チェレンコフの白き葬列
チュィーンッ!
カンッ!
タタタッ!
「兵長、リッツ、ランドマン、マイクは俺についてこいッ!」
生い茂る木を壁にして素早く進んで行く。
「姿勢をさげろッマイクッ!兵長ッ!マイクの姿勢をさげろッ!」
ドォーンッ!
「うぶっ!ペッ、クソッ!。この岩の向こう側だ」
俺はそっと除きこむ。あっ、魔導師がッ!
キューンッ!
ガカカカッ!
「待ち構えてやがるっ」
チュィーンンッ!
「中将!自分も確認します」
兵長が腹這いで鏡を使う。
「クソッ!空さえ飛べれば楽にやれるのに」
リッツがぼやく。
「木と岩が邪魔で、空からではどのみち制圧出来ん!地べたを這いずるしかない!…ここを制圧せんと向こうのダリも危ないぞ!」
行くしかねぇ。くそったれ。
なんでこんな事にっ!
「じゃあ、ちょっと戦争をして貰います」
別室に移動した俺達に、レイバーンは言った。
「…おい、いきなりなんだよ」
「チェレンコフが撤退を開始している。…ここだ」
机に地図を広げ、指で示す。
「今だ五万の兵力だ…此方へは抜けられん。山道で険しすぎるからな」
ふーん、それで?
「撤退するなら此方に進むだろう…城塞都市ベイへ。ここに入られると不味い。我が国、グランライト領に近すぎる」
確かに地図では丘陵地帯を挟んですぐ近くだな。
『再侵攻が可能な位置です 兵力的にも』
「…それで?王都の援軍に任せれば良いのではないか?」
俺らがしゃしゃり出なくても…任せれば?
「それでは間に合わん。徴兵された歩兵が大多数なのだ。…ここで大いに叩き潰し、停戦を優位に進めるべきだ」
「チェレンコフはノーザンテリアの30倍の兵力を保有しています。まともにやり合えばどうなるか…。今しか機会はありません」
ダリが補足した。
「じゃあ、空から鉛でも喰わせてやるか?腹一杯にな」
『それだけでは撤退を止められません』
だろうな。対地兵器が無いもんな。俺達。
「先に我々がここで阻止線を引き、食い止める」
レイバーンが丘陵地帯をなぞった。
「そして、追い付いた本隊が後ろから挟み撃ち…か…」
100人足らずでかよ。無理だろ。
『キチガイ沙汰ですね』
「やるしかないのだ。チェレンコフに本気で侵攻されれば滅びるしかない。…王子を殺さなければもっとましだったのだぞ」
うぐっ。だってだって、仕方なかったんだモンッ!
『キモいです マスター』
「やりましょう、ケンヤ卿。勝利をこの手に!」
ダリはヤル気に溢れている!
うぁ〜ん、マジかよー。はぁ。くそっ。
あの後、急いで飛んで来たわけだ。ここに。
因みにミューゼは、
「私もいくのっ、ケンヤぁっ、やだっ」
張り付いて離れなかったので、数人がかりで剥がして置いてきた。
アステリア姫達は、
「私たちも参ります。稽古は受けてますわ。足手まといにはなりません」
等と言っていたので、俺達の装備を担いでもらった。
「ふぐぐっ、えいっ!あれ…えいっ…うーんっ」
立つことも出来ないのでそっと置いてきた。
『回想してないで さっさと進んでください』
わかってるよっ!
「兵長!あっちの岩が見えるかっ?あそこに俺と…リッツ!こいッ!…二人で行く。挟み込んで魔導師を片付けるッ!援護しろッ!」
「わかりましたッ!…合図と共に射撃ッ!用意!」
「行くぞ!3・2・1!」
「撃てッ!援護しろ!」
「はよ!リッツ!こっちだッ!転がれ!」
耳の横をブンブン音がっ。
『死の羽音ですね』
ひぃっ、死ぬ!空軍に地上戦させるんじゃねえ!
チェレンコフはやたら魔法道具が発達している。まるで現代戦の様相になってしまった。
「くそ、魔砲銃とかそんなんありかよ。チートじゃねえか」
『ぼやいても 仕方ありませんよ マスター』
ぼやかずにいられるかっ。
こっちは力を、シノンを使えないのに、むこうはチートだぞ。
『この狭い場所では、高機動過ぎて動けませんからね』
其処ら中にぶつかるからな。
「リッツ、狙えるか」
「やってみせますよ、中将」
…タンッ!タンッ!……タンッ!
「よしッ!よくやったリッツッ!片付けたぞッ!突撃ッ突撃ッ!」
後何回やるんだこんなことッ!
もう嫌だ〜〜!




