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114話 宿屋更新日!(半分)

 窓から入る光で目を覚ます。



「今日はいつにも増して暑いな」



 空気はカラっとしているが、かなり暑く感じる。いよいよ夏が近づいていることを肌で感じる朝であった。部屋の隅に置いてあるスライムのぬいぐるみも、表情は変わらないのに暑そうにしていると思ってしまった。


 ギルドに行く準備をするためにズボンを着ようとすると、足の指が引っかかった。何かと思って引っかかった所を見ると、ズボンの穴から足の指が出ていた。



「昨日ファイアーバードに開けられた穴を直すのを忘れていた、どうしようか。サンダーガードの服で行く? この暑い日に黒い長袖と長ズボンの服は暑そうで嫌だな……ん、何この匂いは?」



 変な匂いと共に太陽の光が雲に隠れて暗くなる。すると急に雨が勢いよく降りだした。



「さっきまで晴れていたのに何だ!?」



 雨は窓に強くぶつかり、凄い音を出していた。しばらくの間続くと、雨が弱くなってくる。そして空から雲がいなくなり、太陽が姿を現した。



「あぁ、にわか雨か。こんなこともあるんだね、でもこの雨のおかげでさっきより涼しくなったぞ。それに空には他にも変な雲がいるし天気が崩れそうだ、今日はサンダーガードの服で行っても良さそうだね」



 俺はサンダーガードの服とズボンを着て、その上にレインコートを羽織った。



「この服を着るのは雷の魔法石のクエスト以来だな、朝食を食べたら服を買いに行って、お昼くらいからクエストやろうかな」



 俺はそう予定を立てて部屋を出ると、扉に板のようなものが付いていて『この板を持って、受付まで来てください』と書かれていた。



「宿屋の更新日か、受付で更新手続きしないと」



 俺は受付にある箱を押すと青い光を放つ。それを合図に部屋の扉が1つ開き、中から笑顔の店主が出てくる。



「おはようございますお客様、今日はどのようなご用件で?」


「宿を1週間分延長しに来ました。確か1日100(ゴールド)でそれに朝食付きが1日50(ゴールド)だから、1週間の合計1050(ゴールド)と……はい」



 板と(ゴールド)を受付に出し店主の返事を待つ。



「先週説明をしただけですのによく覚えていますね、1週間の延長ありがとうございます、本日から1週間またよろしくお願いいたします」



 店主は1050(ゴールド)を受け取ると礼をして見送ってくれた。俺は食堂で朝食を済ませ、宿屋から出る。






 ■






 雨で濡れた地面をレインブーツで歩く、何人かの人たちは肩に濡れたあとがあった。急なにわか雨に対応できなかったのだろう。俺はそんな人たちを横目で見ながら、服屋に向かうのであった。



「宿代で今週稼いだ(ゴールド)の半分がなくなっちゃった……もっと良いクエストできるように頑張らないとな。お、ここが服屋みたいだね」



 横に広いこの建物が服屋のようだ。


 服屋に入ると、男性用の服や女性用の服の置き場が左右で分かれているようで、俺は男性用の服がある方へ向かった。



「入り口近くは大人サイズの服ばかりだな、あっちに子供向けがあるじゃん。ん、冒険者用?」



 子供サイズの服が置いてある所まで向かうと、その奥には冒険者用と書かれた看板が天井から吊り下げられていた。


 見て回ると、鎧や動きやすいけど急所になる部分は厚く作られている服など様々あり、なにより冒険者用の服にはGP(ギルドポイント)が使えると書いてある。



GP(ギルドポイント)で払えるのは良いね、それで、俺に合うサイズは……あった」



 俺は並べられた半ズボンを手に取り鏡の前に立ってどんな感じになるのか見ていた。穴が開いてしまったズボンを半ズボンに変えただけのデザインなので、違和感はなかった。


 試着室に入り、着心地を確認する。少しぶかぶかだけど気にならない程度だったので買うことに決めた。



「今は1着だけでいいかな」



 早速このズボンを受付に持っていって会計を済ませる。俺は店員にギルドカードを見せ、そこから1000GP(ギルドポイント)を払った。サイズ合わせもしてくれるようで、少しぶかぶかだったのがピッタリ俺の身体に合うようになり、激しい動きをしても勝手に脱げないようになった。


