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122話 訓練所で鍛錬!③(火水土)

「それでシンは次に何をやるつもりだったの?」


「次は他の魔法も使えるか試すつもりでしたよ」



 俺はミートに、次に使う魔法を魔法書から開き、そのページが見えるように広げて見せた。



「『ファイア』かー。私もよく使うよ」


「そうね、ミートは肉を焼くのによく『ファイア』を使っていたわ」


「うんうん、ミートの弱い『ファイア』はじっくり焼くのにむいているからね」



 ベジタの言葉にカチンと来たミートは、今にも殴りかかりそうな拳を抑えて、誤解を解こうとする。



「私の『ファイア』が弱いですって、あれはわざと弱く使っているのよベジタ!」


「あらあら、そうだったかしら? 戦闘で使ったところを見たことがなかったから、弱いものだと思っていたわ」


「もうそこまでにしなよ、喧嘩していたらシンの邪魔になっちゃうよ」


「……それもそうね……シン、頑張れよ!」



 ミートが怒りを鎮めていると、またベジタが煽ってこようとした。しかし、ベジタのそばにいたフィーシュにより口を塞がれて、ミートを煽ることができなくなっていた。しばらく暴れていたベジタわ観念したのか、フィーシュの腕の中で大人しくなっていた。


 3人が見守る中、魔法書の『ファイア』の詠唱をぶつぶつと呟き復習する。発音もしっかり言えるようになったと確信してから片手を前に突き出し、完全詠唱を始める。



「我が魔力を火に……火炎が如く……闘志を燃やす……大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる。チニド……カラル……ウヤミ……アイド・ケブン・バイタ」



 俺の魔力が火に変わり、メラメラと燃える火は手の平に熱を感じさせてくる。



「『ファイア』!」



 放たれる火の球は的に当たる所で消えてなくなった。



「『ファイア』だとこの位置じゃ届かないのか」



 遠距離攻撃としては使えないが、ウッドォみたいな魔物には使えそうだと分析していく。



「じゃあ今度は私の番ね」



 ミートは俺にそう言うので、俺は的から離れてフィーシュとベジタの所へ行き、ミートを観察する。



「いくよ、『ファイア』」



 ミートの『ファイア』は、俺の『ファイア』の10倍以上の大きさをしていた。それを的に向かって飛ばすが、的よりも大きいので的からはみ出し、訓練所の壁にも当たってしまった。しかし、壁には焦げ跡などは付いていなかった。



「やれやれ、ミートの『ファイア』は広範囲なのですが、やはり威力が足りないわ」


「うるせぇ! 威力はシンより強いし、私の方が広いし避けにくいっしょ!」


「なぁ、ミートは魔法を圧縮しないのか? そうすればもっと威力出るよ」


「私は圧縮が苦手だから無理! 逆にフィーシュは圧縮しすぎて1体ずつしか攻撃できないじゃない」


「私は威力を上げるためにやっているのよ、手本を見せてあげるわ! シン、私も的借りるわよ」


「あ、はいどうぞ」



 ミートと場所を入れ替わり、今度はフィーシュが的の前に立つ。



「『ウォーター』」



 手首を振るように放った『ウォーター』は、凄い速さで的に向かって当たる。何か当たった音は聞こえたけど、俺には何も見えなかった。



「何が起こったか分からないって顔しているわね、今度はゆっくりやってあげる」



 フィーシュは俺に見えるように手のひらを向ける。そこには小さな水の球があった。それをフィーシュは圧縮していき、的に向かって手首をさっきよりもゆっくり振ると、小さな水の球が的に向かって飛んでいくのが見えた。



「圧縮した『ウォーター』は範囲が狭いけどその分威力は高いわ。実戦で使えるのは私のような魔法ね」


「ぐぬぬ……でも戦闘だけが大事じゃないわ、私のおかげでフィーシュは美味しい焼き魚を食べられているじゃない! 文句があるなら焼いてあげないから」


「うおっ……それは困るな。冒険中にお刺身だけしか食べられないのは辛いわ。ベジタ助けて」


「あらあら、野菜を生で食べる方が好きな私に助けを求めるのは悪手ですわよ」


「うぅ……」


「素直に私に謝るなら許す!」


「ごめんなさい」


「よし! これからも美味しい魚焼いてあげる」



 ミートとフィーシュの喧嘩も終わったようだ。この3人は喧嘩と仲直りを頻繁にやる印象がついてしまった。


 そんなことより鍛錬だ。的に魔法を使ったのはミートとフィーシュなので、俺はベジタにも声をかける。



「ベジタさんも的に魔法当ててみますか?」


「いえいえ、私が使う魔法はそういう類の魔法ではないので遠慮するわ」


「そうですか。じゃあ俺が使わせてもらいますね」


「うんうん、あなたが借りた的ですから、私たちに気を使わなくていいのに……あ、そうだ。初級魔法を試しているなら、土属性魔法を見せてほしいわ」


「良いですよ。えっと土属性は……あった『アース』だな」



 俺はベジタのリクエストに応えるために『アース』の詠唱を復習する。誰も使っているところを見たことがない魔法だから、どんな風になるか楽しみだった。準備ができたら片手を的に向けて完全詠唱を始める。



