婚約破棄をされた腐った令嬢は冤罪が証明され嘆く
年は17、マシュルム王立学園の副会長。
私はリロロエ公爵家の令嬢、キスイダ。
第一王位継承者のホーア王子の婚約者でもある。
学園での評価は成績は何度も1位に入る程に優秀、魔術の腕は王宮魔術師筆頭に王宮魔術師への就職を誘われるぐらい。
性格込みの評価は………冷たいとか…変わり者?……後可哀想とか残念。
家での私の扱い、チッターノ父様やカホア母様両親とは余り話さない遠い関係って所かな。家族で唯一よく話すのはチッターゴにいさまだけ。
交友関係…………聞かないでほしいな。
そんな私だが……現在厄介な事に巻き込まれかけている。
私は幼い頃から仕えているロクッマからの調査資料を読んだ。
「ロクッマこれが調査した結果?」
「はい」
「随分と……やっぱり、そうなると明日は……ロクッマこれだけ調べるのは大変だったでしょう。御苦労様」
「いえ、キスイダお嬢様の為なら」
これで何時来ても言い様に準備が出来た。
翌日の学園。生徒会の仕事をしない王族とその取り巻きのせいで今日も仕事三昧。王家に再三通告したのに…"最後"まで改善しなかった。
昼食休憩で食堂に来たら…
「其処に居たか!」
…面倒なのが…お腹すいてるのに。
「キスイダ!貴様との婚約を破棄する」
ああ……始まった。ある意味終わった。
昨日でギリギリだった。
怒った顔をしている婚約者のホーア王子と義理の弟と……宰相のご子息のえーー、名前を忘れたその他大勢その取り巻き。別名は生徒会の仕事をサボってる愚か者ども
後、……当然の様に逆ハーレム女がいる。
何で態々食堂を選んだんだか?注目されて嬉しいのか?
「理由は何でしょう」
「何でしょうだと!」
「……姉上、本当に貴女は最低ですね」
一年前に養子に来た弟、ほぼ家でも会った事がない。
姉上と呼ばれたの今日が始めてだ。
「しらばっくれるな!エニケイへの度重なる侮辱、暴言に殺人未遂が理由だ!」
ふぅん?エニケイ、通称逆ハーレム女、レマコキマ伯爵家の令嬢。生徒会の男どもをはべらかせて仕事をさせない害悪。
それの暴行に侮辱に殺人未遂ね。
侮辱は公衆の面前でイチャイチャすんな?
暴言は何かな?生徒会の仕事をサボってるバカ男達に仕事をする様に伝えた事?
最後は……殺人未遂ね…そんな事件あった?
この学園でそんな重大な事件があったなら私に報告が来る筈だけどね。生徒会長とかが働かないから確実にね!
生徒会の仕事は王位を継ぐ前の練習って風習を知らないのか。
そもそもエニケイに対しての断罪がしたいなら何で先に婚約破棄を言うかな?エニケイを婚約者にしたいのが見え見えだよ。
「エニケイさんに暴言や侮辱は言った覚えは有りません。…………殺人未遂については起きた事すら知りません」
万一私が知らないにしてもこの学園で殺人未遂が起きたならノービリティ騎士が来る筈。
「しらを切る気ですか?エニケイ嬢が階段から突き落とされた殺人未遂の事ですよ」
それが殺人未遂?……随分と古典的な。
「そんな事件は生徒会に届いてません?そもそも階段から落ちたのは何時ですか?肝心のエニケイさんは怪我をしてる様には見えませんが?」
「エニケイ嬢が突き落とされたのは昨日の晩です。怪我が無いのは王子殿下が落ちる前に助けたからです」
それ突き落とされたじゃなくて突き落とされ掛けたじゃない?
と言うか随分と都合が良い落とされ方をしてる。
落下方向に王子が最初から居ないと止められないでしょ。
……ってスルーしかけたけど昨日の晩?
「晩と言うのはどういう事でしょう?この学園では晩に男子と女子は接触が禁止されてる筈ですが」
下世話な話、婚約してる可能性が高い貴族の子女が子供とか産んだら不味いからね。
「そ、そんなことは関係ない!話を逸らすな!」
判りやすいな。……周りが白い眼で見てるよ。
「はぁそれで、私が突き落としたのが目撃でもされたのですか?」
昨日の晩は報告待ちでずっと寮の部屋にいたな。
一応アリバイはない。
「見ていない!だが魔術を使えば可能、いや!貴様の事だ他人にやらせたのだろう!正直に吐け!」
「何故私がエニケイさんを殺そうとしたと思うんですか?」
「貴様がエニケイを嫌っている事は分かっている!王家に対して幾度にわたりエニケイのせいで生徒会活動が停滞していると通告したろ!」
「…ええ…しましたよ。実際に今月に入って私以外が生徒会の仕事をされた記憶はありません」
「そうだ!それがエニケイを嫌ってる証拠だ!」
え、と、確かに嫌ってる証拠だね。
公然の秘密だけどよく堂々と生徒会をサボってるとよく言えるな……一般の貴族は生徒会長職が王位を継ぐ前の練習であり試練って事は知ってる。それに嫌ってるから犯人?
