第3話 ご挨拶
「ゴッドポイントは、1日1ポイントずつ増えていく。
あと、魔王などのトラブルを解消しても増えていく。
世界にとってどれだけのトラブルかで、ポイント数も変わってくる」
「そうなのか……。
参考までに、魔王だとポイントはどれくらいなんだ?」
「強さによって変わるが、基本1万ポイント」
魔王で1万ポイントか……。
出現は300年に一度で、1万ポイント……あ、そうだ。
「世界の時間とか日数とかは、どうなっているんだ?」
「1日は24時間、30日で1ヶ月、12ヶ月で1年となり、1年は360日」
ということは、1年で360ポイント。
300年だと、10万8000ポイント……魔王のポイントを足しても、せいぜい約12万。
天使の卵まで………約7200年か。
俺が神様になっているから出てくる数字だけど、これじゃあ仮初の身体なんて夢のまた夢だな……。
仮初の肉体を作る(1体) 500万P
見つけたけど、このポイント数は多すぎるような気がする。
……当分は、地上に行くことはできないようだ。
しかも、仮初の肉体はクロエの分も用意しないとダメだろうな……。
とりあえず、今はあきらめてコツコツと神様をしていきますか~。
「と言っても、何からすればいいのかな?」
「神様は基本、ここで地上を見ているだけ。
何かあれば、アラームが鳴ってどんな異常が起きたか教えてくれる」
となると、普段は暇を持て余すことになるな……。
まだ何か、聞いておくことはあるかな?
「クロエ、地上にダンジョンはあるの?」
「ある」
「どんなダンジョンがあるんだ?」
「この世界のダンジョンは、地下型と塔型の2種類がある。
一番多いのが地下型で、全体の95パーセントがこれ。
残りの5パーセントが塔型になる」
「この世界のダンジョンは、何か役割みたいなものはあるのか?」
「役割?」
「ああ、俺の読んでいた小説とかだと世界の魔素を循環させるために必要だとか、魔素を生み出すために必要だとか、いろいろあったんでな?」
「この世界のダンジョンに、役割はない。
ただ、塔型のダンジョンは信仰の神が造っている」
「何のために造っているのかな?」
「わからない」
クロエでもわからないか……。
ならば、信仰の神たちに挨拶がてら聞いてみるのもいいかも。
「それなら、信仰の神たちに会いに行こうか?」
「会いに行く?」
「ああ、今のところ俺が必要なことはないみたいだし、信仰の神に会っておくのも勉強になるからね」
「わかった」
▽ ▽ ▽ ▽
カントの神々がいる神界。
地面が雲になっている以外は、地上世界とあまり変わらない。
ただ、町のような集合地はないものの、店は存在している。
主に飲み屋だが……。
そんな飲み屋の一角で、龍の神である『パルフィル』が飲んでいた。
「ようパルフィル! お前がこっちに遊びに来るとは珍しいな」
そこに声をかけたのは、鍛冶の神で酒が大好きな『ガルバード』だ。
彼は鍛冶の神であるため、信仰するものはドワーフが中心で、何人かは他の種族も混じっていた。
「何だ、ガルバードか。お前はいつも飲み屋に来ているんだろ?
