104話 ☆3『ポーション製作』①(青色)
目が覚め布団をたたみ、装備を整え朝食を済ませて、曇った天気の中ギルドへ向かった。
「今日は何のクエストをやろうかな? あれ、討伐系のクエスト少なくないか? というより1つもない……」
掲示板には1つも討伐系の貼り出されていなかった。これでは魔物を倒して強くなることが出来ない。仕方がないので、他のクエストも見て回る。
すると、珍しくその他の項目にクエストがたくさん貼り出されていた。
「こっちにクエストが集まっていたんだね。どれどれ……って、ほとんど同じクエストじゃん!」
貼り出されていたのは『ポーション製作』のクエストだ。それがたくさん掲示板に貼られている。これだけ数があるということは困っているのだろう。俺はクエストを1枚手に取って、受付のハンナさんの所に持って行った。
「ハンナさんおはようございます。このクエストお願いします」
「シンさんおはようございます。このクエストですね、分かりました。クエスト内容を確認します」
――
☆3『ポーション製作』
クリア条件:1本以上のポーションを作る
報酬金:0G 0GP
参加条件:☆1から☆3冒険者1人
~依頼内容~
【初心者歓迎】
ポーションを作ったことがない冒険者にも丁寧に教えます。
ポーションの数が足りなくなってきているので、たくさんのポーションを作って欲しい。
場所は、アルン国本部ギルド魔法薬製作室に10時から。
冒険者は9時50分までにギルドの1階にいるように。
ポーション1本につき50GP
――
「このような内容ですが、クエストを受けますか?」
「はい、受けます」
「それではクエストを受注します。クエスト開始が10時からですので、9時50分までギルドの1階にいてください」
「分かりました、時間になったらまた来ます!」
現在の時刻は8時30分を少し過ぎたところ、まだまだクエスト開始まで時間があるので、一旦宿屋に戻ることにした。
部屋に戻ると、魔法書を手に取り壁に寄り掛かった。
「さて、時間つぶしに昨日少しだけやった属性魔法の勉強でもしてみるか」
パラパラっと本をめくると『ファイア』『ウォーター』『サンダー』『アース』『ウィンド』の、火・水・雷・土・風属性の初級魔法の詠唱を読んで、ぶつぶつと唱える。
詠唱を覚えきれていないので、本を読みながらでも言葉に詰まってしまう。そうやっているうちに、時刻は9時30分になっていた。
俺は本を閉じて、ギルドに向かう。
ギルドに入ると下を向いたアオと、それをジッと見つめるコカが食堂のイスに座っていた。
「アオにコカさんおはよう、2人だけなんて珍しいね」
「あ……シンくんおはよう、さっきたまたま会ったんだよ。2人きりだったからずっと緊張しちゃって……シンくんが来てくれて助かったよ」
顔を赤くしているアオの心音がこちらにも聞こえてきそうなほどドキドキしていることが伝わった。
「そ……そうなんだね。コカさんはクエスト行かなくていいんですか?」
「クエストまでの暇つぶし……」
「へぇ、俺もクエストまでの暇つぶしをしていたんですよ、そろそろ始まるのでギルドに来たって感じです」
「あれ、もしかしてシンくんもコカさんも『ポーション製作』のクエスト受けているんですか?」
「うん……」
「そうだよ。アオもそのクエスト受けているんだね」
「僕も受けているよ。魔物と戦わなくていいし、みんなの傷を治せるポーションはいっぱいあった方が良いもんね。まぁGが報酬金に無いのは辛いけどね。食事やアイテムはGPで払えるけど、宿はGじゃないと払えないから……」
「確かに」
こうやって俺とアオが会話を広げて、それにコカが相槌をしていると、ハンナさんから俺たちを呼びに来た。どうやらいつの間にか9時50分になったようだ。
俺たち3人の他に、知らない冒険者数人が受付近くに集まった。ハンナさんの隣には、白衣を着た髭を生やした灰色のボサボサの髪の男が立っていた。
「えぇ、ハンナ君、ここにいる冒険者たちが『ポーション製作』クエストを受けたのかな?」
