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逃げ出した先の生き方は  作者: 間違い探し
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VS辺境伯レイバーン

俺は思ったね。これは不味い。外交官をぶちのめしてしまった。

そして甦る、交通事故の苦い記憶。


し、死んだかも……。


「〜ッ!ケンヤっ!」

ミューゼがしがみついてきた。

…ふん、子供にネチネチネチネチ。いい大人がよ。見苦しいんだよっ。


……俺の気持ちはさておいて、閣下に迷惑が掛かる。どうにかせねば。


「ミューゼ様はここまで。君、姫を休ませてくれ」

助けたメイドさんにミューゼを頼んだ。


「は、はいっ、ケンヤ様…」

「ケンヤっ?」


「ご心配なく、すぐに御元に戻りますよ」

俺はポエリーの元に急いだ。



「ケ、ケンヤ卿!これは何事だ?!」

「……どういう事かな?アルバース公」


部屋に入ると閣下と蛇顔の男が向かい合っていた。ポエリーは机をへし折り呻いている。


俺は跪つき閣下に挨拶した。

「閣下、ご指示に従いミューゼ様がシノン、ケンヤ、参じましてございます」


こいつが外交官でポエリーはおまけだ。直感的に理解した。ならば強い軍権を持ち、特別な存在らしいシノンが、アルバース閣下に臣従する姿を見せる。これはカードになるだろう。


神に認められた騎士が従っているのだから。


「う、うむ。よくぞ参った。それで、何の騒ぎだ?これは!」

アルバース閣下は気性の優しい人物だ。荒事に全く向いていない。すでに動揺を隠せていなかった。


「私からも聞かせて貰おうか?どういうつもりだ?」

まとわりつくような嫌な声。蛇の眼光。


「…卿は何方かな」

俺は問を無視して誰何した。


「…辺境伯、レイバーン・フォン・バートラン・テルビス」


辺境伯レイバーン。やっぱりな。


「質問の返答をしようか」

レイバーンを睨み付けた。


「我が主を侮辱した豚を、処分したまで」

わざとポエリーを外に置いたな貴様。騒ぎを起こす為か?言い掛かりを作って有利に話を進めるためか?ミューゼは泣く羽目になった。


おふざけは無しだ。怒りをぶつけさせてもらうよ。お前にな。


「困りますな。外交官に手をあげるなど、許されませんぞアルバース公」

「赦さんのは此方のほうだ。レイバーン」

俺はシノンで侯爵だ辺境伯より強い軍権がある。特別な軍権をもつ辺境伯より上の立場。呼び捨てでもかまわないはずだ。


「なに?…ではどうしろと?謝罪でも求めるか。ポエリーが起きるまで待つがいい」

馬鹿にしたようにレイバーンは言い放つ。


「いいや、ポエリーの首を寄越せ」

王族に対する侮辱がそんな甘い罰ですむわけない。アルバース閣下は優しかろうが、俺は優しくはないぞ。


「はっ?」

「今なんと?聞き違いかな?」

ブラフだと思ったな?貴様。


俺は剣を引き抜き、呻くポエリーを蹴り倒すと首を

「ま、待つのだ!ケンヤ!止めよ!!」

寸での所で剣を止めた。


「恐れながら閣下。王家に敬意持たぬこのような者、生かす必要がありましょうか?」


「落ち着くのだ。命まで奪う必要はない」

甘過ぎますよ閣下。レイバーンの口元が笑みに歪む。


「部下の命が助かって、よかったなッ!」

ベキリッ!骨が砕ける音が響いた。


「ギッ!あ、あ、あぁが!」

俺はポエリーの左足を踏み砕いた。

「兵長!」

「ここにっ!」

「目障りだ。連れていけ」

「はっ!」

俺は付き従っていた兵長を呼びつけ、ポエリーを視界から消した。


「……」

「………」

呆気にとられていて良いのか?この程度で恐怖を感じたか。それでも国境を守護する辺境伯の端くれか?

俺には外交の知識はない。

周辺の力関係もわからない。

あるのは使い方のわからない力だけだ。


なら、その力を使う。


相手は文官タイプの権力者だ。圧倒的な暴力で脅された事などないはず。


「さて、……軍の展開で領境が騒ぎになったそうだな」

俺は威圧的に話をふった。


「ぅ、そ、そうだ。軍が道をふさいだせいで我が領の物流が滞った。被害の倍賞を求めにきた」


「それは貴領の整備不足であって、我が領には関係ない。我が軍は大規模であっても他方へ分散してはいない」

ミューゼが帰って来てすぐに戻ってきた。出発して間もなかったはずだ。


「辺境から中央へ抜ける大道が一つしかないなど、軍略的にあり得んな」

道が一つだと隣国から攻められた時、援軍を引き込むことも撤退することも出来ない。


「そもそも、封鎖は1日足らず。請求倍賞金額を計算するには早すぎるな?貴領から此方まで、数時間もかからずこれるのか?レイバーン、お前何処に居た?」

来るのが早すぎる。まるでミューゼが拐われる事を知っていたようだな?


「良かったな?唯一の証拠は私が切って捨てた。お帰りは彼方だ。私の気が変わる前に失せるがいい。二度目はないぞ」


「っ!く、失礼する!」


レイバーンは言葉を失い、慌てて去っていった。


「あ、ぅ、えぇ?」

アルバース閣下は空気だったな。

ほのぼの暢気さん気質は閣下のせいなのだろうか?

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