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109話 ☆2『馬車の護衛』①(物資)

 目を覚ますと光が窓から差し込んでくる、少し熱くなってきたと感じるが今日も良い天気のようだ。装備を整え朝食を取り、ギルドへ向かった。


 その道中、アオとコカが手を繋いで歩いている所を見かけた。アオは少し頬を赤くさせているが、コカは無表情だった。


 その後ろに普段着のザイゲンとイラミがいて、ザイゲンは呆れた表情をしながら頬を指で搔き、イラミは手で口元を隠しているが、ニヤニヤとした表情でアオとコカを見ていることが分かる。


 俺が4人の横を通ってもザイゲンしか俺と目が合わず、他の3人は俺に気付いてないようだった。目が合ったザイゲンも俺に苦笑いするだけで声をかけることはなかった。


 そんな4人はギルドとは違う方向に歩いて行って見えなくなった。


 俺はギルドへ向かう途中だったことを思い出し、ギルドへ歩き始めた。






 ギルドに着いて、掲示板でクエストを探そうとすると「シンさーん!」と受付の方か声が聞こえてくる。


 そちらを向くと、ハンナさんが手を振って俺を呼んでいるようだった。



「ハンナさん、どうしたんですか?」


「実はギルドの方からシンさんたちにやってもらいたいクエストが出ていまして、ぜひクエストを引き受けてもらいたいのです」


「……どんなクエストなんですか?」


「こちらのクエストです」



 ハンナさんはクエスト内容が書かれた紙を見せてくれた。


 ――


 (ほし)2『馬車の護衛』


 クリア条件:無事に護衛する


 報酬金:500(ゴールド) 2000GP(ギルドポイント)


 参加条件:ギルドが指名した冒険者のみ


 ~依頼内容~


 アルンの街とキッタ村の間にある魔王軍に対する防衛拠点に物資を運ぶための馬車を送る。冒険者にはその道中の護衛をしてもらう。


 ――


「なるほど、俺は魔王軍が動き出していることを知っている1人だからこのクエストをさせたいのですね。となると、他にこのクエストを受けるのは……」


「アオさんにハクさんにユカリさんですね。みなさん受けてくれると良いですが……あ! ハクさんとユカリさんが来たみたいです。呼んできますね」



 ハンナさんはハクとユカリを呼んで2人ともすぐにこちらに来た。



「ユカリ元気になったんだね!」


「えぇ、もうすっかり立ち直りましたわ」


「……シンだけが見舞いに来ないことに機嫌が悪くなっていたがな」


「それは言わなくていいことですわ!」



 ハクがボソッと言ったことにユカリが頬を膨らませて怒っていた。



「あはは……そういえばユカリのお見舞いに行ってなかったね」


「シンくんは私たちの部屋から離れた所に部屋を借りているので仕方ないですわ」


「ごめんね」



 仕方ないとユカリは言ってくれているが、俺はお見舞いに行かなかったことは事実なので謝った。それを笑ってまた許してくれるユカリを見て安心する。


 安心したのは許してもらったこともあるが、俺たちが次々にやられて、最後に魔王幹部に襲われて寝込んでいたのに、ユカリには変わった様子もなく、いつも通りに会話が出来ていることに安心していた。



「あのぉ、そろそろよろしいでしょうか?」



 ハンナさんにそう言われて、気持ちを切り替える。


 2人はハンナさんの方に向かうと俺と同じように今回のクエストについて説明を聞いた。2人はすぐにクエストを受けることを決めたので、俺もクエストに参加することを決める。



「それではクエストを受注します。こちらの準備が整うまでお待ちください。あとはアオさんが来るのを待つだけですね」


「あれ? アオはギルドに来る途中にコカさんたちと一緒にいる所を見ましたよ」


「私もアオ君が出かける所を見ましたわ」


「……そういえば俺もアオが出かける所を見たな」



 俺とユカリとハクがアオについて話していると、ハンナさんはビックリしたような表情をしていた。



「え!? ということは、今日はアオさんギルドに来なさそうですね……仕方ありません、ギルドには3人だけと伝えておきます」


「あの、アオもいないと何か問題があるクエストなんですか?」


「はい、危険が伴う場所に馬車を送るので、護衛する冒険者1人に付き1台の馬車という決まりがあります。ですので、アオさんが参加できないと1台分送れる物資が少なくなってしまいます……」


「そうなんですね」


「上位冒険者なら1人で数台の護衛をさせることが出来るのですが……」


「だったら上位冒険者にクエストを……あぁ、そうすると魔王軍の動きを調査する上位冒険者が減ることになるのか」



 少しでも前線に戦力を残しておきたいギルドにとっては、こんなことに上位冒険者を使いたくない気持ちが分かる。



「今回ばかりは仕方がないですね。それにもしかしたらアオさんがクエストを受けてくれる保証はありませんでしたから。シンさん、ハクさん、ユカリさん、どうかよろしくお願いします!」


「「「はい!」」」



 俺らが元気よく返事をするとギルドの扉が開いてギルド職員が入ってきて、受付の所まで来る。



「馬車の準備が出来ました、護衛の冒険者をお願いします」


「護衛はそこの3人です」



 ハンナさんは俺たちの方に手を向けギルド職員に教える。ギルド職員は俺らを見ると背筋を伸ばして元気よく答えた。



「今日はよろしくお願いします、みなさん馬車の方へ移動をお願いします」



 そう言うとギルドから出て行ってしまった。俺たちもそれに急いでついて行く。



「みなさん、クエスト頑張ってくださいね」



 ハンナさんの声援に「頑張ります」と答えて、俺たちもギルドから出て行った。






 ■






 ギルド職員は時々振り返りながら街の外に向かって歩いている。俺が馬車はどこかと聞くと「街の外で待機してもらっています」と教えてもらえるが、クエストに関する詳しい話は「この場ではお話しできません」と返されてしまった。


 仕方なく、街の外に出るまでは黙ってギルド職員について行くことにした。






 街の外に出ると3台の馬車が待機していた。



「みなさんには馬車に乗って何かあった時だけ出て来てもらえれば大丈夫です。私たちギルド職員は魔物が少ない道を進んで行くつもりですが、もし魔物が現れて避けられない事態になったときによろしくお願いします」


「じゃあもしかして、ただ馬車に乗っているだけで報酬もらえたりすることもあるのですか?」


「そうなることもあります。何も無いことが一番良い結果なので、冒険者のみなさんが出てくることがないことを願っています。それではそろそろ出発をするので乗り込んでください」



 俺とハクとユカリは、別々の馬車に乗りこんだ。全員が乗ったことを確認すると馬車が動き出した。


 俺が乗っている馬車が先頭で、その後ろにハクが乗っている馬車、その後ろにユカリが乗っている馬車と、1列になるように進んで行った。


 このまま無事に物資が運べると良いなと思った。

アオはコカたちと一緒にどこかへ行ってしまった。


俺とハクとユカリで魔王軍に対する防衛拠点に物資を運ぶための馬車の護衛をする。


俺たちはアルンの街とキッタ村の間に位置する防衛拠点に何事もなく物資を運べるのだろうか?

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