「我が魔力を土に……土壁が如く……大地を豊かに……大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる。ワミエ……ラユサ……ビセム……アイド・ケブン・バイタ」



 俺の魔力が手の平に集まってくるが、魔力に変化はない。疑問に思いながらも魔法名を唱える。



「『アース』!」



 魔法名を答えると、集まっていた魔力が徐々に土になって手の平から吐き出される。腕2本分の長さ程度の先に足首くらいまで高くなった土の山ができた。



「…………何これ? え、本当に何これ? モグラの巣みたいな土の山ができたんだけど……この魔法は戦闘で何に使えるの?」



 全く戦闘に使えそうにない魔法で俺は困惑していた。そして使っている冒険者がいないことを理解した。あまりにも弱すぎる魔法だからだ。通りで派生形の『ストーン』が使われるわけだ。



「そうそう、『アース』はこれだけだから弱いのよね、でも派生はいっぱいあるわ。穴を掘る『ディグ』に、石を作る『ストーン』に、この土に命を吹き込んで動かす『ゴーレム』などあるわ。

 『アース』は罠を隠すのに使ったり、するのが主な使い方だから、この魔法でダメージを与える魔法じゃないのよ」



 ベジタからの派生を聞くだけで幅広いと分かる。ダメージを与えることばかり考えていたけど、そういう使い方もあるのかと参考になる。俺1人じゃ思いつかなかったかもしれない。



「ありがとうございます、ベジタさんのおかげで強くなれそうな気がします」


「あらあら、お礼何て言われるほどのことじゃないわ。次は何の魔法を使うの?」


「あとは雷属性と風属性の魔法を試すつもりです」



 俺がそう言うとミートとフィーシュが



「そんなに色んな属性の魔法を覚えてどうするんだ? 言っちゃ悪いけどシンの魔法は強いって言えないよ。何でも手を出すのは良くないっしょ」


「そうね、ミートの言う通りだわ。得意なことに集中した方が強くなれるもの。私は魔法の圧縮が得意だったから、そこを鍛えて『ウォーター』を使い始めているよ」


「さっき私に圧縮を進めていた人とは思えないんですけど!」


「ミートは得意なことをある程度できるようになったから、苦手を克服してほしいと思って言っただけよ。シンは得意なことが何か分かって無さそうだからアドバイスしたの」


「なんだそういうことか、照れるじゃねーか」



 頬を赤らめたミートはフィーシュの肩を掴んで、ニヤけた顔をしていた。そんなミートとは反対に、俺の表情はかたい。



(得意なことか……俺にはないな、長く鍛錬したから他のことより上手くできるだけで、剣が得意なわけでも、魔法が得意なわけでもない)



 俺だけの得意って何だろう。いつか俺だけの得意が見つかると良いなと思った。

『ファイア』を使ったが的に当たらないくらい射程が短かった。ミートの『ファイア』は俺の10倍以上の広範囲を攻撃できていた。威力はそんなに高くない。


フィーシュが圧縮した『ウォーター』の威力を見せてくれた。とても速くて威力も高そうだった。


『アース』という魔法を始めて使った。誰も使ったところを見たことがなかったから楽しみにしていたが、とてもダメージを与える魔法には思えなかった。ベジタさんが使い方や派生を教えてくれたので、とても参考になった。


色んな属性の魔法を試すことを止めて、得意なことをした方が良いとアドバイスをもらった。『無限成長』のスキルを持っている俺は何でも習得できる代わりに、得意も不得意も無かった。いつか俺だけの得意が見つかると良いなと思っている。



魔法の紹介


・『アース』


土を出す土属性魔法。色んな土属性魔法の派生元として使われているが、戦闘ではあまり活躍をしない。罠を隠すのに使ったりなどはできる。


――


ミート、フィーシュ、ベジタの3人の女性だけのパーティーは、

77話『魔王軍活動開始?(情報)』にチラッと登場している。


だいたい1行くらいしか描写されていませんが、気になる人は、探してみてくださーい

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