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ニィカ!  作者: 稲見晶
第二章 塀の町イセファー
43/115

43. おるすばん

 ふたりで階下に下りる。

 子供たちはテーブルのまわりにずらりと集まっていた。

「お待たせ。きょうネズミとりに行くのは?」

 ケルーノがテーブルに両手をついて子供たちを見渡す。

「ん、おれ!」

 一人の少年が勢いよく手を挙げた。次いで、バニータとバネンズがそろった動きで静かに指先を上げる。

「トイゴイ、バニータ、バネンズか。煙突そうじはあったっけ?」

「まだないよ」と答えたのはクスート。


「じゃ、あとはもの拾いか」

「そう」

 仮面の奥でケルーノが考えこむ。

「……わかってると思うけど、ニィカのことはだれに聞かれても話さないこと。ルーヴェ、タイン、ジーンはしばらくおるすばん。マルシャたちの手伝いしてて」

「えー!」と幼い声が不満を表した。

「だってキミたち、ないしょ話できないじゃないか」

「できるもん!」

 くすりとさざ波のような笑いが起こった。


 クスートがしゃがみこみ、ルーヴェにこう切り出す。

「よーし、じゃあやってみようか、ルーヴェ。ぼくがよそのおとなのふりをするからね、ニィカのことはひみつにするんだよ」

 彼は立ちあがり、こほんとせき払いをして、できる限りのけわしい表情と低い声をつくる。

「あ、あー、そこのちびすけ。このあたりでニィカという黒い髪の女の子を見なかったかね」

「言わないよ! ニィカのことはひみつなんだよ!」

 元気よく答え、「どうだ!」と言わんばかりに鼻をひくひくさせるルーヴェ。

「……はい、るすばん」

 苦笑いとともにクスートはルーヴェの頭にぽんと手を置いた。

「えー、なんでー!?」

 なんでなんで、としつこく問い質すルーヴェを、クスートは「じゃあマルシャ、よろしく」と引き渡した。


「え、ダメなのか?」

 けげんな顔で大まじめに尋ねるアーロス。クスートはあきれた表情で彼を見つめ、「おまえもるすばんな、アーロス」とだけ言った。

「はあ!?」

 彼の肩に手が置かれた。ビビがため息をひとつついてから、教える。

「ニィカのこと知ってるって言うこと自体がまずいの。そんな子なんて聞いたこともないってふりしないと」

 アーロスはしばらくそのことばを考え、「なるほど!」とさけんだ。


「とりあえず、今日のところはキミたちはおるすばんだね」

 小さな子とひとまとめにされて、アーロスはくちびるをとがらせる。

「さ、お仕事お仕事。きょうは人手もあるし、お洗濯がはかどりそう」

 マルシャがさっとその場をまとめる。それを合図にしたように、外に仕事のある子供たちはぱっと外に駆けだしていった。最後にケルーノが「どいて!」と一声かけ、小さなとびらの上に手をかけて、足先からすべるようにズザザッと外へ転げ出た。

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