そのうち、創造神様に注意されるぞ?」
「何かご機嫌斜めだな、何かあったのか?」
パルフィルは、手に持っていたグラスを一気にあおると、テーブルの上に音をたてて置いた。
「今、創造神様の所に客がきているらしくて、会ってくれなかったんでな……」
「はは~ん、レミブールに追い出されたのか」
『レミブール』とは、樹木の女神で世界中の木々を通じて情報を知ることができるため、創造神の秘書をやっているのだ。
「あいつ、とても大事な客らしくて創造神様も構っていられないとか言って門前払いだ……」
「それは災難だったな……。
でも、そこまでの客って誰なんだろうな……」
「さあな……」
「とりあえず、今日は俺が付き合ってやるから飲み明かそうぜ!」
「おう!」
▽ ▽ ▽ ▽
神々の神界の中央に、創造神がいる神殿がある。
神界の建物は、すべてのものが地上世界で神を祀っている建物そのままになっている。
だが、創造神は祀っている建物が存在しないため、建築の神に建ててもらったものだ。
その神殿に俺は来ていた。
「………すごい迫力だな~、まるで地球の神話の神殿だな……」
俺は、創造神の神殿を下から上へ眺めながら率直な感想を言った。
すると、隣のクロエが心配するように…。
「神様も、神殿がほしい?」
「……いや、今の住んでいるところで十分だよ」
俺は少し考えると、そう答えた。
クロエは何も言わなかったが、表情が笑顔になっていた。
「じゃあ、入ろうか」
俺たちは、創造神の神殿の中へと歩き出した。
神殿の中に入ると、すぐ脇に1人の女性が頭を下げている。
俺は声をかけようと近づくと…。
「ようこそ、創造神様の神殿へ。
そのまま中へお進みください、創造神様がお待ちです」
と言って、頭を下げたままだ。
う~ん、顔を見たかったけど創造神が待っているなら行きますか……。
「ありがとう」
そうお礼を言って、俺たちは奥へ進んでいく。
こんな神殿の中なんて初めてだが、吹き抜けになっているわけではないんだな。
所々、端に部屋みたいに壁で区切ってあるようだ。
神様とはいえ、プライベートはいるよね~。
そして、神殿の一番奥まで歩くと応接間のようにソファと小さな机があった。
そのソファの前で立って迎えてくれた男性が、創造神なんだろうか?
「ようこそ世界神様、私の神殿へ」
どうやら、彼が創造神で間違いないようだ。
それにしても、創造神って若いんだな。見た目の年齢は15か16ぐらい、髪は白に近い銀髪で瞳の色は金色。
まるで北欧の人みたいにハンサムだ。
髪は短くしていて耳には……ピアスかな? 赤い宝石が輝いている。
見た目が日本人の俺とは雲泥の差だ。
「急に来てしまって、ごめんね?
新しくこの世界を任されることになったから、挨拶でもと思ってね」
ここに来る前、クロエに言葉遣いを注意されたんだよね。
創造神たち信仰の神よりも俺たちの方が上なんだから、軽い感じで話すようにって。
日本人の時の癖が、なかなか抜けなくて苦労したよ……。
「いえ、お気になさらずに。
さぁ、どうぞお座りください」
創造神の向かい側のソファを薦めてくる。
俺とクロエは、薦められたソファに座ると俺たちが座ったのを確認してから創造神も座る。
そしてすぐに、先ほどの女性がお茶を出してくれた。
……どうやら、俺たちの少し後をついて来ていたようだ。
「ありがとう」
そうお礼を言って、お茶をすする。
うむ、うまい。 神界にも、美味しい紅茶があるんだな……。
……でも、猫舌は神様になってもあるんだな。
「では改めて、挨拶をしておこう。
この世界を任された神崎孝二だ。呼ぶときはコージと呼んでくれ。
クロエも、俺以外の神とかがいる場合はコージと呼んでくれ」
「わかった、コージ様」
「私も分かりましたコージ様。
しかし、私以外は名前で呼ぶことは恐れ多いといって呼んでくれないでしょうが、気を悪くなさらないでください」
「気を悪くすることはないよ、好きに呼べばいいんだから」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、世界神様」
創造神が頭を下げてお礼を言った後に、創造神の後ろで立っていた女性が頭を下げてお礼を言った。
……世界神と呼ばれているのか。
そのまま俺は、紅茶を飲み干すと…。
「それじゃあ、これで失礼するよ。
今日は本当にあいさつに来ただけだから、何かあったら連絡してね?」
「は、はい、コージ様。
私たちで手に負えないときは、連絡しますのでよろしくお願いします」
俺とクロエが立ち上がると、創造神も立ち上がり後ろの女性もいっしょに頭を下げる。
……その光景を見ると、本当に俺の方が上なんだな~。
この話までがプロローグとなります。
次回4話は、一週間以内に掲載します。