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桃色の空の下  作者: 一条 洸
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2年生になった春

4月6日ーー。

春も半ば、桜の時期を少し越した暖かな陽気のこの日、渡辺 ちかは高校二年生になった。『愛』と書いて『ちか』と読む。

まぁ、大抵の人は間違えて『あい』と呼んでしまうが……。一応のため言っておこう、ちかは立派な男子、である。と、言っても背も周りの男子に比べ低めで、あまり目立たない性格のため男子、という感じはあまりしないのは確かである。


一年の時の校舎より少し門から近い第三校舎に移ったわけだが、あたりの様子はあまり変わらない。しいて言うならば、窓の景色が校庭から桜の木に変わったことぐらいだろうか。新しいクラスにまだ馴染めない愛は、ただ一人自分の席に座り頬杖をついていた。

一番左の窓側の席から三番目。

それが愛の席だ。桜がそよ風に揺られ花びらが宙を舞う。その景色が綺麗であったかくて、少し不安だった愛の心を落ち着かせる。

一年の頃のわずかにいた友達とは、残念ながらもクラスは別れ、もともと友達付き合いが苦手な愛は半ば浮かれ気味の新クラスに馴染めず一人でいるのが気まずかったのである。着なれた制服に身を包み、ゆるくてすぐ落ちてくる黒ぶち眼鏡を外し、ぐるりと辺りを見回した。

ぼんやりとした人影があちらこちらで固まっている。再び眼鏡をかけ窓の外へ目を向けると木々の間にシジュウカラが止まっていた。

「お前も一人なのか…?」

そう一言、シジュウカラに向かって話しかける。白と黒の綺麗な羽をニ、三回はたつかせチュン、チュンと鳴くともう一羽シジュウカラがやって来た。今度は勢いよく羽を広げ二羽のシジュウカラは愛のもとをさっていく。

「そっか、君には友達がいるんだ」

青葉が出てきた桜の木を横目に前の席にいる女子達の話に聞き耳をたてる。

「きゃー、さゆちゃん!よかったーまた一緒のクラスになれたね‼︎」

「うん!またよろしくみっちゃん‼︎」


愛は、別に一人は嫌いではない。

しかし"一人ぼっち"は、嫌いである。

それは矛盾しているだろうか?

仲のいい友達と一緒のクラスになれた者、またそうでない者もいるだろう。

しかし、大抵の人は近くにいる知り合いと話し盛り上がり、その場を共有しあうだろう。それをしないのは何故だろうか?愛は考える。勇気が出ないから?何を話せばいいか分からないから?それとも……人付き合いが面倒くさいから?そんなことを桜を見ながらずっと自問自答している。愛は、自分の居場所を求めているが、自分の居場所を自分で作ることに抵抗がある。出来ることなら人とは関わりたくない。人といるのは疲れる。相手に合わせたり、話したり、そんなことが面倒だから。……どうすることを自分は望んでいる?どうこの一年を過ごせばいい?体育の時の二人ペア……いつも愛はあまりもの………。授業中の質問タイム……分からなくても、話したくても、隣の子はいつも近くの仲のいい子と話してる。自分が入る隙間など……とうに…ない。既にグループのできた輪の中に自分を入れる隙間などないのだ。

自分は、どうすればいい……。

一人でいる方が楽でいい。

でも、"一人ぼっち"だとは思われたくない。これは、矛盾しているだろうか?

それでも……考えることはいつも同じこと…。

4月6日ーー。

桜が舞い散る春の日に渡辺 愛は、二年生になったーー。

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