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118話 ☆3『アルンの湖調査』④(強化)

「はぁ……はぁ……やっと着いた……」



 湖を泳いでいる間、何回も雷が落ちていたが、感電することなく陸に上がることができた。



「リクたちはどこに行ったんだ?」



 イカダが近くに置いてあるから近くにいることは分かる、だが真っすぐ進んだのか左右に進んだのか分からなかった。


 いつまでもここにいても仕方が無いので森の中に入る。すると、雨の音の中に笛の音がかすかに聴こえていた。こんな所で笛の音を出すのはソラしかいない。そう思って音のする方向へ駆け出した。






 ■






 みんなの所まで辿り着くことができ、木の後ろに隠れて様子をうかがう。カミナリクラゲを取り囲むリク、カイト、ソラ。地面には『アースウォール』の残骸がたくさんあり、激しい攻防が繰り広げられていたことが想像できた。


 しかしそれもソラの笛の音によってカミナリクラゲが動きを止めるまでのこと、ソラの笛から奏でられる怪音を聴き、浮遊した状態で動けなくなっていた。


 そこへカイトが少しずつカミナリクラゲに直接触れずにダメージを与えている。



「『インパクト』!」



 カイトの無属性衝撃波がカミナリクラゲを襲い、触手の1本を削った。



「まずは1本だね、これで雷の球の連射は控えめになるかな?」


「今のところ順調だが、このペースだと俺たちの方が魔力を使い切って倒せなくなるぞ。もっとダメージを与えられないのか?」


「リクやソラも攻撃に参加できれば楽になるけど、リクは近距離攻撃しかできないからダメージを受けるし、ソラを攻撃に参加させるとカミナリクラゲが自由に動けるようになる。となると、俺が少しずつダメージを稼ぐしかないんだ」



 カイトのリクを気遣う言葉を聞いたリクは、カミナリクラゲに向かって走り出し「『アースクラッシュ』!」と叫びなら触手を数本切断する。


 当然、カミナリクラゲに触れたことにより、リクの身体に電気が流れ、気持ちを奮い立たせる叫び声から、苦痛を感じさせる叫び声へと変化していった。



「うぅ……」


「「リク!」」



 ソラは笛を吹いて万が一にでも今カミナリクラゲが動き出さないように動きを止めて、カイトはカミナリクラゲの真下でうずくまるリクを抱えてソラのいる所まで連れて行く。



「へへっ……これでもっと戦いやすくなったぜ」


「無茶をするな! 加護が切れていたらどうするんだ!」


「まだ加護は残っているから大丈夫、ちょっと痺れる時間が長くなってきただけだぜ」



 カイトに肩を借りながら、リクは痺れる身体を動かし立ち上がる。



「まあそんなにリクを責めてやるな、リクのおかげで勝利に近づいたんだ」


「そうだね、ありがとうリク」


「へへっ、俺たち仲間だろ、当然の行動さ」



 リクは借りていたカイトの肩から手を放して、照れくさそうにカイトの背中をパンパン叩いた。



「それで、この後はどう戦う? いくらリクが削ったからって、まだまだカミナリクラゲを安全に倒せるダメージは与えていないぞ」


「もっと俺に攻撃力があればいいんだけどね、カミナリクラゲには俺の水属性攻撃はあまり効果が無いようだから、ダメージアップには期待できない、さてどうしたものか……」



 このタイミングで、木の後ろから顔だけ覗かせて様子をうかがっていた俺はリクたちの前に姿を現した。



「俺ならなんとかできるかも」


「シン! 無事でよかった」


「なんとかできるってどういうことなんだ?」


「……! なるほど、シンは攻撃力を上げるバフ魔法が使えるんだったな、早速カイトにかけてやってくれ」


「分かった、カイトいま『パンプア』をかけるからね」



 ソラが時間を稼いでくれている間に、俺は完全詠唱の『パンプア』を発動して頭上に魔力が集まる。それをカイトの身体に纏わせていった。



「力は上がったかな?」


「やってみる……『インパクト』!」



 カイトは拳に力を入れてカミナリクラゲに向かって短剣を思いっきり振る。『パンプア』の効果が乗った『インパクト』はカミナリクラゲの触手に深い傷を作った。



「効果はあるみたいだね、これなら攻撃回数を減らせそうだ」


「やったね」


「なぁシン、俺にもそれ使ってくれ!」


「良いよリク」



 俺はリクにも完全詠唱の『パンプア』を発動して身体に纏わせた。そうしている間にもカイトはどんどんカミナリクラゲの触手を切っていく。



「カイト、そろそろ俺も攻撃するぜ! 『アースクラッシュ』!」



『パンプア』の効果が乗ったリクの『アースクラッシュ』は、薙ぎ払うようにカミナリクラゲの触手を全ての触手を切断した。これでカミナリクラゲは雷の球を飛ばすことができなくなり、攻撃手段がなくなった。



