第9話 神様ポイント通販
ミリーという少女を見守るというお仕事から解放されて、8年の月日が過ぎていた。
この8年で『グリフィード大陸』の動乱も今日、終わりを迎えた。
北の帝国『ボルサード帝国』の皇帝が亡くなったのだ。
その後を継ぐ次期皇帝は、亡くなった皇帝の子供たち14人の中から決められるのだが、これが揉めに揉めている。
今まで、皇帝の命令で好き勝手していただけに帝国内は大混乱。
あちこちで反乱や独立の狼煙が上がり、次期皇帝の選定どころではない。
下手をすれば、自分の継ぐべき帝国すら危うい状態なのだ。
皇帝の子供たちは、それぞれ兵を率いて鎮圧に動いていた。
「皇帝が亡くなって、戦国時代が終わったか……」
「でもそれは、一時的なもの」
「だろうね、人の歴史は繰り返すからな~
でも、今問題なのは、こいつの存在だな……」
それは画面に映し出された一つの影。
その女性のお腹の中には、新たな騒動の種が宿っていた。
「クロエ、間違いないの?」
「間違いない、お腹の中で育ってる」
「一応、創造神に連絡入れておくか……」
それは、魔族の血を引く赤子だった。
封印された魔族の子供をどこで身ごもったのかは分からないが、時期的に見て『魔王』誕生までカウントダウンが始まったんだろうな……。
▽ ▽ ▽ ▽
創造神に連絡をすると、今は何も手を出すことができないと言われた。
確かに、何もしていないし『魔王』も出現してない。
それなのに、魔族だからと言って始末することはできないわけだ。
また『魔王』という存在も同様で、過去の歴史の中には大人しい平和的な『魔王』もいたようで、今回はどんな『魔王』が誕生するかは出現してみないと分からない。
だからと言って何もしないわけにはいかないからと、討伐もしくは封印の準備だけは始めるそうだ。
で、俺たちはそれを聞いて監視を創造神たちに引き継いでもらった。
「俺たちも『魔王』だけにかまっていられないからね」
「こっちの大陸が騒がしい」
創造神たちが『魔王』対策を始めた頃、『ボルサード帝国』の皇帝が決まった。
この皇帝が即位するまでかなりの時間がかかっている。
新しい皇帝は14人の子供の6番目の少女が継ぐことになった。
そうほとんどの先代皇帝の子供たちは、帝国内の内乱で死んでいったためだ。
生き残ったのは今回女皇帝となった少女と、末っ子の女の子の2人だけ。
あとの子供たちは、内乱と貴族たちの陰謀に巻き込まれて死んでいった。
「とりあえず、これで帝国が安定するかな……」
「たぶん」
▽ ▽ ▽ ▽
『魔王』はどうやってこの世に誕生するのか?
