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105話 ☆3『ポーション製作』②(偏り)

「次は、魔力の込められた魔法石を用意する。私はあまり魔力がないので、すでに魔力が込められた魔法石を使わせてもらうよ。薬草が入っていた箱の中に空の魔法石が入っているだろう? 君たちはその空の魔法石に魔力を流してもらうよ」



 俺たちは箱を開けると、薬草の他に上向きに取っ手の付いた鍋や綺麗な布に、透明な容器や空のポーション容器が複数入っていた。箱の隅の方に目を向けると、袋詰めされた魔法石があり袋ごと取り出す。


 アオもコカも他の冒険者も魔法石を机に出し魔力を流して光らせていく。



(魔法石に魔力を込めるのは久しぶりだな。あの時は光らせるのに何日もかかったなぁ……)



 冒険者学校に通っていた頃を思い出しながら袋に入った魔法石を全て机に出し、その中から小さめの魔法石を1つ手に取り魔力を流した。


 魔法石は俺の手の中で青白く光り出し、ちゃんと魔力を込めることに成功したようだ。そして俺の魔力はまだまだ余っている。


 俺は次々と魔法石を光らせていくと、袋に入っていた魔法石の半分も光らせる前に眩暈で身体がふらついた。机で身体を支えることが出来たのでなんとか倒れずにすんだ。



「シンくん! 大丈夫!?」



 ふらついたときに大きな音を立てたからか、アオが俺のそばまで来て心配そうに声をかけてくる。他の冒険者も俺のことを見て困惑しているようだ。



「うーん、君は精神疲労だね、他の冒険者たちが魔法石に魔力を込め終わるまではイスにでも座って休んでいると良いんだよ」


「はい、すいません。アオ、俺は大丈夫だから安心して」


「うん、気を付けてね」



 アオはそう言って自分の机に戻った。


 俺はサイエンから休むように指示されたので、机の下にしまわれたイスを出し、みんなが魔法石に魔力を込めているのを眺めていた。






「全員今ある魔法石に魔力を込められたようだね。じゃあその魔法石を水で綺麗に洗うんだよ。洗ったらこの上向きの取っ手が付いた鍋に入れていく。あぁ、魔力が込められた魔法石だけを入れるんだよ。あと、火を付けるのに魔法石を使うから残しておくんだよ」



 サイエンは俺の方を見ながら言ってきたので、俺が間違えて魔力の込められていない魔法石を入れないように注意してくれているのだろう。


 釜に丸ごと入れることが出来るほど小さい鍋を箱から出して、水で洗った魔法石を入れていく。


 俺が鍋に魔法石を入れていると、アオが困ったようにサイエンに質問していた。



「サイエンさん、鍋に入りきらない魔法石はどうすればいいですか?」


「入りきらない魔法石は机に布を置いて、その上に乗せるんだよ。それは火を付けるのに使うことになるからね」


「分かりました、サイエンさんありがとうございます」



 アオはサイエンにお礼を言うと、箱から布を取り出し机に敷いて、そこに洗った魔法石を置いて行った。


 そのやり取りを見ていた俺やコカや他の冒険者も、アオの真似をして布に魔法石を置いていく。



「鍋に魔法石を入れられたようだね。それじゃあ布の上に置いた魔法石を火炎コンロに入れて火を付けるんだよ。石台の側面にも穴があるよね? そこから火炎コンロに魔法石を置けるから、上から入れなくて大丈夫だよ」


「石台? 火炎コンロ? あぁ、石台はこの四角い石に穴が開けられたやつで、火炎コンロは釜の下に敷いた魔道具のことだな」



 俺は石台の側面の穴から、火炎コンロに魔法石を置いてボタンを押すと火が付いて、水の入った釜を温め始めた。


 水が温まり気泡が出てお湯になり始めた頃、サイエンが次の指示を出す。



「そろそろ煮えてきたね、それじゃあ魔法石を入れた鍋を釜の中に入れて、お湯を魔法石に浸すんだよ。魔法石は釜に落とさないように気をつけるんだよ」



 釜はぐつぐつと沸騰して、熱い湯気が顔に当たりながらも魔法石を眺めていると、魔法石を入れた鍋から水とは違う液体が見えてきた。



「何だこの透明な液体は? 水と同じ色なのに水じゃないって分かるぞ」


「それは魔水と呼ばれるものだよ。魔力の込められた魔法石を煮ることで水と魔力が混ざって出来上がるものだよ。さぁ、魔水が出始めたから、魔法石が零れ落ちないように鍋を振るんだよ。魔水を鍋から釜に移動させて、釜の水を鍋に入れるんだ」


