第6話 迷い人への対応
神様になって30日が経過した。
今日まで世界を見ていたが、今熱いのは『グリフィード大陸』だ。
この世界には8つの大陸がある。
その大陸の中の1つ『グリフィード大陸』は、8つの大陸の中で一番小さな大陸だが、それでも地球の南アメリカ大陸ほどの大きさがあり多くの人々が生きている。
今、その大陸全土を巻き込んだ戦争が起きている。
始まりは一番北にある『ポルペード帝国』が、南の『サー王国』へ戦いを仕掛けたのだ。
宣戦布告無しの強襲で、わずか2日で落としてしまう。
この戦いがきっかけとなり、今まで燻っていた感情や国家間の問題が表面化し大陸全土を巻き込む戦争へと発展してしまった。
始まりの戦いが大陸中に知られ、そして戦争へと発展するまで10日もかからなかった。
今やあちこちで人々が争い戦っている。
そんな争いに巻き込まれまいと、逃げ出している人々もいる。
そんな避難民を受け入れる国が、西の端にある『ホルバード王国』なのだが、実はこの国、国民すべてが王の奴隷なのだ。
非難してきた人々を奴隷に落として国民とする、いざ戦争に巻き込まれれば奴隷の国民を前面に出して戦うことはわかりきったことだろう。
避難民たちが、この国に行かないことを見守るだけである。
では、避難する人たちに救いの手を差しのべる国はないのかと言えば一つだけある。
それが南の帝国『ロビス帝国』だ。
もともとこの帝国は、魔王討伐のための勇者召喚陣を神より与えられた国で、大陸の国々が一目置く帝国なのだ。
また、勇者召喚で呼び出した異世界人は、むやみやたらと争いを好まないため今回の大陸全土を巻き込んだ戦争にも、最初から中立を宣言していた。
そのため、各地から避難してきた人たちが目指している地になっている。
「ん~、各地の争いの原因って、くだらないものが多いな……」
俺はここのところ、この大陸の様子を見ているのだが次々と人々が争いを始めていく状況にうんざりしていた。
それも国同士から貴族同士の内戦と、戦争狂かとツッコミたくなるほどだ。
中には、隣の国に嫁いだ娘がいじめられているという理由で戦争している国もあった。
まさしく、くだらない。
そんな理由で、人々を巻き込むな……。
「でも、俺には何もできないんだよね……」
諦めの境地で、世界を見ていると警報が再びなり始める。
ピィーー、ピィーー、ピィーー。
「クロエ、また警報か? でも音が前とは違うけど……」
「この音は、世界渡りが起きた音」
「世界渡り?」
「世界渡りは、召喚魔法や召喚陣などで呼ばれていない外世界の人がこの世界に現れたこと。言うなれば、迷い込んだ異世界人」
小説なんかである『迷い人』がこれか。
確か物語では、力なく迷い込む人がいたりチートスキルを持っていたりしたけど……。
とりあえず、探し出さないとな。
「クロエ、その迷い人の場所はわかる?」
「今、探してる」
両手を空中で動かし、画面を操作してターゲットの場所を特定する。
俺も、最近ようやく画面の操作の仕方を覚えた程度なので、素早く見つけるにはクロエに任せた方がまだまだ早いのだ。
「見つけた、この森にいる」
ロビス帝国の西の端か……。
確かこの森を北に行けば、ホルバード王国に行きつくな。
俺としてはロビス帝国に向かってほしいけど、ホルバード王国の手前の森の中に逃げて来た奴隷の人々の隠れ住む村があるからな。
そこを助けるという手も………お、いた。
「えっと、高校生か。年齢18歳でスキルは……無し。
これはダメだな、信仰の神に任せるか?」
「神様がスキルを与えれば?」
「え? できるのか?」
「ゴッドポイント交換リストの『付与ページ』に出ているはず」
交換リストに、そんなページもあったのか?
そう思いながらリストを開くと、あった、ありました。
リストの一番上、付箋のようなものがいくつも出ている。
「あったけど、付与以外は空白になっているな……」
これはたぶん認識すると出てくる仕組みか、時間が経つと出てくる仕組みかだな。
それはともかく、今は迷い人の彼が動き出す前に付与してしまうか。
俺は付与ページを開くと、この高校生に合うのはどれかと見ていく。
剣の才能 100P
刀の才能 100P
槍の才能 100P
…
物理攻撃系は百均一だな。
でも、才能か………能力ではない所が嫌らしいな。
すぐに使えるわけではなく、努力しろってことなんだろう。
魔道の才 16,000P
…
何だこれ、1万6000ってすごいな……。
えっと、すべての魔法を使うことができる才能。
出たよ、チート能力!
物語か何かのチート能力は、俺みたいな神が与えているものかもしれないな……。
火魔法の才能 100P
水魔法の才能 100P
土魔法の才能 100P
…
定番の才能は、やっぱり百均一か。
でも今、この高校生に必要なのは、生きていく能力だからな……。
そこを考えれば……。
第六感 200P
異世界言語翻訳 1000P
アイテムボックス 5000P
光魔法の才能 500P
これぐらいかな?
あとは信仰の神に報告して、見守ってもらえば大丈夫だろう。
「クロエ、この4つを与えようと思うけど、どうかな?」
「いい選択」
よし、クロエの笑顔もいただいたし、ポイント交換!
その瞬間、画面の中で気絶している高校生の身体が一瞬光った。
そして、画面に『付与完了』の文字が出る。
『チャリ~ン』
……どうやら、問題に対処できたのでGPがもらえたようだ。
アイテムボックスがポイント的に痛かったが、これで何とかなるだろう。
それと、信仰の神に連絡……。
俺は座っている椅子の右側にある赤い電話の受話器を取り、創造神へ連絡を入れる。
『はい、もしもし』
「創造神? 俺、コージです」
『お久しぶりです、コージ様。 今日はどうされました?』
「さっき、迷い人を感知してね? 探して見つけたんだよ」
『迷い人ですか? できれば、コージ様の方で送り帰してもらえるとありがたいんですが……』
何か創造神から、めんどくさそうな感じが出てるな……。
もしかして、迷い人関連のことは信仰の神たちもいろいろとあったのかな?
「それが、まだ新神の俺には送還も召喚も無理なんだよ。
だから、この世界で生きてもらうしかないんだよね、申し訳ないけど」
『いえ、謝る必要はありません。こちらの認識不足でしたから。
それで、その迷い人はどこにいるのか分かりますか?』
「ああ、グリフィード大陸の南にあるロビス帝国の西の端の森の中だ。
一応生きていくのに必要なスキルを与えておいたから、後のことをよろしくお願いするよ」
『わかりました。こちらでも確認後、必要なスキルか加護を与えておきます』
「よろしくね? それじゃあ、また」
『はい、失礼します』
これで良し。
あとは信仰の神たちに任せておけば、強く生きていけるだろう……。
本当は帰してやりたいんだがな……。
迷い込んだ外世界人の送還 2,500,000P
…
250万ポイント……ありえないだろうがこの数字!
神になったばかりの俺には無理だ……。
「クロエ、迷い人はどれぐらいの確率で起こるんだ?」
「まずない。奇跡の確率」
ということは、もうしばらくは起きないってことだな。
しかし、油断は大敵だ。
ポイントはなるべく貯めていく方向で、いくべきだな……。
気になったことを話にして投稿できました。
次回もまた、よろしくお願いします。