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ニィカ!  作者: 稲見晶
第二章 塀の町イセファー
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46. 不安

 一夜が明けても、トイゴイは見つからなかった。

 ケルーノは仮面で目元を覆ったまま大きなテーブルのはしに座っている。

「トイゴイにいちゃんは?」

 サラがケルーノのひざに手をかけて訊く。

「……まだ、見つからないんだ」

 どこ行っちゃったんだろうね、と口元にわずかな笑みを作ろうとする。

「なんでいないの?」

 無邪気に質問を続けようとするサラを、マルシャが抱きあげた。

「ほら、きょうの朝ごはんはサラの好きなりんごのおかゆだよ」

「りんご!」

「ね、いっぱい食べようね」

 そう話しかけながらケルーノから離れたイスに座らせる。ケルーノは首をうなだれさせて、子供たちから顔をそむけるようにため息をついた。


 うすく甘味がついたおかゆで子供たちのおなかが満たされ、鍋が空になったところで「みんな」とケルーノが声を張る。

 ぴたりと部屋がしずまり、視線が仮面へと集まる。

「……きょう外に行くのはだれ?」

 ぱらぱらと手があがる。アーロスは小さく指先を上げ、クスートの顔をうかがった。

「ひとりにならないように気をつけて。あと、よそものが来たら見つからないように逃げるんだよ」

「わかった」と口々にこたえる声。


「それじゃアーロス、今日はボクといっしょに来てくれる?」

「オレ?」

 アーロスが自分を指して目をまるくする。

「ボク、知らないおとなキライだもん。なにかあったらかわりに話してよ」

「オレだってやだよ」

 くちびるをとがらせるケルーノに、しかめっ面をするアーロス。

「それならきょうは家のなかで、一日ずっとおそうじする?」

 マルシャがからかう口調でたずねる。

 アーロスは眉間にますますしわを寄せてから、「……わかったよ、ケルーノと行くよ」と言い捨てた。

「頼りにしてるよ」

 声音を軽くしたケルーノに、「……しょうがねえなあ」とアーロスは小鼻をふくらませた。


 子供たちのそれぞれが男の子の部屋や女の子の部屋にはいる。ニィカはケルーノの部屋のまえで、彼が出てくるのを待っていた。

 バタンと扉のひらく音。すがたを確認する前に「ケルーノ」と呼びかけていた。

「……なんだよ」

「……ごめん」

 袋をかかえて出てきたのはアーロスだった。

「あれ、どうしたの?」

 すこし遅れて、ケルーノが現れる。

「えっと……」

 口ごもり、アーロスを気にするニィカ。

「オレ、いないほうがいいか?」

 そのことばは首を振って否定した。その勢いのまま、思い切って顔を上げて言う。

「ねえ、トイゴイがいなくなったの、あたしのせいだったらどうしよう」

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