「だからなんですか?」
エニケイを嫌ってるとかこの学園に何れぐらい居ると思ってるんだ。
王子と取り巻きが喚く、弟が次期当主でも無いのに私の家からの追放を宣言。喚いてたのは罪の内容。殺人未遂から悪戯レベルまで随分と幅広くやってる。
そもそもお前達の代わりに仕事をしていてそんな暇があるか。
他の罪とやらも証言しか証拠がないし。
そんな悪事してたら証言しか証拠が無いとか可笑しいだろ。
「キスイダ様……罪をお認めください」
エニケイが目をウルウルさせて言う。
あんな証拠で罪を認めてたら世の中罪人だらけよ。
内容的に悪戯が本当にあったかすら疑わし過ぎるし、何だよ筆記用具を壊したって、呆れてからロクッマに合図。
生徒からの通報で不穏な空気を感じてロクッマに色々と調査をさせていた。この場で私の無実の証拠を突き付けて貰おう。
ロクッマが口を開いた。
「キスイダ様いやキスイダお前の悪事にはもう荷担しない」
うん?……ロクッマ?
「殿下…わ…私はキスイダがエニケイ侯爵令嬢に対して危害を加えるように指示したのを目撃しました。」
エエ……、裏切り。
今の所は自称被害者とその被害者の仲間しか証言がない。
けど加害者の従者の証言が加われば疑いは黒に近くなる。
ホントに見事な裏切り……バカだ。
いや……誤算だった。
「うむ、ロクッマとやら従者の立場で主の糾弾は不味かろう。ご苦労だった後は"元婚約者"の私が引導を渡す」
「はっ!」
「キスイダ!言い訳は聞かんぞ!愚かな貴様に与える罰を沙汰する……」
私に対して出された罰は婚約破棄は勿論、僻地への追放に家からの追放。……野垂れ死ねって事だろう。
王子の身分では不可能な罰だと思ったけど本当に僻地に送られた。強引にねじ込んだ様だ。あ、家からの追放は楽だった様だ。
追放される時に裏切ったロクッマが笑顔で教えてくれた。
ロクッマは次にエニケイに仕えるそうだ。嬉しそうだった。
……あんな腐ってる人間が居なくなったから今回の事は案外良かったのかもね。 ……それに
僻地に追放された当初は少し大変だったけど数日して秘密裏に送られた、家族とかチッターゴにいさまの支援で其れなりに生活できた。
家族と仲がワルいのに何で支援が来るのか?
ああ、距離はあったけど両親は基本的にイイ人達だからね。仲が良くない理由も……意見の相違と言うのかな?お互いに譲れない所があっただけで嫌いあってた訳じゃない。
家から追放されても多分お互いに(弟以外)家族だと思ってるよ。
少なくとも私は思ってる(弟以外)。
私の家からの追放も王都より僻地の方が私にとって良いと思ったからだろう。
それから後は貴族時代に学んでた魔術と、一人での生徒会運営の経験は僻地では重宝されてメキメキと僻地住人のリーダー格となった。良いのかな?生徒会の仕事より楽だよ。けどリーダーになったお陰で天使達との交流が盛んに為った事は大満足。貴族令嬢時代は自重がいったからね。
手紙でにいさまに伝えたら泣いた跡がある手紙で此方に来たいと書かれてた。次に血の跡がある手紙でにいさまが来ても追い返せと母様から……後、自重しろと
それから一月後、王都は混乱してるらしい。
半月で私の婚約破棄とエニケイとホーア王子の結婚が発表される。次にホーア王子の王位剥奪が決定。やっぱりとしか感想はない。
国王陛下が決めた婚約を独断で破棄して婚約者の令嬢を追放したからね。後生徒会活動のサボり。それに決定的な理由は私の冤罪が証明されたから。
へぇーと、やっとかと思った。
冤罪を証明したのはロクッマ、裏切って無かった?
