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119話 ☆3『アルンの湖調査』⑤(水質)

 カイトとソラが肩を借りて立たせてもらい、リクに背負ってもらった。



「待ってろよ、小屋まで運んでやるからな」


「うっ……あっ……」



 俺は少し動くだけでも身体に激痛が走る。今はただ耐えるしかないようだ。その後、小屋に向かうまでが地獄だった。


 揺れるイカダに乗るのだが、イカダが動くたびに身体中が痛くて悲鳴をあげる。何度もイカダに揺られている間に意識を飛ばすが、痛みによって目を覚まし、また痛みによって意識を失う。これが何度も起きて精神はボロボロになっていた。


 そんな中、一番痛みを強く感じたのは、船着き場にイカダが到着した時だ。カイトとソラがオールで速度を緩めてくれていたが、イカダが船着き場のぶつかり、リクの身体を通じて俺の身体に衝撃を伝えてくる。ここで俺は完全に意識を失い、気が付いたらベッドで横になっていた。






「うっ……」



 俺は目を開けると、木製の天井が見える。ここがどこなのか確認をするために目だけを動かす。向かっていた場所が小屋だったので、おそらくその小屋の中なのだろうと思った。色々見ていると、イスに座っているリクと目が合った。



「シン、気が付いたか!」


「リク……みんなは?」


「カイトたちは湖の調査に行ったよ、ところで身体は痛くないか? 小屋にあったポーションをシンの身体に塗ってみたんだけど」



 リクに痛みのことを聞かれてベッドから起き上がり自分の腕を見る。稲妻のようなやけど痕というのはどこにも見当たらない、まだヒリヒリと焼けるような感覚は残っていたが、我慢できる程度の痛みにまで回復していた。それに声も治っているようだ。


 これなら動けると思ってベッドから出ようとすると、目の前にリクが来て俺がベッドから出るのを止めてくる。



「何するんだよリク、俺はもう大丈夫だからカイトたちの所に行かないと」


「ダメだ、俺とシンはここで待機するように言われているんだ」


「そんな!」


「俺はシンが湖に勝手に行かないように見張りを頼まれているんだ、大人しくしていてほしい」


「……分かった」



 俺がベッドから出るのを諦めて、横になるとリクはイスに座って腕を組み、目を閉じて休み始めた。



「……もしかして俺のせいでリクも小屋で待機するように言われていたりするの?」



 俺は天井を見つめながら聞いてみた。



「それは違うよ、俺はカミナリクラゲと戦った時にダメージを受けすぎて加護がほとんど残っていないんだ。これ以上は危ないってことで、俺もシンと一緒に小屋にいて待っていてほしいんだってさ。だから、シンの見張りを頼まれてはいるけど、それはシンのせいじゃないよ」


「……そうなんだね……」



 俺たちはその後、何か話をするわけでもなく、湖の調査に向かったカイトとソラとギルド職員を待つことになった。静かになった小屋には、外から聞こえる雨の音や雷の鳴る音だけが聞こえていた。






 ■






 小屋の扉が開き、カイトたちが液体の入ったビンをたくさん持ち帰って来た。



「シンは目を覚ましたみたいだね、具合はどうだい?」


「カイトおかえり、もう痛みは気にならないくらい良くなったよ。それで、湖の調査はどうだったの?」


「それは私から説明させてもらいます」



 調査内容はギルド職員から聞けるようだ。俺以外のみんなはイスをベッドの近くに置いて座る。



「アルンの湖を調査したところ、湖の水から大量の魔素を観測しました。これだけ魔素を含んでいれば、この水を飲んだ魔物は狂暴化することでしょう。ちなみに、みなさんが先ほど戦っていたカミナリクラゲも、この水を吸収したことにより狂暴化したものとみられます」


「予想が当たってしまったのですね、でも何故魔素が湖に……原因は何だろう?」


「何か魔素を出す物がアルンの湖にある、そう考えるのが自然だね。ほら、シンは俺たちと鉱石調達に行ったから見ているはずだよ。俺がキクラゲと戦っていた時に使っていた洞窟の湖を。あそこの湖の中に魔石があって、湖に魔素が溶け込んでいたんだ」


