



 俺が驚くような顔をしたことで、いたずらが成功して喜んでいるようで、邪悪な笑みを浮かべていた。



「まあほどほどにしとけよ。飲み終わったコップは俺が片付けるから、鍛錬を続けると良いよ」



 そう言ってまたギルド職員はコップを片付けに訓練所からいなくなった。


 俺は素振りで使った体力が回復すると、今度は訓練所で走り込みを始めた。身体は温まっているので最初から全力で走ることができた。


 こうして、魔力も体力も使い切って全てを出し切った。

雷属性の魔法の完全詠唱をした後、ミート、フィーシュ、ベジタの3人は会議室へ行ってしまった。


その後は風属性魔法の完全詠唱をして、無・火・水・雷・土・風の6つの属性の完全詠唱をすることができた。


無属性以外の魔法を省略詠唱で使えるかも試してみたら不発に終わった。


魔力を使い切ると、剣の素振りをしたり、走り込みをした。

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