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逃げ出した先の生き方は  作者: 間違い探し
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王女殿下は諦めない!

戦争が終わり、全員の武装を解除した後、マジ切れレイバーンがやって来た。


「ケンヤ卿!作戦を無視してもらっては困るな!大体何をするにも力押しがすぎる!そもそも領境の件にしてもそうだ!姫を殺さずに済むようチェレンコフのゴロツキどもの居場所を私がアルバース公に何とか伝えようと………」


メッタメタに怒られましたが、何か?

『………』


「まあまあ、レイバーン卿、それくらいで。戦いの後始末を急ぎましょう。ねっ?」

ダリが間に入ってレイバーンを諌めた。

本当にイイヤツだなぁ。ダリは。


そんなこんなで、戦死者を火葬するために畑から大きく離れた場所に穴を掘り、亡骸を放り込んでいく。

朝焼けが辺りを照らし出した。

なんだか俺は神聖な気分になって……人を殺した事実と実感が、自分の肩にのし掛かるのをはっきりと感じた。


「死んだら皆、仏様だ……故郷に帰してやりたいが……」

『これらをチェレンコフまで輸送するのは不可能です 腐敗するでしょう』

「わかってるよ。火葬して遺骨だけでも、な」


だからわざわざ遺骨が混ざらないように、一人一人に穴を掘っているじゃないか。

『非効率的だと 進言します』

いいんだよ。これで。……いいんだよ。


チェレンコフの戦死者は900人位だった。

捕虜は1000人位。捕虜に墓穴堀を手伝わす。

彼等は酷く怯えて居た。何で?


……戦争って、悲惨で辛いな。新聞やテレビの向こう側には、実際にこうやって墓穴を掘ってる人たちが居たんだろうか。それは家族?仲間たち?それとも敵同士か。

誰が掘るにしても、陰惨な気分に違いない。


『……マス』

「中将閣下!生き残りが居ます!」

兵長が叫んだ。逃げ遅れが居たのか?

…ルーチェ、なんか言った?

『気のせいです』

そうかよ。


「兵長、大丈夫か。暴れたりしてないか」

声をかけながらそちらに向かう。出来るなら帰してやりたい。


「はい、気を失っています!少女のようですが…」

は〜ん、子供兵ってやつ?地球にも居るらしいな、そういう子供たち……。


「…えっ。…これはセーラー服?」

グッタリしたその子は土まみれで、黒く長い髪に薄い目鼻立ち、セーラー服。


「日本人か…?」

どうみても日本人の子供だ。高校生だろうか。


俺は傍らに膝をついて覗きこんだ。

「おい、しっかりしろ。大丈夫か?」

その子の顔を布で拭いながら声を掛けると、うっすらと目を開く。


「う、う、に、ほん、じん?」

一言目がそれか。そうだよな、他にも居るとは思わないよな。


「あ、あ、あぁ」

上体を起こして手を伸ばして来る。

手を掴んで起こしてやろうとしたら、

「うぁぁ!あぁ〜ん!」

「うぉっ」

タックルそして号泣!


34歳のサラリーマンがjkに抱きつかれる事案発生!!ヤベえ、どうしよう!


『随分 嬉しそうですね』

ばっか、そんな事ねーって!

『キモ』

ヤメロー!


「中将!こいつ、離れろ!離れて!」

兵長が慌てふためく。何を焦ってるんだお前は?


「よい、恐ろしい目に合ったんだろう。暫くこうしてあげよう」

日本人の、しかも子供が戦場に放り出されたんだ。恐ろしかっただろうに。彼女の頭を撫でながら、彼女の気持ちを思う。


『その恐怖の大部分は 誰のせいでしょうね』

『頭を割られて怖かったでしょう 気の毒に』

あん?なんの事?なんか怒ってる?ルーチェ?


『執行者は後ろに 頑張ってください』

はぁ?


「楽しそうですねっ!ケンヤっ!」

ミューゼの声が聞こえ、振り返った。


「ミューゼ、もうしんぱアヴェェ!」

頬っぺたを握り締めるのはヨセー!


「心配したのっ!心配したのにっ!うにぁ〜!」

や、やめれ!兵長!助けて!


「………」

兵長はニヤニヤと此方を見ている!


裏切ったなキサマー!な、何故だ!トム!

何故なんだ!

『そんなだからですよ マスター』

訳がわからないよ……。




俺の頬っぺたがベロンベロンになるころ、姫様の怒りは解けた。

謎の少女はまた気を失うようにして、眠ってしまった。大丈夫だろうか。


『マナが減衰しているだけです』

『10日程でシノンも再起動するでしょう』


今、何て?シノンだと?この子が!

『貴方が撃破した陸戦型シノン』

『ベアトリーチェ』

『それが彼女のシノンです マスター』


……なあ、俺たちは一体何なんだ?

何故日本人、いや地球人なんだよ。

そもそも、まだ人間なのか……。


俺はベアトリーチェを胸まで真っ二つにした。その後粉々になったはず。

何故彼女は生きている?


「何故……」

俺は膝に乗せた彼女のあどけない寝顔を見つめ、頬を撫でる。ミューゼの頬がパンパンに膨れ上がった。姫様のする顔じゃないな。おい。


「そちらの女の子と随分、仲がよろしいようで」

えぇ…。またこのパターンデスカ。


「いえ、これはイデェァアゥゥ!!」

メイドさん!やめて!

頬っぺたのライフはもう!!


『……フフ』

「……ふふ」

兵長、ルーチェ!お前らっ。


「あまり、オイタをされては困りますわぁっ。ケンヤ様は侯爵様ですからぁっ。善からぬ泥棒猫にはっ!気をつけていただきませんとっ!」

痛いっ!や、や、や、やめてっ!

引っ張ったまま離れるんじゃない。千切れる!


「キャッ!……あ、あのっ、その…ケンヤ様……」

俺は頬っぺたを防衛するためメイドさんを抱き寄せた。

恐ろしいメイドさんだ。マジで千切れるかと思ったわ。


「心配かけた。すまないな」

取り敢えずそう言って手を放した。


「いえっ、いいんですっ、ふふっ。ふぇへっ!やぁっ!もう!にゅへへ」

ちょっと、大丈夫には見えないな。


「…話しは終わったか?ケンヤ卿」

今度はアルバース閣下かよ。


「閣下、脅威は去りました。閣下とミューゼ様が降る必要はありませんよ」

どうよ。ヤってやったぜっ!


「確かにな。礼を言おう。それに関してはな」

閣下、青筋立てちゃってどうしたのよ?

勝ったんだ。もっと喜べばいいだろ。


『周りを視てください』

あん?……203高地のようですね……。

畑は広範囲にわたり爆発と銃撃で抉れ倒し、黄金色だった麦穂は灰塵と帰していた。

『来年の収穫まで影響がでますね』


「麦の事もそうだか、チェレンコフの王子をどうしたのだ!お前はっ!首もなにも無ければ停戦するのが困難になるだろうがっ!馬鹿っ!なんの為に降伏を決めたと思っとるんだっ」


『王子は殺した 停戦を受け入れろ』

『嘘をつくな 王子の身柄を返せ』

『ならば 戦争だ と、なりますね』


「エヘヘ…これで何とかならないですかね」

俺は瓶に詰めた土を閣下に差し出した。


「ふざけるなっ、なんともなるかっ!お馬鹿っ!我等が身を思う忠誠は有難い、だか!おまえはいつもいつも…………」


メッタメタに怒られましたが、何か?


『マスターの軽率さと 考え無しには驚かされますね』

ウルセー!



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