これは、クロエから魔王の存在を聞いた時からの疑問だった。
クロエの話では、約300年の周期で現れるらしいがどうやって現れるかが疑問だった。
最初から魔王なのか、それとも魔王になるのか……。
昨日、1人の人族の女性が魔族を生んだ。
だが、見た目は人族の女の子の赤ん坊だ。
『鑑定』のスキルでも、この女の子が魔族だとは分からないようだ。
だが、魔族だからと言ってとくに何かあるわけではない。
俺が見た限りでは、潜在魔力が高いだけのただの人族の女の子だった。
「……魔族といっても、即『魔王』という話にはならないんだね」
「『魔王』は魔族から生まれたり、なったりするものではない」
「となると、どこから『魔王』は出てくるのかね……」
俺の目の前の画面には、母親に抱かれた赤ん坊がスヤスヤと安心して眠っている。
その様子を見ていると、魔族とはと考えてしまうのだ。
「そういえばクロエ、魔族って封印されていたんだな」
「前の『魔王』が討伐された時、勇者たちによって封印された」
「……勇者たちのやさしさなんだろうな、封印したってことは」
「資料にも、魔族の絶滅を人々が願ったとある」
「う~ん、封印された魔族は今後どうなるのか……」
「おそらく彼女が封印を解いてしまう」
「自分と同じ種族だからな……そうなるかもね……」
とりあえず俺たちは、今後もこの赤ん坊に注目していくことになるだろう。
魔族という種がどんな未来を手に入れるかは分からないが、今度の『魔王』出現でどう変わっていくかも見守っていこう。
それはそうと、ミリーの件で加護なりスキルなりを与えた人に祈りをささげられると、ゴッドポイントがもらえることが分かったので、この9年ほどいろんな人々を助けて祈りをささげてもらった。
無論、中には祈りをささげてくれない人もいたが、概ね祈りをささげてもらいポイントを稼いでいた。
「ここのところ、ゴッドポイントの稼ぎ方が分かって頑張ってきた」
「神様すごい」
そうだろう、そうだろう。
GP 203万4450P
さて、この稼いだポイントを使って何をしようかな~。
……しかし、これでも『仮初の肉体』には届かないんだよな。
500万ポイントを稼ぐのって大変なんだね。
でもいざ使おうとすると、何に使っていいのか分からないんだよな……。
「クロエ、このポイントはどう使うべきかな?」
「神様の好きに使えばいい」
「そう言われると、考えてしまうな……」
俺は、ゴッドポイント交換リストを上から下へ流し読みしている。
いろんなものがリストに載っているが、欲しいと思うものはポイントが足りない。
困ったものだな……。
「……あれ?」
「どうしたの? 神様」
「いや、リストを詳しく見ていたら面白いものを見つけてね?」
「何?」
クロエがポイントリストをのぞき込むと、俺がその面白いものを指さす。
「これだよ」
神様ポイント通販の開設 100万P
「通販?」
「そうだ、日本にいた時もあったし利用してたけど、神様になっても利用できるようになるみたいだな。
俺が持っていた本やゲームは、あらかた読み終えたり遊びつくしたからな~」
「新しいものが手に入る?」
「たぶんね?」
「なら、迷うことはない」
クロエの後押しが、ポイント変換につながった。
100万ポイントと高額ではあるが、後悔はしていない。
『神様ポイント通販が開設されました。
ゴッドポイント交換リストに、神様ポイント通販のリストを追加します』
ゴッドポイント交換リストに、そう表示が出て付箋の1つに『通販』の項目が出た。
どうやら、ここから通販ができるみたいだ。
俺はさっそく、通販ページを開くとどこかのネット通販のページのように色々な商品が並んでいた。
またおススメや種類ごとに別れていたりして、見やすくなっている。
「すごいなこれ、品数が豊富だ……」
俺の側でクロエも目をキラキラさせて眺めている。
クロエも利用してみたいのかな?
「とりあえず、続きが気になっていた本を購入。
クロエは、何か欲しいものあるか?」
そう聞くと、すぐに画面を指さしてクロエのほしいものを見つける。
「これ!」
それはデザートの項目にあるケーキの中の1つを出してきた。
こういう所は、クロエもかわいいよな。
「じゃあ、これもいっしょに………決定、と」
それからすぐに、隣の部屋から声が聞こえた。
『ポイント通販宅配便です! お荷物お届けに来ました』
俺とクロエはお互い顔を見合わせると、隣の部屋へ移動する。
すると、そこにはどこから来たのか、段ボール箱を抱えたどこかの宅配業者のユニホームを着た女性が立っていた。
「えっと?」
『ポイント通販の商品をお持ちしました。
すみませんが、ここにサインをいただけますか?』
俺は呆気にとられているものの、言われるがままにサインをする。
すると、その女性はニコリと笑うと…。
『ご利用、ありがとうございました!』
そう言って、その場から一瞬で消えた。
俺とクロエは、呆然とその場にしばらく立ち尽くしていた……。
第9話、完成しました。
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