「凄い! 油みたいに表面に魔水が浮いてくる」


「そのまま魔法石から魔力が無くなるまで魔水を作るんだよ」



 俺たちは釜の中で何度も鍋を振り魔水を作っていった。そして、釜に入っていた水の表面は魔水で満たされていて、今はどれくらい魔水が釜に入っているか分からなくなっていた。


 鍋を引き上げると、魔法石は暗い色に変わっていたので、もうほとんど魔力は残っていないのだろう。



「1回目の魔水製作は順調みたいだね。一旦鍋を釜から出して、空になった魔法石を布の上に置こうか」



 俺たちは布の上に空になった魔法石を置いていく。



「次は、魔水を取り出すんだよ。箱から透明の容器を出して、そこに釜の上澄みにある魔水を鍋で取り出すんだよ。水が入らないように気を付けるんだよ」



 鍋で魔水だけを掬い取り、透明の容器に入れていく。釜に残ったのは鍋で掬い取るには少なすぎて難しいほどの量の魔水が浮いていた。



「火炎コンロの火が消えているね、魔法石を追加して火を付けるんだよ。後はさっきやったことを魔力の込められた魔法石が無くなるまで繰り返すんだよ……おや? 君の魔水を見せてもらうよ」


「え? どうぞ」



 サイエンは急に俺の作った魔水を真剣な目で観察していた。そしてそれをティストの所へ持っていくと2人で何か話し込んでいる。もしかして、俺の魔水に何か問題があるのだろうか……


 そんな不安からか俺の心臓は鼓動を速めていた。


 サイエンとティストは話し終えたようで、ティストは部屋から出て行き、サイエンは俺の方に近づいてきた。



「君、名前は?」


「……シンです」


「そうか、シン君か。君がよく使う属性の魔法は何かな? 火属性かい? 水属性かい?」


「……俺はどの属性もまだ使えなくて、あっ、一応『パンプア』という星属性の魔法は使えます」


「星属性!? そんなバカな…………」



 星属性と伝えたらサイエンが驚いている。俺の作った魔素を色んな角度から眺め始める。



「ちょっと君たちの魔水も見せてもらうんだよ」



 サイエンはアオの所に行きアオの魔水を観察する。



「君の得意な属性は水属性かい?」


「はい、水属性です」



 慌てたようにアオはそう答えた。次にサイエンはコカの所に行き魔水を観察する。



「君の得意な属性は土属性かい?」


「うん……」



 この後も他に参加している冒険者の得意属性をサイエンは当てていった。全員の属性を確認し終わると、また俺の所に戻ってくる。



「シン君。ちょっとパンプアを使ってもらって良いかな?」


「サイエンさん、ごめんなさい。もう魔力がなくて……」


「大丈夫だよ、そろそろ来るから」


「サイエン、マジックポーション持ってきたぞ! あいたっ!」


「ティストありがとう。だが、壁にぶつかって持ってくるんじゃない。さぁシンくん、これを飲んで『パンプア』を使ってみてくれ」



 サイエンはマジックポーションの蓋を開け俺に渡してくる。俺はそれを両手で受け取ると、一度生唾を飲み、深呼吸をしてマジックポーションを一気に飲み干した。


 すると、身体から魔力が漲ってくる。



「いきます! 我が魔力を星に、流星が……」


「ちょっと待って。完全詠唱は使えるに入らないんだよ。省略詠唱で使ってほしいんだよ」


「分かりました…………『パンプア』!」



 頭上にはウッドォと戦うときに比べて、頭上に魔力が集まる。それをサイエンに纏わせた。



「おぉ……これは弱いがまさしく『パンプア』だよ。間違いなくシンくんは星属性の魔法を使っていることが分かった。だからこそ、余計に謎が深まったんだよ」



 サイエン俺の魔水が入った容器を、この部屋にいるみんなにも見えるように持ち上げてこう言った。






「何故この魔水には属性の偏りが見当たらないのかと……」





魔水を製作した。


そして俺の魔水に属性の偏りが見当たらないことで、サイエンが興味を示した。



素材の紹介


・魔水


魔力の込められた魔法石を煮ることで出来る透明な液体。

魔法石の種類や込められた魔力によって魔水の色が僅かに変化する。


魔素が込められた水も、魔水と似た成分である。


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