「うっ……これでもう攻撃は来ない、あとは止めを刺すだけだ。この痺れが収まったらもう1回攻撃をすれば……」



 リクがそう呟くと、空がピカピカ光だし、雷が落ちてきた。あまりの眩しさと爆音に俺らの意識は一瞬止まった。意識を取り戻すと、そこには、先ほどよりもバチバチと電気を帯びたカミナリクラゲがそこにいた。



「嘘だろ……ここに来て強くなるのかよ……」


「でも触手が無いから攻撃できないみたいだよ」



 ソラは驚きの表情をしながら呟いた。俺はカミナリクラゲの無い触手を指差し、攻撃してこないことを告げる。それを聞いたリクとカイトは安堵したようだが予想していないことが起きた。


 カミナリクラゲが俺に向かって体当たりをしようと近づいて来るのだ。



「まずい! あれに触れたら加護を突破されるダメージが来る、絶対に避けるんだ!」



 俺は避けようとするが、避けた方向にカミナリクラゲも方向転換をして追いかけてくる。ソラは笛の音で動きを止めようとするが、さっきの雷で頭に爆音のイメージがあるせいか、音の感覚がおかしくなったみたいで、狙った音を出すのに苦労しているようだ。


 止まらないカミナリクラゲをなんとか避けるために森に入って木に引っかかることを期待したが、それでも止めることは出来ずに、俺はカミナリクラゲに触れられてしまった。



「あぁぁっっっ!!!」



 今日1番の叫び声を上げた俺は全身を焼かれる熱さを感じていた。


 だが、これは一瞬のことでカミナリクラゲも許容を越えた電気を放電したことにより、カミナリクラゲからミズクラゲに戻ったと思うほど身体の色が薄くなっていた。



「シンを離せ! 『アースクラッシュ』!」



 リクがカミナリクラゲを真っ二つにする。どうやら本当に電気を多く使ったのか、リクは触れても電気によるダメージをほとんど受けていなかった。


 そしてカミナリクラゲは経験値を吐き出して、俺たち4人に経験値が入っていった。






「シン! しっかりしろ、シン!」


「うっ……あっ…………」



 リクに呼びかけられても呻き声くらいしか出せないでいた。



「シンの身体に稲妻のようなやけど痕が……俺のポーションを飲んでくれ!」



カイトは俺にポーションを飲ませる。かなり飲みにくかったが、飲み込むと痛みが少し和らいだ。



「リクやソラはポーション持ってる!?」


「ごめん、持ってない」


「悪い、持ってない」


「おっ……あい……いぇあ……あう……あおっ」



 俺は「小屋に行けばあるかも」と口に出したつもりだが、どうやら喉を焼かれて上手くしゃべることができないみたいだ。



「シンを安全な場所まで連れて行こう、とりあえずギルド職員を隠れさせた小屋に行って休ませるしかない」



 俺の言葉は通じなかったが、運よくカイトが小屋に俺を連れて行ってくれるみたいだ。ただ、小屋にポーションがあるかどうかは分からない。


 どうかポーションがあってくれと願うばかりだ。

陸に上がり、笛の音を頼りに森の中に入りみんなを探す。


俺は木の後ろで様子をうかがいながら、カミナリクラゲをソラが抑えてカイトが削り、リクが一気に触手を切断していくところを見ていた。


俺も戦いに参加すると、『パンプア』を完全詠唱でカイトとリクに使う。これにより、触手を全て切断することに成功して、攻撃手段を奪った。そう思っていたら、カミナリクラゲは体当たりで触れたものに電気を浴びせようとしてきた。


標的は俺のようで、必死に避けるが触れてしまい、全身に強い電気を浴びて、稲妻のようなやけどと喉を焼かれて声が上手く出せなくなっていた。


俺はカイトたちに安全な小屋まで運んでもらうことになった。

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