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102話 ☆2『ウッドォ討伐』②(弱点)

 草原を抜けて森に着いた。火の羽をいつでも取り出せるように持ち物を調節して森の中に入ろうとする。だけどなかなか足が震えて思うように動いてくれなかった。息まで荒くなってくる。



「ブランチにやられたことが相当効いているな、森に入ろうとしただけなのにこんな状態だ」



 俺は何度も深呼吸をして落ち着かせていく。徐々に荒かった息も穏やかになり、震える足も収まって来た。



「魔王幹部クラスの強い魔物なんて早々現れることなんてないんだ、落ち着いてやれば大丈夫。行くぞ!」


 俺は気合を入れて森の中へ入っていった。






 森の中ではスライムが木の実を食べていたり、すやすやと木陰で寝ていたりしている、こちらが攻撃をしない限り襲ってこない魔物だから、そこまで怖がることなくスライムの横を歩いて進んで行く。



「スライムは見かけるけどウッドォはなかなか見つけられないな。森の中で木を探すのは大変だ……ナーゲさんはすぐに見つけていたけど、どうやってあんなに早く見つけているんだろう。あっ、薬草だ」



 ウッドォを探していると木の根元付近に薬草が生えているのを見つけた。



「今は薬草調達のクエストをやってないから必要ないんだよなぁ。そういえば薬草調達で薬草の近くにウッドォがいたことがあったな」



 俺はそんな風に思い出してふと薬草周りにある木を警戒する。もしあの時と似た状況なら、この薬草の近くにウッドォが潜んでいるからだ。


 木の根が地面に埋まっている、枝に葉は生えている。ウッドォではない普通の木ばかりの証拠が揃っていく。ここにはウッドォがいないと思い始めたとき、木の根が地面に埋まっていなくて、葉も生えていない木を見つけた。



「やっと1体見つけた! 慎重にいかなきゃ。まずは自分の強化から」



 未だに木に擬態しているウッドォから離れて完全詠唱を始める。



「我が魔力を星に、流星が如く、天を切り開く、大いなる魔素を集い、不純なる魔を我に、我に適応し糧となる。ナンタ・ライダ・リカル・アイド・ケブン・バイタ……『パンプア』!」



 魔法は発動して頭上に魔力が集まる。それを自分の身体に纏わせるように指向性を持たせる。


 魔法に慣れたおかげか、それとも魔物を倒して強くなったからか、以前使った時よりも力が漲ってくる。



「これならいけそうだ!」



 剣を抜き、火の羽を袋から取り出す。


 ウッドォにゆっくりと近づいて行く、あと数歩前に出れば剣で届く距離まで近づいていた。これだけ近ければ外さないと確信して火の羽をウッドォに向けて叫んだ。



「『ファイア』!」



 火の羽は消え、目の前には火の球がウッドォに目掛けて飛んでいく。



「アァッ!」



 ウッドォは火に包まれて苦しんでいるようだ。火属性に弱いからかなりのダメージを受けているようだ。必死に他の木に身体を擦り付けたり、地面で転がって火を消そうとしている。


 その甲斐があって、ウッドォからは火が消えた。



「ア……アァ……」



 ウッドォの全身は焦げていて、見るからにボロボロである。俺に向かって枝を振って攻撃してくるが、途中で枝が燃え尽きていて俺に攻撃が届いていなかった。


 今度は噛みつきをしてこようとしたので俺は剣で押し返す。


『パンプア』で力が上がっているのと、ウッドォの身体がボロボロになっているおかげで簡単に切り崩すことができた。それでもまだウッドォは生きている



「あれだけダメージあるのにまだ生きているのか、なんて生命力だ!」



 噛みつきも出来ない、枝も燃え尽き攻撃手段を失ったウッドォは俺から逃げようとする。しかし、根の部分も限界に来たのか、逃げる途中で崩れ落ち地面に倒れ、俺が剣でトドメを刺す前に経験値が出てきて倒したことが分かった。



「凄く楽に勝てたぞ。弱点を突くとこんなに戦いやすいのか。次だ」



 こうして俺は次のウッドォを探していく。2体目も3体目も同じ方法で難なく倒していった。






 地面に根を埋めた葉のない木を見つけて火の羽を取り出す。



「あいつも葉は生えていないな……『ファイア』! あれ? 何も反応がない、まさか」



 火が消えると、そこにはウッドォではなく似た見た目をしているだけの木が燃えただけだった。



「しまった……葉だけ見ていて根の所は見逃していた。この木はしっかり根が地面に埋まっていたのに」



 残り1本となってしまった火の羽で2体のウッドォを倒さなければならなくなった。1体は火の羽を使わずに自力で倒さなくてはいけなくなった。



「次からこういうミスをしなければいいんだ。それに1体くらいは弱点を突かなくても倒せるようにならないと。幸いまだ1本の火の羽は残っているから、次のウッドォは道具に頼らないでやってみよう」