 買ったズボンをサンダーガードの服の上から装備して店を出た。



「半ズボン1着で1000GP(ギルドポイント)か……今日は出費が多いな。あ、この匂いは雨の……急いで建物に隠れないと!」



 雨の匂いを感じて、出たばかりの服屋に戻る。空からゴロゴロっと聞こえると雨が降り始める。しかも今度は太陽が出たままの雨のようだ。



「今度は天気雨か、本当に今日の天気はおかしいな」



 服屋で少し雨宿りしていると雨が止む。外に出て空を見上げると虹ができていた。



「また降り始める前に急いでギルドに向かうぞ」



 俺はギルドに向かって走り出した。






 ■■






 ギルドに着くと思ったより冒険者がいた、ほとんどの冒険者は肩を濡らしているようで、急な雨に困っているようだ。


 掲示板の前に行くといつもよりクエストの貼られている数が多い。理由はなんとなく分かる、この天気の変化を気にしてクエストを受けるか悩んでいる冒険者が多いようだ。



「あれ? シンじゃないか久しぶり!」


「シンと会うのは鉱石調達以来か?」


「リク、久しぶり! それにソラも」



 クエストを探していると、肩を雨で濡らしたリクとソラが声をかけてくれた。掲示板から離れた位置に移動して俺たちは談笑を始める。



「カイトはいないんだね?」


「あー、カイトは俺らのレインコートを取りに行っている」


「カイトの言う通りレインコートを着てくれば良かったと後悔しているぜ」


「何かあったの?」


「カイトは雨が降るとか言って俺らにレインコートを着るように勧めていたんだが、リクは『晴れているし雨なんて降らない』って言ってそれを無視した結果」



 ソラはリクの肩を叩き濡れていることをアピールする。



「ちょっと待て、ソラもカイトの言うこと聞かなかっただろ! 俺だけが聞かなかったみたいに言うなよぉ」


「チッ」


「おいソラ、舌打ちが聞こえたぞ」


「ってなわけだシン、俺らはカイトの言うことを聞かなかったから濡れたって話しさ」


「そういうことなんだね」


「俺のことは無視か!」



 話しが一区切りすると、ギルドの扉が開く。そこには2着のレインコートを持ったカイトが立っていた。カイトがこちらを見ると向かってくる。



「リク、ソラ、持ってきたよ」


「ありがとう!」


「助かる」



 カイトはリクとソラの肩に手を回して2人を捕まえる。



「言うことそれだけ?」



 2人の耳元で静かだけど怒りが込められた声で聞いていた。



「ごめんなさいぃ、レインコートありがとうございましたぁ!」


「悪かった、今度から忠告ちゃんと聞くから許してくれぇ!」


「いいよ、怒ってないから。ちょっとからかっただけだって」



 カイトは笑って2人を離すと、今度は俺に話しかけてくる。



「シンと話すのは1週間ぶりくらいかな?」


「そうだね」


「ここで会ったんだから、俺たちと一緒にクエストに行こうよ。(ほし)3のクエストになるからシンには難しいかもしれないけど、やる?」



 俺はしばらく考えた。ポーション製作は別として、鉱石調達みたいな難易度のクエストが来ることを考えると尻込みしてしまう。



「ちゃんとリクとソラが守ってくれるから、心配しなくて良いよ。ね、2人とも」


「しっかりシンのことを守ります」


「今回だけだぞ」


「だってよシン、どうする?」


「じゃあ一緒にやろうかな」


「よし決まりだね、クエスト探しに行こうか」



 こうして俺はリクとソラとカイトの4人でクエストに行くことになりそうだ。

天気が変わりやすい1日である。


宿を更新をして1週間分の料金を払った。


新しいズボンを買った、デザインは同じだが半ズボンタイプだ。


俺とリクとソラとカイトの4人でクエストに行くみたいだ、どんなクエストになるのだろう?

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