いえ裏切り者だよ。実は裏切って無いとか綺麗なロクッマは存在しない。元から裏切って貰って良かった。
いえねロクッマの裏切りは予想済みだったんだよね。
屑な本性も気付いてたし。
高位の貴族の家の仕えるときに渡されるメイドから執事まで主従全員が付けてる指輪がある。その家に仕えてる証としてね。
因みに一度付ければ主従の契約破棄まで取り外せない。
勿論公爵家の家に仕えてるロクッマにも指輪が付けられてる。
指輪の正体は忠誠の証という魔道具、主を裏切れば罰が下るというモノ。罰の内容は一言で言えば呪い。激痛に顔面に咎人の証が出る。因みに裏切りの内容には犯罪の告発なら罰を受けないという便利なセイフティがある。裏切りを予想してたけど安心してた理由はそれ、誤算は……あの裏切りの後、直ぐに咎人の証が出ると思ってた。
出なくて少し焦った。本当は忠誠の証自体無いのか疑った。
だって忠誠の証って魔道具は結構な機密があって貴族でも情報が余りない。……裏切り防止の魔道具とか大々的に伝えられないでしょ。知ってたらロクッマは表向き裏切らないだろう。
後で知ったけど一晩か二晩は先ず激痛に苦しんで痛みが治まった次の日には顔面に証が出るそうだ。で咎人の証が出た人間は早急に確保されて何の裏切りをしたか国に徹底的に調査される。
当然ロクッマがね。
……まぁロクッマの私の冤罪の証拠握り潰しに利益を得て私を犯罪者に仕立てた事が発覚。利益とは今後王妃になるエニケイの側近に為ること、芋づる式にエニケイは嘘の糾弾をしてた事が発覚。
まぁ、事件後にエニケイに仕えてるんだから本当だとわかるよね。
そうなるとホーア王子やら取り巻きやらは、無断の婚約破棄どころか冤罪で王の決めた婚約者を罪人にしたてあげ王の権威を傷付けた罪人。えー元王子、取り巻き、エニケイへの罰は………うん。私より酷い扱いらしい。
あ、弟は家から追放されたらしい。
いまごろ何処に居るやら?……この前弟を名乗る不審者が来たけど関係ないよね。
それと、ホーア王子の他にも王子は居るので王位については第二継承者に渡して問題なしだそうだ。
そう此処までなら問題なし。
冤罪が公になった一月後には追放取り消し元の公爵令嬢に……元から家族との交流は続いてたから取り消し感は余りない。
折角仲良く為った天使達が出来たのに戻るのが嫌なので僻地で愉、楽しく過ごす。間違い僻地の発展の為に尽力してます。
本音を書いた手紙を母様に送ってしまって両親から戻って来るように恐ろしい文字で何度も勧告された。
後、にいさまは何度も此方に住みたいと泣いた跡のある手紙が。
公爵令嬢の立場に戻った私、公爵家の伝を利用して大手の商人を僻地に呼びよせる。住民達に僻地ならではの食材や工芸品を売り捌いて貰う。中々人気が出たようで半年で伝と関係のない商人が頻繁に来るようになる。道の整備や盗賊対策を儲けたお金の何割か投資して貰い住民達で行う。どう考えても領主でも無いのにやり過ぎな感じもするけど領主が何故か居ないのでやるしかない。
商人が更に来る。元々開発がされてなかっただけで地力が有った僻地の土地はドンドン豊かになっていた。
二年後、家族の帰ってこいコールの無視、にいさま追い出しをしながら僻地の発展。僻地の面影が完全に消えてた。
発展した王都近くの町と其ほど変わらなくなった僻地を見てこう思った……うん、やり過ぎたと。
どんだけ地力があったんだと思った。
そういえばずっと疑問何だけど……何故か税収の管理分配は私がしてる……私が領主みたいな扱いに成ってるんだけど何で?
もうこのまま此処で骨を埋めても良いかな~とっ思ってたら、勅使が来て第二継承者のブーモ王子との婚約を決定したと教えられる。
はぁ!?と勅使に言ってしまった。
冤罪とはいえね追放された令嬢だと問題が有るとやんわりと断ろうとしたら、……二年で僻地を異様に発展させている私以上に国母に相応しい人間は居ないそうだ。
な、何でだ!?何でまた王子との結婚!何の為に婚約破棄の後に冤罪を証明しようとしたと思ってるんだ!……あ、王子との婚約が嫌だったのは内緒だよ。
渋ってると二度目の勅使が来て冤罪の謝罪をしたいので王都に来るよう国王陛下から要請された。
罠だ。
帰ったら確実に婚約させられる。けど嫌とは言えない。
国外への脱出を計画した。私の楽園の天使に別れを告げ旅立つ。
サヨナラ我が故郷!
翌日騎士に囲まれて王都に連行。
畜生、家族の誰かが差し向けたな。
ドナドナされて王都へお城で国王陛下に謝罪されて直ぐに僻地の開発の功績を称えられた。褒美として第二王子(イケメンで性格良さそう)との婚約が発表。
私はずっと死んだ目をしてたと思う。
父様や母様はざまぁ見ろといういい笑顔で見てる、
……あーにいさまもか。
こんな事になるなら、冤罪なんて証明されて欲しくなかった。
兄側の視点とか……何とか。