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11話 リク卒業!(別れ)

 朝の鍛錬をして授業を終えた昼、食堂でユカリも加えたいつものメンバーと食事をしていると、こちらに近づいて来る人がいる。誰なのかみんなでそちらを向くと、嬉しそうな表情をしているランド先生だった。


「リクくん、君に良い知らせがあります」

「良い知らせ、何だろう?」


 首を傾げて何かしたか思い出そうとするも、思い当たる節が無い。


「リクくんはここを卒業して明日から冒険者になることが決まりました」

「……俺が明日から冒険者!?どうして急に!」


 イスを倒して、凄い勢いで立ち上がって驚くリク。俺たちもリクが冒険者になれると聞いて驚いた。


「昨日テストをやりましたよね、あれで高得点を取れたので、私たちはリクくんが冒険者になっても大丈夫と判断しました」

「おっしゃぁ!これもシンのおかげだな」


 冒険者になれると決まってとても嬉しそうだ。


「リクおめでとう!」「……おめでとう」「リクくんおめでとう!」「おめでとう!リクくん」


「うぅぅ……みんなぁ!ありがとうぅ!」


 俺たちが祝福するとリクは涙を流しながら喜んでいた。


「私はこれで失礼しますね」


 そう言ってランド先生は食堂から離れていった。しばらくしてからリクは落ち着きを取り戻した。


「俺がここにいられるのも今日までか……冒険者になったら宿は自分で見つけなくちゃいけない。みんなと一緒の部屋で寝られるのも今日で終わりだ」


 喜びから一転、今度は寂しそうな顔をする。まだ会って一週間もしないうちに分かれるのだ。これからどんどん仲を深められる時期の急な別れ、寂しいに決まってる。


「なあリク、俺と戦ってくれないか?」

「俺がシンと戦う?」


 突然戦ってくれなんて言うものだから困惑している。


「ここに来たとき全然身体動かなかっただろ。でもここで鍛錬して鍛えたことが、冒険者のリクにどこまで通用するか知りたいし、リクとの思い出になればいいかなって」


 リクは考え込むが、俺と戦うことを選んでくれた。


 ――


 校庭に着いた俺たちは早速戦闘準備をする。俺が使う武器は剣でリクは斧だ、お互い木製である。10メートル程離れて待機する。みんなも応援してくれている。


「ルールは、まいったと言うか倒れたら負けにしよう」

「わかった。もう始めていいのか?」

「いいよ、来いリク!」

「おりゃぁ!」


 リクが斧を大きく振りかぶって迫ってくる、俺は横に移動して回避する。地面に刺さった斧を引き抜く間に、距離をとり体制を立て直す。その後もリクは俺目掛けて斧を振るう。


「避けてるだけじゃ俺には勝てないぜ!」


 避けるのが精一杯で反撃が難しい。避け方を変えなきゃ攻撃できない。そこで俺は横に避けるのではなく前に避けることを思いつく。リクの大振りは上から下に向かっての攻撃、身体一つ分移動させれば十分に避けられる。


「そこだ!」

「なっ!」


 斜め前に向かって避ける。予想もしない避け方をされたリクは体勢を立て直すのに時間がかかっていた。


(背中を向けている、今がチャンス!)


 背中に全力で剣を叩きつける。リクの身体が少しだけ動く。


「いっ……そんな威力じゃまだ俺は倒れないぞ、そりゃぁ!」


 反応は遅れたが反撃してきた。急いで攻撃しようと振りかぶるのではなく横に薙ぎ払った。体勢が悪いのか、斧の軌道は俺から大きく外れていた。痛みは感じたはずだけど、あの痛がり方では大したダメージは与えられていないだろう。


(たまたま当たらなかっただけで運が良かった。それよりも……)


 問題は俺の方だ、威力が低くてまともにダメージが入っていない。今はリクの攻撃を避けられているが、体力はリクの方が圧倒的に上、いずれ俺の体力切れで攻撃が当たるようになる。


(俺はスキルを習得してないから打開策が無い、今使えるのはこの剣の攻撃だけ……本当に剣だけか?)


「縦じゃなかなか当てられないな」


 振りかぶって当てるのは難しいと判断したリクは、先ほどとっさに使った薙ぎ払いをしてくる。


(くそっ……これじゃ背中に回り込めない!)


 薙ぎ払われる攻撃をされることで、前に向かって避けると攻撃が当たるようになってしまった。俺は横に避けるが……


「うわっ!」


 避けきれていなかったため攻撃が腕に当たってしまう。


(攻撃が当たった瞬間痛かったが、今はそれほど痛みを感じない。どういうことだ?)


 俺は不思議に思ったが今はリクに集中する。


 ―


「シンくんの女神の加護が無くなりましたね」

「ランド先生いつの間に見に来たんですか!」

「シンくんがリクくんに攻撃を当てた辺りからですね」


 シンとリクの戦いを観戦していたらランド先生が急に現れた。アオが驚いて話しかける。


「加護が切れたんじゃ、シンくんに勝ち目がないですわ。早く終わらせないと」

「……そうだな、早めに降参する方が安全だ」


 ユカリもハクも、シンのことが心配になっていた。


「リクくんの薙ぎ払いは威力も低くて、完全には当たってないのに加護が消える。シンくんの加護は相当弱いみたいですね。ダメージが貫通して身体に痛みが残ってるようです」


 ランド先生は冷静に分析する。


 ―


(まだ試してないことがある、魔力を流しての攻撃……ただ俺は武器に魔力を流せるほど扱えていない、でもそれに賭けるしか勝ち目がない)


 意を決してリクに走って向かう、リクは当然薙ぎ払いをする。


「避けられた!」


 リクの薙ぎ払いに対してシンはしゃがむことで回避に成功する。剣に魔力を流して下から上に向かって切り上げる。


(これが通れば!)

















 倒れたのはシンの方だった。


「倒れたってことは俺の勝ちだな!」

「ははっ……いけると思ったんだけどな」


 リクは倒れたシンにそう言い肩を貸す。シンは悔しそうにしながら肩を借りた。


「良い戦いでした。シンくんが倒れたのは魔力が外に漏れすぎたことによるものですね、さあ2人ともこのポーションを飲みなさい」


 ランド先生は2人を褒めてポーションを渡した。ポーションを飲むとさっきまでの痛みが無くなった。


「シンくんは加護が切れてたんだから危なかったのよ、無事で良かったわ」

「心配かけたね」


 ユカリに言われて、俺が危ないことをしていると分かった。


(思ったより痛みが残らなかったのも女神の加護の力なのか。俺がいた世界じゃ考えられないな)


「リクくんは明日から冒険者ですから、今日はこの辺で終わりにして、明日からの生活に備えてください」

「分かったよ先生」


 素直に言うことを聞いて今日は終わった。


 ――

 次の日の朝、学校の正門前でリクを見送る。集まったのは俺たちとランド先生だ。


「みんなと過ごせた日々楽しかったよ。冒険者になったら俺と一緒にクエスト行こうぜ!またな」


 リクはそう言い俺たちに別れを告げた。ただこれは永遠の別れじゃない、冒険者になるまでの間だけの別れだ。


「またねリク!」「……またな」「リクくんまたね!」「またねリクくん」


 みんなで手を振りリクの姿が見えなくなるまで見送った。


「お別れは済みましたね、早く会いに行くためこれからどんどん鍛錬しましょう」

「「「はい」」」


(すぐに冒険者になってまた会おうなリク……)


 俺たちは朝の鍛錬に向かった。

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