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107話 ☆3『ポーション製作』④(濃縮)

 魔法薬製作室に戻ると歓声が聞こえてくる、濃縮器の容器越しに様子を見てみると、アオにコカが抱き着いていて、コカの大きい胸がアオの顔を埋めているのが見えた。


 アオは手や足をバタバタとさせてもがいている。



「っっっ!?」



 耳を真っ赤にして恥ずかしがっているアオが何か言っているようだが、コカには何も伝わっていない。


 その様子を見ていたポーション製作に参加していた冒険者たちが険しい顔つきでアオとコカを見ていた。



「可愛い2人があんなに身体を寄せているなんて、最高じゃないか!」


「あの青髪の子は男らしいぞ?」


「なんだと!? 一本お得じゃないか!」



 俺には冒険者たちが何を言っているか理解できなかったが、そんな冒険者たちから目を逸らして、濃縮器を自分の机にまで運んだ。


 俺と一緒にこの場を離れていたサイエンが、ティストに状況を確認する。



「この騒ぎはなんなんだよ」


「あぁ、さっきそこの青い彼がポーションを完成させたんだ、それを喜んでいると彼女が抱き着いて褒めていてね。これが彼の作ったポーションだ」



 ティストから渡されたアオの作ったポーションは、売られているポーションと同じように綺麗な青色をしていた。



「……確かにこれはポーションだね。あの短時間でもう完成させたのか…………そこの胸の大きい君、彼と話したいから離してほしいんだよ」


「分かった……」


「ぷはぁ……助かった……」



 アオは机に突っ伏して呼吸を荒くさせていた。そこにサイエンが近づき話しかける。



「疲れているだろうけど聞かせてもらうんだよ。このポーションはどうやって作ったのかな?」


「それは、魔水2で薬草エキス8にして作りました」


「なるほど、じゃあ私がいなくなった後すぐに完成した感じだね。それじゃあもう一度同じポーションを作って欲しいんだよ」


「やってみます」



 アオは呼吸を整えると、魔水と薬草エキスを2:8にして混ぜ合わせた。すると、青かった薬草エキスがどんどん明るい青に色が変わって、見本として用意されたポーションと同じような色に落ち着いた。



「確かにポーションになっているね。薬草エキスを少し貰うよ」



 サイエンはアオが作った薬草エキスを別の容器に少しだけ移すと、明かりを当ててみたり、容器を左右に振って混ぜたりしていた。



「薬草エキスの濃度は普通だね、これは凄い。君、名前は?」


「あ……アオです」


「そうかアオ君か、今後アオ君には私たちから特別にクエストを出すことがあるだろうから、その時はよろしく頼むんだよ、それと……」



 そうサイエンが言ったあと、アオの耳元で何かを伝えている。俺らには全く聞こえなかったが、アオが驚いた表情で「え! 本当ですか!?」と嬉しそうに聞き返しているので良い情報を聞かされているのだろう。


 俺はアオの近くに向かい、 小さくささやく声でアオに聞いてみることにした。



「アオ、サイエンさんに何て言われたんだ?」


「いくらシンくんでも教えられないかなー」


「じゃあ私になら教えてくれる?……」


「はわぁ!」



 教えてくれないアオにコカが後ろから抱き着いて、胸をアオの頭に乗せている。アオは顔を赤くして奇声を上げていた。



「ねぇ……教えて……」


「分かりましたから胸を押し付けないでぇ!」



 その後アオは解放されると、コカにだけ聞こえる声で話した。コカはその内容を聞いて、申し訳なくなったのか「ごめんなさい……」と謝っていた。俺はこれ以上聞くのは良くないと判断して自分の机に戻った。



「全員手が止まっているんだよ、これはクエストだから真面目にやって欲しいんだよ。後ろの君たちも前屈みになってないでポーション作るんだよ」


「「「はい」」」



 冒険者たちは前屈みになりながらも魔水や薬草エキスを混ぜ合わせていく。ポーションについて独り言を言っているのかと思って聞き耳を立てていると。



「今までで一番良いクエストだった」


「報酬以上の価値があった」


「ありがとう…………」



 などと聞こえてくる。



「シン君? そろそろポーション作りを再開するんだよ、濃縮器の使い方を説明するから集中して聞くんだよ」


「はい!」



 俺は気持ちを切り替えてサイエンの話しに意識を集中する。






「濃縮器は濃度を変化させるために使う魔道具だよ。シン君の魔水を借りるよ」



 サイエンは片方の容器に俺の魔水を入れ蓋を閉めて、魔力の込められた魔法石を濃縮器入れスイッチを押すと、濃縮器は動き出し、容器に入った魔水はポコポコ気泡が出て、管を伝って真ん中の容器にポタポタと少しずつ溜まる。


 サイエンがスイッチを切ると濃縮器の動きは止まり蓋を外していく。



「これが濃縮されたシン君の魔水、こっちがその残りの魔水。違いは分かるかい? 量の話しじゃないんだよ」



 俺は2つの容器に入っている魔水を見比べる。


 真ん中の容器にポタポタと溜まっていた魔水は少量だったが、透明なのに濃いと感じさせるものになっていた。もう片方の容器に入っていた魔水は、ほぼ水になるほどに薄くなっていた。



「違いが分かったようだね、シン君の魔水に込められていた魔力を濃縮したことによって量は減ってしまったが、彼等より濃度の高い魔水になっているんだよ。ほら、今度はシン君がやってみるんだよ」



 サイエンは薄くなった方の魔水を捨て空にして、その空にした容器を俺に渡した。


 俺が受け取った容器に新たな魔水を入れている間に、サイエンは濃縮している魔水が入った容器を濃縮器に付けていてくれた。


 俺は持っている容器に蓋をして、濃縮器のスイッチを押す。



「分かるかい? どんどん濃度の高い魔水が作られるたびに、こちらの魔水は薄くなっていく。ここだと思うタイミングでスイッチを切るんだ。できるね?」


「やってみます」



 魔水はポコポコ気泡が出てどんどん薄くなっていく、濃縮された魔水がポタポタと垂れる音が遅くなったと判断したときにスイッチを切った。



「……どうでしょうか」


「初めてにしては上手くいっていると思うんだよ。さあ、今作った魔水で十分な量になったはずだよ。薬草エキスと混ぜてみようか」



 俺は濃縮された魔水と薬草エキスを5:5で混ぜ合わせた。そうすると色が薄くなっていったが、まだまだ濃い青色をしている。



「……惜しいね、魔水の量が足りなかったみたいだ。また作り直しだよ」


「…………はい」



 ここまで準備してかなりの魔水を消費したのに作り直しとなってがっかりしていたが、まだアオ以外でポーションを完成させている冒険者はいない。


 俺はここにいる他の冒険者より早くポーションを完成させるために次を作るのであった。

アオが最初にポーションを完成させた。


濃縮器を使って魔水の濃度を上げた。


濃縮された魔水と薬草エキスを混ぜたが失敗した。



魔道具の紹介


・濃縮器


3つの容器が付いていて、真ん中に1つ、その隣に真ん中にある容器に管が繋がった2つの容器が付いている。


濃縮したい物を入れて、濃縮された物が真ん中に溜まっていき、残った物は薄くなる。

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