「ということは、アルンの湖にも魔石が?」



 俺の発言に対してギルド職員は首を横に振る。



「魔石は無いと思いたいです。周辺には魔石が作られるような環境は無いですし、アルンの湖から魔石が見つかったということを聞いたことがありません」



 ギルド職員がそう言うと、ソラは調査中に感じた疑問を話し始める。



「でも不思議だったな、調べる場所によって魔素が多く含まれる場所と、そうじゃない場所があるんだもんな」


「それは俺も感じていた。浅い所で魔素が含まれていると、同じ場所の深い所も魔素が含まれているのに、浅い所で魔素が含まれていない所の、同じ場所の深い所では魔素が含まれている」


「そうそう、深い所の水は魔素が多く含まれていたな」


「これは新たに調査する必要がありそうですね……ではそろそろ街に帰りましょう」


「え? 帰っちゃうんですか?」


「今回のクエストは調査が目的ですから。それに、今いる人数と道具では、何かあったとしても解決はできないでしょう。あとはこの集めた湖の水をギルドに持ち帰って、今後どうするのかを決めます」


「俺ってこのクエストでカミナリクラゲと戦っただけで湖の調査に関わってなかったな……」


「心配すんなよシン! 俺も戦っただけで調査に関わってないから」



 リクは笑っていたが、俺はこのクエストに達成感が無かった。でも、今の俺たちにできることはもうないので、街に帰ることになった。






「おや? 外が晴れていますね」



 あれだけ荒れていた天気が嘘みたいに、太陽の光が俺らを照らす。青空の中、俺たちは魔物と出会うことなくアルンの街に帰ることができた。






 ■■






「それでは私はこれで失礼します、今日はありがとうございました」



 ギルドに入ると、ギルド職員は俺たちにそう言い、どこかへ消えてしまった。



「俺たちもクエストクリアの報告をするぞ!」


「あのさ……リク、もう俺のこと降ろしても良いんじゃない?」



 俺は小屋からギルドに来るまでの間、ずっとリクに背負ってもらっていた。そしてギルドに入った今も背負われている。他の冒険者からの目線が俺に集中しているのを感じていた。



「それじゃあ降ろすよ」


「ありがとう……うっ……」



 足が床に付いた瞬間に身体に痛みが走る。だがそれだけだ、もう1人で立てるほど回復をしている。


 みんな俺のことを心配しているようだけど、俺は「大丈夫」と伝えて受付へ向かい、受付にいるハンナさんにクエストクリアの報告をする。



「クエストお疲れ様でした。カイトさんたちの活躍はギルド職員から確認済みです。こちらが報酬金となります。」



 俺は300(ゴールド)入った袋を受け取り、ギルドカードには1050GP(ギルドポイント)が追加された。






「じゃあ俺たちはこの辺りで帰るとするよ。今日は守れなくてごめんね、また一緒にクエスト行けたら嬉しいな」


「あぁ、俺もシンとクエスト行くのは楽しかったぞ」


「俺も楽しかったぜ! また行こうな」


「今度はちゃんと守ってよ?」



 俺が冗談っぽく言ったら、カイトとソラとリクは笑顔なのになぜか凍り付いたように表情が硬くなった。3人の後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、俺も自分の部屋に帰る。


 今日は色々あったので早く眠れそうだ。まだまだ外は明るいのに、俺は敷いた布団で横になるとすぐに眠ってしまった。

リクの背中に背負われ、何度も痛みで気絶しながら小屋まで辿り着いた。


小屋で俺とリクが休んでいると、カイトたちが湖の調査を終わらせる、そして湖の水には大量の魔素が含まれていて、これが原因で魔物の狂暴化の理由が分かった。


だけどなぜ、魔素が含まれるようになったか分かっていないので、今後調査するみたいだ。

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