五幕~黄金時代~
池田屋事件の翌日。
出勤隊士達の怪我の治療の為、松本良順という幕府専属の医者が新選組の屯所である八木邸と前川邸を訪れた。
特に傷は負っていないが、夕方から池田屋事件の報告の為、会津藩黒谷本陣に向かわなければならないので、近藤、土方は一番初めに松本の診察を受けた。
そして、傷を受けた隊士から順に松本の診察が始まった。
松本という人物は少し口の多い医者のようで、新選組の屯所の衛生状態や隊士の持病などを五月蝿く言った。
だが、土方自身も多少思ってた所でもあり、屯所の移転については夕刻の会津藩との会合で進言するつもりでいた。
土方が一番松本に見せたい患者は、沖田と八木だった。
沖田の場合は、無傷であるにも関わらず、敵の帰り血だけとは考えられない程の血が衣服に付いていた事から内臓の病か? と疑っていた。
八木の場合は無論、死んだ人間の血を飲んで過去を見る事が出来る、体質の面である。
すでに新選組の内部事情を知りすぎている以上、一日隊士で終わらせるつもりは無い。
一人の新選組隊士として迎える考えである以上、八木の特異な身体の事は気になる。
上手く行けば拷問せずに殺し、その後で八木に死油を飲ませて情報を集めれば時間の短縮と確実な情報を得る事が出来る。
土方は沖田と八木は詳しく調べてくれと松本に告げ、近藤と共に会津藩黒谷本陣に向かった。
各隊士の診察が終わると、松本は隊士を集めて風呂屋に行かせた。
病にかかっている者の大半が、身体を不衛生にしていた者ばかりだった。
着物を一月以上洗わない隊士や、褌を三日に一回しか洗わない者なども改めさせた。
今は沖田が診察を受けている。
「……お前さん。肺を病んでいるな。長生きしたきゃ、剣を捨てて生きる事だ」
「無理ですね。私は剣士ですから」
上半身の着物を着ながら、沖田は言った。
「……だろうな。気休めにしかならんが、薬は出しておく。必ず飲むように」
沖田は頷くと、部屋を出た。
そして、八木が診察を受ける番が来た。
松本は聴診器をあて、八木の心音を聞く。
後ろ向きにして、背中を軽く叩いた。
「……心音が一つじゃねぇな。まるで心臓が何個かあるような音だ……。それに目の中心が赤過ぎる。何か新種の薬でもやっているのか?」
松本の問いに少し驚いたが、表情を変えずに言った。
「死んだ人間の血を飲んでいる。薬といえば薬かもな」
「死んだ人間の血だと……!? とんでもねぇ事をしやがるな……」
大抵の事では驚かない松本だが、この事には唖然とした。
そして、他人の血を飲む事によって、自分自身の心臓が早く動き過ぎている。あまり人間の血を飲み過ぎると、命を落とすぜと言われた後、松本に注射器で血を抜かれて診察を終えた。
死油を飲む事で寿命が縮むという事は、八木自身が感じていた為に驚く事ではなかった。
八木は松本に、
「俺の血が何か特別な物がどうか分かったら、教えてくれ」
そう言って、八木は自室に戻った。
※
会津藩黒谷本陣。
近藤と土方は、藩主松平容保と面会をしていた。
幕府から新選組に与えられた恩償金は次の通り。
金十両 別途金 二十両 近藤勇
金十両 別途金 十三両 土方歳三
金十両 別途金 十両 沖田総司、永倉新八、藤堂平助、武田観柳斎
金十両 別途金 七両 原田佐之助、斎藤一、井上源三郎、島田魁、川島勝司、林信太郎、谷三十郎
金十両 別途金 五両 松原忠司、坂井兵庫、河合耆三郎
戦士した三人の隊士にも、金十両、別途金十両が与えられた。
会津藩側からは、新選組の屯所移転費を出すと言われて、土方は是非とも西本願寺にと頼んだ。
長州藩内には西本願寺の末寺門徒が多く、倒幕派の連中の巣になっていると観察方から報告を受けていた為である。
近藤と土方は、松平容保から移転費百両を頂き、幕府と会津藩からもらった金を小荷駄方に運ばせて屯所に戻った。
土方の頭の中は、新たな組織図が続々と浮かび上がっていた。
※
八木邸風呂。
ざばんっと風呂の湯を桶に汲み、頭からかけた。
「ぶはっ! ふうっ……」
もう一度桶にお湯を汲み、手拭いで身体をこすり始めた。
すると、脱衣場から数人の声がする。
勢いよく扉が開き、沖田、永倉、藤堂、原田、斎藤、井上が風呂場に入ってきた。
その人数に驚いた八木は、
「そんな人数で入ってきても、湯船にゆっくり浸かれないぞ」
「町の風呂屋は、隊士達が居すぎて入れないんですよ。平助の眉間の怪我の事もありますし、多少狭くても八木邸の風呂に入るか! という事になったんですよ」
八木の隣に座り、沖田は手拭いで身体をこすり始めた。
他の連中も、池田屋の話などをしつつ身体を洗った。
「私が隅々まで、洗ってあげましょう」
「すまねぇな……ってそこは自分で洗う!」
沖田はいきなり、八木の股間を洗い始めた。
「ふふっ。八木さんは本当に感じやすいんですね。男に触られて怒張するなんて、まさか……」
わざとらしく隅のように逃げる沖田につられて、他の連中も八木から離れた。
「八木は両刀使いか。まぁ、俺は狙うなよ」
腕組みをしながら永倉が言う。
「……拙者を狙ったら斬る」
鋭利な瞳で斎藤が言った。
「僕もその気は無いので……」
ちょっと済まなそうな顔で、藤堂が頭を下げた。
「がははっ! お前さんは色々と面白いやつだ!」
原田は腹の古い傷跡をさすりながらデカイ声で言う。
「……」
井上は無言のままだ。
八木は怒張した股間を手拭いで隠しながら、
「全く、そうゆう冗談はやめろ。ゆっくり湯にでも浸かろうぜ」
「じゃあ全員の一物を見て、一度も怒張しなかったら男色じゃないと信じましょう」
沖田がそう言うと、風呂場の中の全員が八木の周りを囲み、一物をさらした。
座りこむ八木は三百六十度に展開する、様々な形と色の一物を見回した。
逆に囲む側は、自分の一物を見て、八木の一物が怒張するかを確認した。
じっくりと八木は一物を見回していく。
最後に沖田の一物を見た瞬間――。
八木の一物は怒張しなかった。
その場の全員が安堵した時――。
またもや風呂場の扉が開き、近藤と土方が現れた。
「何やってんだお前ら?」
手拭いを肩にかけた土方が現れた瞬間、八木の一物は怒張した。
「あっ……」
八木はつい変な声を上げてしまった。
ふふっと沖田は笑い、
「くわえてきなさい!」
八木は沖田に背中を蹴られ、土方に突っ込んだ。
「ぐはっ!」
「ぬおっ!?」
土方の上に倒れこむ八木の口には、何か違和感があった。
まさか、この物体は――。
「うわあっ!」
土方の一物をくわえていた八木は、びっくりして起き上がった。
「元気な奴等だ」
そう言い、近藤は湯船に浸かった。
爆笑する沖田達に土方は激怒し、
「お前ら全員切腹だーーっ!」
「私にも舐めさせてくれたら、切腹しまーす!」
沖田は湯船のお湯を、土方に引っかけた。
そんなこんなで狭い湯船に全員で浸かり、お湯のかけあいになりつつ夜はふけていった。




