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ニィカ!  作者: 稲見晶
第三章 威光の都リヒテシオン
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77. 代弁者

 アーロスは「えーっと……」と円卓を見回し、固唾をのむエウスを聞き手に定めた。

「ケルーノも、おまえとだいたいおんなじこと言ってる。ニィカをあっちに行かせるって」

 あまり友好的ではない目つきがアーロスに浴びせられた。

「そりゃ、おまえたちはそうだろうよ」とヘイクは露骨に嘲った。

 この少年とやや接点のあったギュミルでさえ、その薄情さに知らず知らずの失望を覚えていた。

 ニィカは自分の手をかたく握りしめ、アーロスやケルーノを見ずにうなずいた。


 ケルーノの手がアーロスの袖を引く。「なんだよ?」と振りかえった少年に、ケルーノは再び耳打ちした。

「……なら、自分で言えよ」

 頑なにいやがるケルーノに眉を寄せる。しばらく小声で言い争い、アーロスはふたたび騎士たちに顔をむけた。

「えっとな、ニィカがとりあえずあっちに行く。で、帰ってくる。ならいいだろ?」

 あっさりと告げられ、面々はその意図を探ろうと戸惑った。

「ニィカが一回あっちに行けば、やつらも油断するんじゃねえかって。そしたら取り戻せる」

「そりゃいいな。方法は考えてんのか?」

 面白がるようにベッゲイが訊いた。アーロスはニッと歯を見せてうなずいた。不敵な笑みだった。

「あったりまえだろ! えーっと……、こまかいことは忘れちまったけど、うん、オレたちが、なんとかする!」


 胸を張ってアーロスは言い切ったものの、反応は一様に不安げだった。

「それは……、お前たちがドルジャッドへ潜入する、ということか?」

 エウスがアーロスとケルーノを交互に見る。

「センニュー?」

 ぽかんとされて、エウスは言葉に詰まった。国王はケルーノを呼んだ。

「案を提示したことは褒めてつかわそう。いつまでもこの少年を代理に立てていては埒があかぬ。ここからはそなたが直接説明をせよ。よいな」

 せき払いのような音がのどから聞こえた。

「……ボクがなに言っても、怒らない?」

 重々しく国王はうなずいた。

「約束しよう。……平静を保つ自信のない者は、退席せよ。話が済めば呼び戻す」

 ガタガタと椅子を引く音が生まれた。真っ先に立ち上がったのはヘイクだった。聞こえよがしの舌打ちを残す。


「よくおっかねえ顔だって言われっからな。俺もいねえほうが話しやすいだろ」

 ベッゲイは軽い調子で去った。

「……陛下、私も席を外してよろしいでしょうか」

 大臣の言は認められた。彼はケルーノを見ないようにして部屋を出た。

 わずかの間考えて、ギュミルも退席することにした。

「おまえも行くのか?」

 意外そうなエウスの声。「ああ」と肩をすくめた。

 平静を保つ保たないは別として、一度外の空気を吸いたかった。

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