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神様になることで知ったできること  作者: 光晴さん


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10/11

第10話 女皇帝の話

タイトルが変更されました。

旧『神様になりたい』→ 新『神様になることで知ったできること』



「陛下、こちらの書類にサインをお願いいたします」


「……わかりました」


宰相のルーベルの持ってきた書類を読むことなくサインをしていく。

ルーベルもそうだけど、他の文官たちも私が書類を読んでも分からないだろうと思っているのだろう。


なぜなら、今私がサインをしている書類は民に課せられる税を増やすための書類だ。

他にも、私がボルサード帝国の皇帝になってからいろいろな書類にサインをさせられた。

そのほとんどが、宰相をはじめとした貴族たちの都合のいいものになっている。


このままいけば、帝国は衰退しすべての責任を私は取らされて殺されるのだろう。


だが、私に抗う術はない……。

なぜなら私はまだ12歳、成人していないからだ。


世間では、私が皇帝になったと認識しているのだろうが、実際は違う。

帝国の法にも、成人していないものは帝位に付けないとある。

つまり、私は成人するまで皇帝としての権力もないただのお飾りでしかないのだ。



私の、お飾りの皇帝のサインをもらい一礼して部屋を出て行く。

あの宰相も、文官たちもお飾りとはいえ皇帝のサインをもらうためだけに頭を下げてくる。

それの何と、薄気味悪いことか……。


「はぁ……」


お飾りとはいえ、皇帝になってから2年の月日が過ぎている。

私はいつ、国民から処刑を望まれるようになるのでしょうか……。


私の父が皇帝であった時、二番目の兄の発案で戦争は始まった。

最初に攻め込んだ国を落とすと、父は帝国の勝利に気を良くしたのか、戦争で勝利した数の多い子供に、皇帝の座を譲ると宣言してしまった。


それからは帝国中を巻き込んでの大騒ぎだ。

兄たちは、自身の兵や自分たちに従う貴族たちの兵を使って、いろんな国へ戦争を仕掛けて勝利し植民地化していく。


そして、まだ幼い弟たちは貴族たちの口車に乗り、何もしないで貴族に任せっぱなしで戦争に勝利していった。

勿論、私の所にも貴族たちの用意した見目麗しい男たちが言い寄ってきたが、すべて断っていった。



「はぁ、どうして貴族の跡取りってあんなにプライドが高いんだろう……」


そう、言い寄る男たちすべてが自慢話しかしなかった。

しかも、上から目線だし……。

何より許せなかったのは、私の名前を間違えていたことだ!


「ナターシャって誰よ………私の名前は、ナスターシャよ……」


ほんと、最悪だわ……。




▽    ▽    ▽    ▽




「お飾りの皇帝か……。

でも彼女、豪運の持ち主だから大丈夫だと思うけどね」


「神様、女心が分かってない」


「……」


神様になっても、わからないものはわからん。

日本に住んでいた時も、人間だった時も女心はわからなかったんだ。

それは、神様になった今も変わらない。



『グリフィード大陸』の半分を領土とした、ボルサード帝国の皇帝の様子を見ていたのだが、彼女もまた悩みを抱えてるようだった。


12歳という少女の身に、ボルサード帝国の人々を背負うだけの覚悟も力もない事に悩んでいたのは皇帝になったばかりの頃の話。

14歳になった今では、宰相をはじめとする貴族たちに帝国をいいように食い物にされていることに憤りを覚えていた。


何とかならないかと自問自答するものの、答えは今だ出てこない。


誰かに相談することもできずに、時間だけが過ぎていくということだ。

このままでは、どこかの貴族の誰かと婚約させられ後宮に軟禁されるのではという危機感も持っていた。



「でも、今までも婚約話は出ていたんだよね。

彼女の知らないところで……」


「クズとの婚約なんて、許さない」



最初に婚約話があがったのが、1年前。

ただ、その婚約者候補ってのが40歳のおっさんだった……。


宰相の実の息子で、すべての妾を捨てさせて女皇帝の夫にと推挙する予定だったのだ。

しかも、すべての貴族たちを味方につけて。


このことに見守っていたクロエが激怒、何とかしてと俺に頼んでいる最中に、妾の1人に後ろから刺されて死亡。

すごいタイミングに、俺もクロエも驚いて彼女のステータスを調べて『豪運』持ちだと分かった。


「あのタイミングは驚いたね」



次に動いたのが、帝国に吸収させられた国の貴族たち。

女皇帝を自分たちの意のままに操るべく、見目麗しい男を用意し婚約を図るべくパーティーを開いた。


そのパーティーで皇帝の彼女とお近づきになり婚約、そして結婚後、自分たちの国を独立させようと画策する。

ところが、パーティーの当日になって用意した男が幼馴染の女と駆け落ち。


仕方なく、急遽用意した男は女皇帝に合わせる前に、他の貴族の女に手を出していたことが分かり宰相に問い詰められてパーティー会場を逃げ出して、貴族たちの計画はとん挫した。


「クズの男は近づけない」


まったく『豪運』はいい働きをするね~



次に婚約話が持ち上がったのが、今年の初めごろだ。

宰相が見つけてきた男を婚約者にしようと、今度は計画を練りに練っていた。

しかも、身辺整理もしっかりとやって計画を実行していったほどの念の入れようだ。


まず、婚約前に男の方から彼女の悩みを聞いてやったり、力になってやったりとして、どんどんと親しくなっていく。

それから、彼女の護衛を経てから告白。


そして婚約へと持ち込もうとしていた。

勿論、計画通りに行かないことは承知しており、その都度計画を見直すことにしていた。



そして、女皇帝と知り合い。

悩みを聞いたり、アドバイスをしたり、力になってやったりして信頼を勝ちとっていたが、ここでハプニングが起きた。


女皇帝が熱を出し寝込んでしまったのだ。

ここで、貴族の1人が宰相に、このまま皇帝は病気で亡くなったことにしないかと持ち掛けたのだ。

しかも、この提案を宰相が了承してしまったことから計画が大きく変更。


また、男も今までの我慢してきた心の闇を、皇帝を病死にするという計画に変わったことで解放させ、病気で寝ている皇帝を襲ってしまう。


ところが、この女皇帝の病気が初めから嘘だったことが発覚。

女皇帝に近づいた男を不審に思った侍女の提案により、男を試していたのだ。

女皇帝は、信じていたが病気で寝ている女皇帝を襲おうとしていた男を見てしまっては、今までの信じていたものは一気に崩れ、男は帝都から追放。


宰相の練りに練った計画も、再びとん挫した。

さらに悪いことに、女皇帝が男性不振になってしまい当分婚約話も無しとなってしまった。


「豪運は、仲間も呼び寄せる」


「なるべくして皇帝になったのかもね、彼女は」










第10話を読んでくれてありがとうございます。

次回の話もよろしくお願いします。


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