「はい、サイエンさん。クエスト受注した冒険者は全員ここにいます」
「分かった。では立ち話しも何ですから、私の後に付いてきてください」
俺たちはサイエンと呼ばれた男について行き、掲示板の横にある扉から奥へ進んで行った。
「ここが魔法薬製作室だよ、扉は開けたままにしておいてね、調合が失敗して何かあったときに逃げられなくなっちゃうから」
サイエンは部屋の鍵を開けると部屋に入っていった、俺たちもそれに続いて入っていく。
部屋はなかなかの広さで、等間隔で机が設置してあり、その隣に四角に加工された石が底に穴が開かない程度に中身がくり抜かれていた。しかし、側面の下側は10㎝くらいの高さの穴が開けられていた。
「えぇ、各自好きな机を選んで、あ……1人1つの机だよ」
俺とアオとコカは前の机を選んで、俺たち以外の冒険者たちは俺たちの後ろの机を選んだ。
「んじゃ、まずは自己紹介からだね。私は中央大陸アルン国本部ギルドの魔法薬研究長を務めるサイエンだよ。まずこのクエストを受けてくれたことに感謝する、ありがとう。君たちに作ってもらいたいのは、これと近しい性能のポーションだよ」
サイエンは自己紹介を淡々と終わらせると、早速ポーションの説明を始めた。
サイエンが手に持つポーションは薄い青色の液体が入ったビンだ。それを俺らの使っている机に1つ置いていく。
(今までなんとなくポーションを見ていたけど、色まで気にしたことなかったな……)
机に置かれたポーションを近くで見ながらそう思った。俺がポーションを見ていると出入り口付近からカラカラカラと転がるような音がどんどん大きく聞こえてくると、ガタッと物がぶつかる音がして止まった。
そこには白衣を着た黒髪のモヒカンの男が荷台を扉にぶつけているのが見えた。
「サイエン、薬草持ってきたぞ」
「ティスト、持ってきてくれることには感謝しているが、毎回荷台をぶつけないでほしいんだよ。あぁ、紹介しよう、彼は中央大陸アルン国本部ギルドの魔法薬副研究長を務めるティストだ」
「副研究長のティストです、どうも!」
ティストは、にっこり笑顔で歯をキラッとさせ、親指を立ててグッドサインを俺らに示した。
「久々に募集したのによくこんなに集まったな」
「私も驚いているんだよ」
「前回やった頃の冒険者たちは、みんな上位冒険者になったり、冒険者を辞めてしまったりと、参加資格を全員無くしてしまったもんな。おかげで呼び出すことも出来なくなった」
「下位クエストで彼らを呼んでいてはドラコニスさんに怒られてしまうからね。上薬草があればスーパーポーションやウルトラポーション製作で上位クエストとして出せるのだが……おっと、君たちには分からないことだったね、話しをポーションに戻そうか。ティストが持ってきた薬草が入った木箱を各自で1つ運ぶんだよ」
俺たちはティストから木箱を手渡しされていく。机に置いたら、今度は魔法石を使うことで火を出すことが出来る魔道具を、四角い石のくり抜かれた場所に置く。
その上に釜を乗せて、釜に水を半分入れていった。
「下準備は終わったね、次は…………」
こうして俺たちのポーション製作が始まるのであった。
『ポーション製作』のクエストがたくさん貼り出されていたので、それを受けることにした。
部屋で時間つぶしに火・水・雷・土・風属性の初級魔法の詠唱を少し勉強してギルドに向かうと、アオとコカも同じクエストを受けていることが分かった。
魔法薬研究長のサイエンに魔法薬製作室に案内され、シンとアオとコカと他数人の冒険者が作業スペースを与えられた。
途中で魔法薬副研究長のティストが薬草などの素材を運んできて、俺たちはポーション製作のための下準備を始めるのであった。
新キャラの紹介
・サイエン
白衣を着た髭を生やした灰色のボサボサの髪の男で、中央大陸アルン国本部ギルドの魔法薬研究長を務めている。
・ティスト
白衣を着た黒髪のモヒカンの男で、中央大陸アルン国本部ギルドの魔法薬副研究長を務めている。




