王女殿下は諦めない! 7
取り敢えず片付けよう。邪魔だし。
『自国の貴族なのですが』
「兵長!」
って、癖になってるな。居てない…。
「ここに!」
おお、流石は兵長。俺はふり返って命じた。
「これをかたっ…片付けてもらえますか?」
えっダレこの人?
赤毛のスレンダー美人が居る…。
『……』
「はっ!直ちに!」
えっ…誰なの…兵長の姉?声が兵長だし…。
『……』
ルーチェ、あの人誰なの。
『…知りません…よ?』
なんで疑問系なんだよ。
「…ケンヤ叔父様…っ!」
「おわっ!」
びっくりした。ユキがしがみついてきた。
…怖かったんだろうな。
「もう心配ないよ。大丈夫だから」
『何か 話し方がムカムカします』
えぇ……。
「ケンヤ様、申し訳ありません。私達がついておりながら…」
「いいんだ、無理をするな。頬、大丈夫か」
メイドさんを手で制し、頬に触れた。
そんなに腫れてはないが、赤くなってるな。
「…冷やした方が良いな。皆でこの二人を頼む」
5人程いたメイドさん達に二人を任せた。
「あっ…ケンヤ様」
「暫く休むんだ。ユキも、安心して休んでくれ」
二人はコクコクと頷き、メイドーズに連れられていった。
『悲しみの 向こう側に 行けばいいと 推奨します』
いきなり何なんだ、お前は。
「アステリア姫、ユキを庇っていただいた事、お礼申し上げます」
俺は跪ついて礼をする。
『初めからこうすべきでは』
『ふんぞり返らずに』
過去をミルナー!未来を見ようじゃん!
「あの子…同じ髪色…瞳……そう言う事ですか…いえ、よかったですね…心中察するに余りありますわ…」
な、何故泣きそうなの…しかも、なんの話だ。
「い、いえ、私事ゆえ、お気になさらず」
『余計に 誤解を招く言い方ですね』
なんでだよっ!なんて言えばいいんだよっ!
「…ケンヤ様、伏してお願い致します」
アステリアは両膝をつき手を組んだ。
女神様のお祈りポーズだッ!!
『そのネーミングセンスはどうかと』
「どうか、ノーザンテリアの侯爵位をお承けください」
この状況、どうしよう?ねえ、閣下どうしよう?
閣下の方をみると、何時ものように
「マジかよ…」
と、仰った。
「姫様ッ!!どうか、お立ちください!王族たる者がみだりに頭を下げるなど、あってはなりませんぞッ!!」
激慌てだな。閣下。
『マスターこそ ガッタン ガッタン 震えていますが 気持ち悪いです』
そこは『大丈夫ですか』ですよねっ!
「いえ、アルバース叔父様。国家の為にも承けていただけなければならないのです。その為ならば、いくらでも下げましょう」
「…勿論、それは理解しております。ケンヤっ、うんって!うんって言え!はよっ」
わかったから。だから頭を押さえるな。
「…アステリア姫。侯爵位、慎んでお承け致します」
別に何も変わらないしな。
『…それはどうでしょうか』
「ケンヤ様…ありがとう」
おお、アステリアが笑った所、初めて見た。
「…では、その…これから、宜しくお願い致しますわ」
もじもじし出したぞ。なんだ。これからとは?
『血が欲しいのでしょう 王家の威信を回復させるには 一番手っ取り早いですからね』
「…その、精一杯…お仕えしますわ」
つまり?
『結婚 ですね』
いやぁ〜〜ッ!!!
「アステリア姫、私はミューゼ様に仕える騎士。その私が誰かに仕えてもらうなど。」
「そうです姫、仕えるなどと、ご冗談を、はは」
閣下の援護射撃が飛ぶ。
いきなり結婚なんかしてたまるか。そもそも、手も繋いでないしデートも、チューもしていないから、結婚できませんっ!
『わりと 純情ですね』
「ケンヤ、執務はどうした?そろそろ戻りたまえよっ。なっ!」
「そうですな閣下っ、では戻って執務を再開しますね。ははは」
『二人とも 役者にはなれませんね』
撤退!撤退!
「あっ、ケンヤ様…」
「さあ、姫は叙爵の準備を…」
ナイスインターセプト!閣下っ!
ふう、びっくりした。やっぱり政略結婚とか普通にあるんだな。
貴族って大変だね。
『……』
とにかく砦に帰ろう。腹が減ったしな。
『はい 正午をまわっています 昼食を 推奨します』
朝だけで疲れたわ。もうゴロゴロして過ごそう。
『出来たらいいですね マスター』