 道具なしで危なくなった時にいつでも火の羽を使う選択肢は残しておきたい、そのためには4体目のウッドォで道具を使わないことが大事だと思っている。


 仮に火の羽を使う事態になってもまだお昼前だ、街に帰ってまた火の羽を買ってここに戻るまで時間はある。そう考えるととても気が楽になって来た。


 しかし、身体は急に重く感じるようになった。いや、いつも通りの重さに変わったのだ。



「『パンプア』の効果が切れたか、でも、戦闘中に切れなくて良かったと思うべきだな。もう一度かけなおさないと」



 俺は完全詠唱で『パンプア』を唱え、再び身体に力を漲らせる。



「これで大丈夫。さて、ウッドォは何処かな? いた!」



 しっかり葉だけじゃなく、木の根も確認して見間違えないようにした。



「火の羽が使えないなら近づく必要はない」



 俺はウッドォから離れて手を突き出し、完全詠唱を始める。



「やっぱり『スマッシュ』も威力や魔力が安定してきている、このまま圧縮して威力をもっと高める」



『スマッシュ』はどんどん小さくなり元の大きさの半分ほどになった。俺はウッドォに狙いを定めて『スマッシュ』を飛ばした。


『スマッシュ』はウッドォの身体に直撃をして表面を削る。その程度のダメージは効いていないようにウッドォはこちらに向かって攻撃を仕掛けてくる。



 枝を鞭のように振った攻撃を剣で切り落とすことによって防ぐ。まだまだと言わんばかりにウッドォの攻撃は止まらない。



「くっ!」



 剣で捌ききれない量の手数で攻められ、顔や腕や足などに枝が当たり、ガリッとした痛みが襲ってくる。それらの痛みは加護によって消えるが、このままではいずれ加護を突破されると判断して、木を盾にしてウッドォの攻撃を緩くする。


 木の裏にいると左右から同時に枝が迫ってくる。俺はしゃがむことでギリギリ避けることができた。



「危ない、あれに捕まっていたら俺の負けだったな」



 俺が盾に使っていた木は、ウッドォの枝でぐるぐると巻き付かれていた。もしあそこに俺が捕まっていたと思うと冷や汗が出る。



「火属性攻撃を使わないだけでここまで倒しにくいのか、どうやって倒すかなぁ」



 そこで俺は危険な賭けを思いついた。


 ウッドォの攻撃をギリギリで避け、本体に直接ダメージを与える。失敗すれば俺は大ダメージを負いつつ捕まる危険がある。



「怖い、けど試してみたい」



 俺は勇気を出して今考えたことを実行する。


 まず『スマッシュ』を省略詠唱で飛ばす。これはウッドォの意識を逸らす目的で使っているので、ウッドォを狙わず、俺がいる方向から視線が遠くなるように飛ばした。



「アァ?」



 ウッドォの意識がこちらから飛んでいった『スマッシュ』に向いたところで突撃する。


 すぐにこちらに気が付いたウッドォが枝を振るうが、もうかなり近い距離まで来ていた。顔周りだけ剣で守りつつ、ダメージを受けながらウッドォの懐に潜りこんでいく。


 そして、剣を横に振って倒そうとしたが、剣はウッドォの身体に食い込む程度で致命傷にはならなかった。



「くっ、剣が抜けない!」



 ウッドォの身体に食い込んだ剣をいくら引っ張ろうとも抜くことが出来ないでいると、嚙みつきをしてきて俺の肩に鋭い痛みが走る。



「うっ、離せ!」



 蹴っても嚙む力は強くなるばかりで、引き剥がすことが出来なかった。



「これ以上は無理か……『ファイア』!」


「アァッ!」



 俺は袋から最後の火の羽を取り出し火の球を超至近距離でウッドォにぶつけた。


 ウッドォは燃え上がり口を緩めて噛む力が弱くなり、その隙に逃げ出した。ウッドォの近くにいた俺にも引火したが、身体を地面に擦り付けて火を消し、服が焦げる程度で済んだ。


 ウッドォの身体に刺さっていた剣も地面に落ちる。


 剣は火で熱くなっていたが、これくらいなら我慢できる熱さなのでそのまま強く握りしめ、まだ火を消せていないウッドォに攻撃をする。



「アァッ……ア……アァ……」



 ウッドォは俺の攻撃で動き回る体力がなくなったのか動かなくなり、火に包まれて経験値を出し燃え尽きた。






「はぁ……結局火の羽を使っちゃったよ。でも危なかった、もし火の羽が無かったら今の俺じゃあ脱出は出来なかったと思う」



 先ほどに戦いの反省をする。


 火の羽が無いと倒せないことが分かったので、俺はもう一度道具屋で火の羽を買いに街に戻るのだった。

森でウッドォの討伐をしていた俺は道具屋で買った火の羽を使い、火の羽と『パンプア』によるバフのおかげで楽に戦いをしていた。


そして、ウッドォと間違えて普通の木に火の羽を使ってしまい、ウッドォに使う羽が1本足りなくなってしまう。


そこで1本だけ残った火の羽を使わないでウッドォを倒すことが出来るか挑戦してみたが、なかなか倒すことが出来ずに、噛まれて身動きが取れなくなり、最後の火の羽を使って倒すことが出来た。


俺は火の羽を補充するために一旦街へ帰るのであった。

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